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2009年7月10日 (金)

解散しないことの美学

W970412385view_3  うーん、「シャイン・ア・ライト」を観てるとしみじみ感動してしまう。自分がこの歳になって、真夜中にローリング・ストーンズの最新ライブを観て興奮しているというその事実にね。まさか、21世紀にもなってストーンズがまだ続いているとは。ミック・ジャガーやキース・リチャーズが、20年前と同じように元気いっぱい動いているとは。それを40過ぎた自分が興奮して見ることになろうとは…。これは夢なんじゃないだろうか?幸せすぎて笑みがこぼれてしまう。

オレは80年代中盤、ミックやキースがソロアルバムを出した時には覚悟を決めた。これでもうストーンズは解散すると思ったのだ。
ミック・ジャガーは今の自分と同じ歳に2枚目のソロ、「プリミティブ・クール」をリリースした。その日本盤ライナーノーツには、アルバムの内容を賞賛する一方で、これでストーンズは間違いなく解散するだろう、なんてことが書かれてあったっけ。執筆者は当時ミュージック・ライフの編集長だった東郷かおる子さんだ。今となっては笑い話だが、当時そう思ったのは彼女だけではなかったはず。

ところが、90年代に入るとストーンズは、いきなり「スティール・ホイールズ」を発表してフルスロットで動き始め、まさかと思われた日本公演まで実現させてしまう。
実を言うと、オレはこの怒涛の流れが今だにわからないのだ。もともと「ストーンズが一番!」と公言していたキースにはあまり違和感はないけど、あれほどストーンズのグダグダぶりを嫌ってたミックが、なんでまたすんなりとストーンズに戻ったのか…。

実は、ストーンズのバイオグラフでも、この辺はけっこうグレーなのだ。ストーンズ側も明確な声明は出していないはず。
公式には、ストーンズがロックの殿堂入りをした時、表彰式でメンバーが久々に顔を合わせたことが再出発のきっかけだったことになっている。その後、ロニーが仲介してミックとキース2人だけの話し合いの場をセッティングしたり、いよいよ新作のレコーディングでスタジオに入ったら、5分もしないうちに昔と同じ笑顔で笑いあった…。なーんてね。

オレは、これはストーンズ・サイドの作った美しいおとぎ話だと思うんだ。そんなにすんなりいくもんだろうか?事実はもっとシビアでクールな決断があったんじゃないかと思ってる。
ストーンズは90年代以降、その活動のすべてにおいて完璧にシステマティックなプロジェクトを組んでいる。コンセプトのはっきりしたアルバムを何年か毎に作り、派手な記者会見をぶち上げてツアーをリリース。2年かけて世界中を回り大金を稼ぎ出す。その後しばらくはオフだけど、その間もソロ活動に勤しんだり、どっかの誰かのステージにふらっと顔を見せたり、若い女の子にちょっかいだしたりして(笑)、それなりに話題を振りまきながら好きなことをやって過ごす。
で、4,5年後にはまたアルバムを出して、ツアー…。

この15年ぐらい、そんなローテーションでバンドは動いてきた。おそらく、ストーンズを取り巻くスタッフもそんなローテで生活するようになっているはずだ。
バンドが眠っている時、彼らもまた家庭人として日常を送る。そして、ひとたびバンドが動きだすと巨大なお金の流れが生まれ、それを糧に生活している彼らも一斉に動き出す。そんな流れが自然と出来上がってしまったのだ。
つまり、ストーンズは解散しようにも解散できなくなっているんだと思う。ストーンズは、もはや単なる一バンドではなく、ローリング・ストーンズ・カンパニーという巨大なコングロマリットを形成しているのだから…。
だが、そんな状況を彼らは屁とも思っていないだろう。特に、ロンドン経済大学出身のサー・マイケル・フィリップ・ジャガーは、自分が巨大企業体の頂点に立っていることに、震えるような快感を感じているのではないだろうか。フロントマンとして観客の視線を一身に集めるのと同時に、バンドのマネジメントすべてに決裁権を持つ…。彼は、サッカークラブで言えば、フォワードと会長を兼ねたような存在なのだ。男にとって、これほど気持ちのいいことはないだろう。ミックがバンドに戻った最大の理由は、そこにあるのだとオレは思っている。

これって、あんまりロックっぽい話じゃない?そう思う人も多いだろうなあ、きっと。
でも、オレはロンドン乞食と言われた時代を経て、決してルーツを外れることなく、自らの身体を極限まで鍛錬して最高にワイルドなロックを奏で、一方でビジネス・パーソンの役目も背負うようになったミック・ジャガーという男の生き方を最高にカッコいいと思うのだ。だって、こんな奴、間違いなく今まで一人もいなかったでしょう?
ストーンズには、解散しなかったことの美学、やり続けたことの素晴らしさを感じてしまう。

オレがもし、ミックにインタビューする機会があるのなら、
“あなたも歳を重ねることで降り積もる悲しみや憂鬱を感じる時があるのですか?”と聞いてみたい。
きっとミックは、“ヘイ、ボーイ。考えすぎるなよ。人生はパーティーだぜ…。”とか軽く言ってくれちゃいそうだけど(笑)。

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コメント

>“ヘイ、ボーイ。考えすぎるなよ。人生はパーティーだぜ…。”

確かに言いそう、いかにも(笑)

うん、他に居ないですよね、こんな人(笑)

たかがロックンロールだぜ!ってね。

>事実はもっとシビアでクールな決断があったんじゃないかと思ってる。
あの時期、活動しなかったのは公言できない事情があったのではないでしょうか?
チャーリーとか・・・禁句だったかな?
ミックVSキースの喧嘩なんて表向きのネタでしょう、事実ですけどね。

今のミック、滅茶苦茶ブルースっすよ!

ストーンズ話っておもしろいなあ〜

◆LA MOSCAさん
ほんと、ミック・ジャガーの後にも先にもミック・ジャガーなしですね(笑)。ボーカルスタイルが似た人はいるかもしれないけど、バンドのフロントマンとしてのあり方において、キックみたいな人はあんまり思い浮かばないもんなあ…。

◆young_bさん
>あの時期、活動しなかったのは公言できない事情があったのではないでしょうか?
チャーリーとか・・・禁句だったかな?

80年代中盤、チャーリーはドラックとアルコール中毒に苦しんでたって話でしょ?あの話が表に出たのは、90年代中盤ぐらいでしたっけ?最初聞いた時、オレはかなりびっくりしました。メンバーの中で一番そういう世界から遠そうだった彼が…。ローリング・ストーンズのメンバーでいるということは、僕らなんかには計り知れないプレッシャーがかかるもんなんだなあ、って思いましたね。
ミックとキースの喧嘩は、チャーリー隠しのカモフラージュだったのでは?なんて気もしてきますよね。

ほんと、ストーンズ話って面白いですよね~。で、話しててなんか元気になっちゃうのが素敵ですよね(笑)。こんな話だけで一晩中でもお酒飲めちゃうなあ…(笑)。

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