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2009年8月29日 (土)

Peace Music Festa! '09プレイベントin東京

『Peace Music Festa! '09プレイベントin東京 わったー地球(しま)はわったーが守る!』

日時: 8月29日(土) Open 17:00/Start 18:00
場所: 代官山 LIVE HOUSE LOOP
出演: 新良幸人/山口洋(HEATWAVE)/リクオ/ショピン/當山貴史(Shaolong To The Sky)/ノーズウォーターズ/KEN子(すべりだい)/DJ:TUK TUK CAFE
チケット: 前売り¥3000/当日¥3500(共にドリンク代別途)

白状すると、オレはこのフェスの趣旨も誰が出演するかも知らなかった。目当ては山口洋とリクオだけ。
今週末、彼ら2人が出演する「海さくらフェスティバル」というライブがあり、オレもこれを楽しみにしていたのだが、どうしても行けなくなってしまいがっかりしていたところ、思いがけずに2人が出演するこのイベントを見つけ、とにもかくにも2人のライブが見たいと思って、自分だけの夏フェスみたいな気分で代官山まで足を運んだのである。

はじめは完全に傍観者気分だった。ところが、気が付くと名前も知らなかったミュージシャン達の素晴らしい演奏に耳と心を奪われ、心の底から音楽を楽しんでいる自分に気が付いた。ほんとうに素晴らしいイベントだった。これまで知らなかったミュージシャンとの新しい出会い、新しい感動をたくさん味わえた夜となった。

このライブは、9月21日に沖縄で開かれるPeace Music Festa!というフェスのプレイベントとして行われたものである。Peace Music Festa!は、2006年に沖縄の名護市辺野古でスタートし、沖縄の抱える基地問題を広く伝えることや、美しい海を次世代に残そうとの願いがこめられているらしい。だから、この日のプレイベントも、ヒロシとリクオ以外はみな何らかの形で沖縄と関係しているミュージシャンばかり。
いやいや、山口洋&リクオだって沖縄には縁があるし、リクオが企画に名を連ねている「海さくら」は江ノ島の美しい海を守ろうという主旨のもとに行われているわけだから、Peace Music Festaとはとても近い立ち位置にあるとも言える。それを主催者も知っているからこそ、この夜2人を呼んだんだろう。

沖縄の抱えるさまざまな問題は、東京でぼんやり日常をやり過ごしているオレみたいな人間が軽々しく口にできるものではない。だけど、この日の出演者の一人はこんなことを言っていた。「とにかく、自分はミュージシャンとして沖縄にはこんな問題があるって事を知ってもらうのがまずは大事だと思ってる」と…。
そう、この日のイベントは決してかた苦しいものではなかった。シリアスな問題は確かにある。だけど、とりあえずは音楽ありき。まずは楽しもうや。そして、頭の片隅でちょっとだけ基地問題や汚れていく海のことを考えてみようや…。そんなスタンスは素晴らしいと思った。とても居心地がよかったし、なんというかとても自然な気持ちになれたんだ。

この日のトップバッターはKEN子さんという女性ミュージシャン。沖縄では「すべりだい」という2人組みユニットで活躍しているらしいのだが、この日はウクレレを抱えて独りで登場。アコースティックなやわらかい歌声で会場の空気を気持ちよく温めた。沖縄民謡を本土言葉に通訳しながらの演奏は素晴らしかったと思う。それと、この人は音楽以外にもしゃべりが抜群に上手い。コメディアン顔負けの(笑)軽妙なしゃべりで、この日の進行役も務めていた。

KEN子さんは3曲ほど歌った後、ショピンを呼び込む。ショピンは女性ボーカルにウッドベース、ギターのアコースティックな3人組。このバンドは沖縄出身ではないそうだが、美しい海に強く惹かれ、沖縄でのイベントには何度も出ているとのこと。このバンド、日常の何気ない雰囲気をさらりと歌うのがとても上手い。オレが知っているところだとイノトモの世界観とちょっと似ているかも?
このところの自分はささくれ立ったR&Rばっかり聴いていたので、この3人の音楽からはまるで辺野古の海の砂がさらさらと音を立てるのが聴こえてくるようで気持ちが癒された。

続いては當山貴史。沖縄ではShaolong To The Skyという3ピースバンドをやっているらしいのだが、この日はアコギを抱えて独りで登場。ゲストとしてギターの石原タケシ、ピアニカにピアニカオリさんもステージに上がる。このユニットは素晴らしかった。當山貴史のメッセージを内包した骨太の歌に、石原さんとピアニカオリの幻想的な音色がさらに深く濃いタッチを色付けしていく…。特に、石原タケシの情感豊かなギターは素晴らしかった。ブルースの影響を強く感じさせつつも幻想的で歌の情景が浮かんでくるようなギター。すごいギタリストだと思った。

ここでいよいよ山口洋とリクオが登場。当初、この2人は別々にソロで30分づつやり、最後に1曲一緒に、という予定だったらしいのだが、急遽最初から最後まで2人でやることにしたらしい。これはオレにとっては嬉しいハプニングだった。思いがけなくも久しぶりにHOBO JUNGLEが見られることになったからだ。
相変わらずの2人。今日もお互いがお互いを必要以上に意識しつつプレイ(笑)。信頼し合っているからこそできるヒロシの挑発も、それを余裕を持って受け止めるリクオの笑顔も見てて楽しくなってしまう。孤独にならず、かといってもたれすぎない。こういう距離感は男と女の間ではちょっと難しいかもしれないな。いやいや、男同士だってそう。2人の絶妙な距離感がステージに良い意味での緊張感を生んでいく。基本的にヒロシが仕掛けていくのだが、どういう絡み方をするかはライブが始まってみないとわからない。これは当人たちもわかってないんだと思う。酒飲みにたとえると、理屈っぽい人とサシで呑んでいて、酔ってくるにつれていろんな方向に話が展開していき最終的にとんでもないところに着陸するのと似ているような…(笑)。
この日のヒロシは、なぜかエンディングのタイミングに妙にこだわり、微妙なフェイントを入れたりしてリクオを挑発していた。そして、場の空気を作ろうとするリクオのMCを台無しにしてしまうような「哀愁のヨーロッパの」1フレーズをなぜか連発(笑)。でも、これが絶妙のボケとツッコミになっているんだから面白い。セットリストは毎回ほとんど変わらないHOBO JUNGLEなのに、ライブごとに全然違った印象になるのは、2人が作るこの空気が毎回違うからなのだろう。
「ハピネス」「トーキョー・シティ・ヒエラルキー」「ソウル」「アイノウタ」…。セットは2人の代表曲の大盤振る舞い。この日の観客はほとんどの人が彼らの曲を初めて聴いたと思うのだが、ライブが進むにつれて楽曲自体の持つ素晴らしさにぐいぐい惹き付けられていくのがよくわかった。
HOBO JUNGLEは1時間近くも熱演。なんかオレ、すごく得した気分になった。手にしたラムコークが進む、進む…(笑)。

HOBO JUNGLEの熱いステージが終わると、今度はノーズウォーターズという2人組が出てきた。この2人、オレはすごく好きになったぞ!ギターとベースの2人なんだけど、とても楽しくて温かい音楽をやっている。“2人バンバンバザール”とでも言ったらいいんだろうか、思わず手拍子を打ちたくなるような楽しいバンドだった。
ボーカル&ギターの崎枝将人は出てきただけで頬が緩んでしまうようなナイスなキャラクター(笑)。楽しいだけじゃなくて演奏も素晴らしい。ベースの平安山高宏がジャグバンドっぽい多彩なリズムでボトムを作り、そこに崎枝が背筋がぴーんと伸びるようなハリのある元気な声でのびのびと歌う。なんて大らかな奴らなんだろうと思った。
この2人、石垣島出身の同級生同士で同郷のBEGINとも親交が深いらしい。確かにこの南の島の太陽のような大らかさはBEGINと共通するところがあると思った。最後の曲、「BON BON」は、この日客として来ていたピアノマン山本隆太も加わってのセッション大会。この曲はオレ、びっくりした!スゴイ名曲!この曲に出会っただけでもこのイベントに来て良かったと、ちょっと泣きそうになったぐらいだ。

トリは新良幸人&サンデー。これはもう…なんと言ったらいいのか…とにかくスゴイ人を観てしまったという感じだ。本物の八重山民謡。正にディープな沖縄音楽を目の前にした感じ。
たとえば、BEGINや夏川りみなどが普段テレビで歌ってるのは、島唄でも本土の言葉に直して歌ったりしてソフィスケイテッドされたものとなっている。だが、新良さんの唄うのは全部地元の言葉。濃い訛りは何を唄ってるかはっきりとはわからない。だが、それでも言葉以上に強く伝わってくるものが確かにある。スゴイ。この人は明らかにオレが今立っている土地とは違うところから音を出している。去年の夏に偶然、古謝美佐子の歌を聴いた時と同じぐらいの大きな感動だった。
それでいて、新良幸人は艶かしい。なんなんだ、この人は!もう、大人の女ならイチコロだろうなあ…と思わせるような、黒豹のような色っぽさ。
後半は石垣出身のノーズウォーターズと共演しロックっぽい楽曲もやったのだが、これも貫禄だったなあ…。あの曲、オキナワン・ロックの定番なのかもしれないけど、なんて曲なんだろう?シャープでものすごくカッコよかった。そして、ここでも新良幸人のオーラはすごかった。オレの席からは山口洋が舞台袖で演奏をじっと聞いているのが見えたが、同じ表現者としてヒロシも新良幸人の歌に深く感応していたに違いない。

最後の最後は出演者全員、それとこの日子供をつれて客席にいたソウルフラワーの伊丹英子もステージに上がっての「満月の夕」。なんというか、すごく感動した。言うまでもなく、これは阪神淡路大震災の時に生まれた曲だけど、彼らが音楽をやり続ける理由、僕らが音楽を聴き続ける理由がここに集約されていると思ったのだ。
平和を声高に叫ばなくとも、志し高き人の奏でる音楽には大切なメッセージがこめられている。それはオレたちのようなろくでなしにとっては、明日を生きる糧に確実になり得るものなのだ。

KEN子さんによると、この日の楽屋裏はいろいろな変更やら飛び入りやらでおおわらわだったらしいのだけれど、それも結果的にはすべてがいいカタチに残ったと思う。
Peace Music Festa!、行ってみたくなっちゃったな。沖縄はちょっと遠いけど、あの目の覚めるような青い海と、素肌とTシャツの間をサラサラと吹き抜けていく涼風をそろそろ感じたくなった。

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コメント

海さくら、来られなくなっちゃったんですか?
残念です。

そのイベントは行きたかったのに、仕事で行けませんでした。
HAGAさんの文章読んでたら、行けなかったのが悔しくなってきました。
観たかったな、聴きたかったな、とくに新良幸人。
あるお方が「アイツは本物だ」と言ってました。

◆りんりんさん
>海さくら、来られなくなっちゃったんですか?
残念です。

もう、すごく残念!今年はこれまで以上にスケールアップしてるんで、泊りがけで行っちゃおうと思ってたぐらいなのになあ…。

僕の行ったプレイベントは、BYGの関係者とかも来てたみたいですし、出演者はこれからもどこかのライブハウスで見るチャンスがあるんじゃないでしょうか。

>とくに新良幸人。
あるお方が「アイツは本物だ」と言ってました。

はいはい。僕もあるお方の「アイツは本物だ」チェックしましたよ。エロス、とも言ってましたね、あのお方は。さすがと言うかなんというか…(笑)。

投稿: | 2009年9月 2日 (水) 12時01分

こんにちは!
このレポ、友達が見つけてくれて、超感動しました!
出演者全員にメールで送りました!
このレポ書いてもらった&読めただけでも
やったかいがあったと思っています!
ありがとうございました!(T▽T)

これからもrespectできるアーティスト達と
意味のある、深い音楽やったり、
時には意味を求めなくても心地よい音楽を楽しんだり、
短い人生を謳歌して生きたいと思っています。

こんな良い音楽を通じて
HAGAさんに出会えた事も感謝です。
またどこかでお会いできますように。。。

http://peacemusic.ti-da.net

◆KEN子さん
うわ!まさかミュージシャンご本人からレスを頂けるなんて!超嬉しいです!

>出演者全員にメールで送りました!
うわーっ!嬉しいやら恥ずかしいやら…。ナマイキなことばかり書いてどうもすいません(苦笑)。

でも、お世辞抜きに素晴らしいイベントだったと思ってます。あの内容で3000円のチケット代なんてタダみたいなもの。みなさんの往復の飛行機代ぐらいにしかならないんじゃないですか?(笑)

僕は東京に棲むしがない音楽ファンでしかありませんが、ノーズウォーターズも歌ってましたけど、音楽って飯を食うより服を着るより大事なものだと思ってるんですよ。そして、こんなイベントで思いがけない音楽や人との出会いがあるのが人生の楽しさだとも思ってます。

お互い元気で音楽を楽しみながら暮らしていけば、きっと何処かで再会できるんじゃないでしょうか。
いつかまた会える時まで、元気で温かい音楽を奏で続けてくださいね!

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