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2009年9月19日 (土)

【映画】 宇宙(そら)へ。

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今年はアポロ17号が月面着陸に成功してから40周年を迎える年なんだそうだ。そこで、NASAで保管されていた未公開映像を元に、有人宇宙開発の歴史をたどったドキュメンタリーとして制作されたのが「宇宙(そら)へ。」である。作ったのはドキュメンタリー映画では定評のあるイギリスのBBC。
オレら世代の男なら、誰もが少年時代に宇宙飛行士を夢見たことがあるだろう。オレも、この映画を観ていてあの頃のわくわくした気持ちを思い出したよ…。

映画は、NASAの未公開映像と当時ニュースなどで流されていたものとを併せながら進んでいくのだが、圧倒されるのはやはりNASAからの映像だ。これはもう映画の出来がどうのというよりも、宇宙空間に浮かぶ地球の様子や宇宙飛行士の生の声のリアルさ自体に感動してしまう。
たとえば、人類で始めて宇宙船の外へ出て宇宙遊泳をした宇宙飛行士が映る。地球上に生命が誕生して45億年の間、宇宙空間に身を置いた生命体は皆無だ。そんな気の遠くなるような年代を超え、彼はたった一人で宇宙空間に投げ出されるのだ。オレだったら恐怖と緊張で身がすくんでしまうに違いない。いや、宇宙飛行士だって直前まではきっとそうだったのだと思う。
ところが、実際に宇宙に出た飛行士の口調からは恐怖の欠片は微塵も感じられないのだ。“素晴らしい眺めだ…”“生涯で最高の体験をしている…”という言葉は、見るものの胸を熱くさせる。宇宙空間と、そこに浮かぶ母なる地球の美しさに対する感動が、恐怖を圧倒的に上回っているのだ。この生々しい臨場感は、どんな名俳優の演技からも得られないだろう。

ハイビジョン処理された映像は、宇宙飛行士の観た風景を観客にも疑似体験させてくれる。美しい。美しいのだ、我々の住む地球は…。こんなのを観たら、そりゃあずっとこの星を守りたいと思うだろう。この美しい星に住む自分らを誇りに思うだろう。オレ、事故で死んじゃったって構わないから、この体験、できるものならしてみたいよ(笑)。こんな体験したら、絶対人生観、変わるはず。

もちろん、美しい成功物語だけではない。目を覆いたくなるようなロケットの打ち上げ失敗のシーンや、訓練中の飛行士死亡事故、記憶に新しいスペースシャトルの空中爆発なども取り上げられている。人類が宇宙で生活するなんていう夢物語のために一体どれだけのおカネを使ってるんだ、どれだけの人が犠牲になってるんだ、と感じる人もいるとは思う。
しかし、それでもNASAのあくなき探求心は素晴らしいとオレは思った。どんなリスクを背負ってでも、夢の実現のために邁進してきたのは、おカネのためでも国益のためでもない。彼らの勇気と向上心、人類全体に対する使命感だったと思うのだ。

考えてみると、オレらはロケットだとか宇宙開発だとかの影響をもろに受けている世代だ。
今の子供たちに言うと鼻で笑われそうだけど、小学校のクラスで“将来の夢”なんてテーマを与えられれば、何人かは必ず“宇宙飛行士”だの“月面ロケットの乗組員”だのを描いていた。
ロケットや月面探査には夢があった。世界の明日は明るいという希望があった。アメリカやソ連の人工衛星打ち上げ成功のニュースを目にした時、誰もがそれを人類全体の成功として捉え、将来自分が宇宙へ旅立つ日が来ることを夢見ただろう。
そしてそれは、自分が地球という惑星に住むちっぽけな存在でしかないことを改めて感じる機会でもあったのだと思う。たとえ、ロケット開発が軍事目的をも視野に入れた側面はあったにしても…、だ。

この映画は、宇宙開発技術の進化をなぞった映画ではない。夢の実現のために宇宙へと旅立った男たちの勇気と誇りを描いたドキュメンタリーだったのだと思う。
そういった意味では、映画のタイトルは邦題の「宇宙(そら)へ。」よりも、原題の「Rocket Men」の方がしっくりくるような気がするなあ。
それと、日本版は主題歌が付いてて最後にゴスペラーズが「宇宙へ」とかっていう歌を朗々と歌い上げるんだけど、はっきり言ってこれはドッチラケだった。配給側は、映画があまりにも地味だと思ったのかもしれないけど、こんな演出は必要ない。観る側にとっては、ドキュメンタリーならではのこの美しい映像だけで十分感動できたと思う。ナレーションをやった宮迫博之が意外なほど良かったというのに、なんでこんな余計なことをしたのだろう…。これだけが残念。

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