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2009年7月23日 (木)

アベフトシの死を悼んで

もともと日本にはロックシーンなんてものはなかった。この国におけるポピュラー音楽には、芸能界という大雑把な枠組みしかなかったのだ。そこにフォークが風穴を空け、80年代に入って、RCサクセションや幾つかのバンドが活躍して今のシーンができあがったのである。
今でも、日本のロックシーンなんてちっぽけなものでしかないのかもしれない。だけど、その土台固めにRCサクセションや忌野清志郎が果たした役割はとてつもなく大きかったと僕は思う。

そう、忌野清志郎は芸能界に対するロックサイドからの最大の旗頭でもあったのだ。
自身がテレビに出るようなメジャーな存在になっても、発禁になることを厭わずタブーを歌った。歌番組で歌っても、バラエティに出ても、ロック畑から巣立った後輩たちが次々に芸能界の渦に飲み込まれていっても、清志郎だけは悠々とわが道を歩み続けた。
世の中が不景気になってCDが売れない時代に突入しても、清志郎の活動にはいささかのブレもなかった。ライブの本数を落とすこともなく、最後までロックシーンのキングであり続けたのだ。

テレビから流れてくる音楽がロックっぽく装った歌謡曲だらけになってしまっても、清志郎が出てくれば大丈夫。そう思えた。フジロックの出演者が海外のバンドだらけになっても、清志郎はいつも堂々とトリをとってくれた。そんなことを言われても本人は嬉しくないかもしれないが、清志郎は日本のロックの砦だったのだと思う。
僕らは、清志郎がいてくれるだけで安心できた。熱心なファン以外でも、そう思っていた人は多いはずだ。だからこそ、忌野清志郎は最後まで誰もが認めるボスであり続け、若い世代からも指示され、葬儀式には4万を超える人が集まったのだ。
素晴らしい作品で僕らを楽しませ、感動させてくれたのはもちろんだけど、清志郎は芸能界に対するロックシーンのスポークスマンとしても、最後まで大きな存在であり続けた。そのことに、僕はいくら感謝しても感謝しきれないぐらいの気持ちでいる。

翻って、今のロックシーンってどうなんだろうか?ロックっぽさを装った人はたくさんいるような気がする。だけど、骨の髄までロックな匂いの沁み込んだミュージシャンを、僕はRC以降、数えるほどしか知らない。

アベフトシは間違いなく骨の髄までロックなミュージシャンだった。メジャーな場に出ても、ロックなマナーを捨てることは決してなかった。かつてのRCサクセションがそうだったように、好む好まざるに関わらず、TMGEのロックなたたずまいを心強く思っていた人は多いだろう。

そんな、生粋のロック・ミュージシャン、アベフトシが亡くなってしまった…。
僕が感じるのは、悲しみというより巨大な喪失感だ。狭いロック村の中で活躍している人はたくさんいる。だけど、シーンのスポークスマンといえる存在が、どこにも見当たらない。今年のフジロックやライジング・サンの出演者を見ても、なんだか数年前よりずいぶん小粒になってしまったような気がして仕方がないのだ。

いったいなんなんだろう、今年は。なぜ、こうも悪い報せばかりが届くのだろう…。
僕らは、このままロック村で自分たちだけに通用するような言葉で暮らしていくしかないのだろうか。なんだか、彼らの不在は、この国においてロックという存在そのものがひどくマイナーな世界に後退してしまったような気さえしてしまう。

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コメント

アベの訃報は驚きです。自分はミッシェルを少ししか活躍を追いませんでしたが
ロックバンドなんて10年もてばなんてことも言われますけど、ミッシェルの解散を聞いたときは、「そりゃないよ」って感じしました。 ブランキーも含め、今、30代初めから半ばのロックファンは喪失感一杯でしょうね。 ロックなロックバンド 長続きしてませんからね。仕方ないですけど

投稿: サッカー野郎KOB | 2009年7月24日 (金) 19時47分

◆サッカー野郎KOBさん
>ミッシェルの解散を聞いたときは、「そりゃないよ」って感じしました。

僕はTMGEの解散自体はあまり驚きませんでした。後期のアルバムを聴くとチバが音楽でやりたいことが広がってきてて、アベのギターだけでは表現しきれなくなってきてるのは、僕でも感じられましたから。
それでもなお、アベのワン・アンド・オンリーのギターは貴重だったと思うんです。アベのギターってのは、最近の若手のポジパンなんかとは違ってて、ルーツはドクター・フィールグッドとかパブロック系のギタリストとか、英国伝統のビートバンドの影響が色濃いと僕は感じます。日本じゃこういう人、いそうでいなかったと思うんですよ。80年代のルースターズなんかとも通じるしね。

>今、30代初めから半ばのロックファンは喪失感一杯でしょうね。

実は俺と一歳しか違わないんだよ、アベは。同年代として、おっさんになってもあのままで、カッティングの鬼として活躍して欲しかった…。そう思うと、本当に残念です。

投稿: Y.HAGA | 2009年7月26日 (日) 20時07分

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