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2009年10月20日 (火)

blues.the-butcher-590213 / 10月20日(火)高円寺・JIROKICHI

10月20日(火) blues.the-butcher-590213
永井ホトケ隆(vo,g) 沼澤尚(dr) KOTEZ(vo,harp) 中條卓(b)

ブルース・ザ・ブッチャーというバンドは、今現在、世界的に見ても最も新しいブルースをプレイしているバンドの一つなのではないかと思う。
取り上げる曲はブルースの定番ばかり。バンドの編成もドラムにベース、ギターにハープ、それとボーカルといういたってオーソドックスなもの。なのに、彼らの奏でるブルースは確実に新しい。ライブに足を運ぶたび“ああ、ブルースってのはこんなにもドライブ感のある音楽だったのか…。”と、新たな刺激を受けてしまう。

自分は、高校生の時にローリング・ストーンズやレッド・ツェッペリン経由でブルースという音楽を知った。以来、ロックやR&B同様、20年以上もブルースを聴き続けているけれど、ブルース・ザ・ブッチャーというバンドに出会って、ブルースに関してはいつの頃からか自分の耳がパターン化していたことに気付かされてしまった。いや、パターン化したというより、ブルースをわかったつもりで“こんなもんだろう”と知らず知らずのうちに、決め付けていたと言ったほうがいいかもしれない。
シカゴブルース・スタイルの場合、定番コードを使ったコテコテのブルースでも、シャッフル・ビートで前のめりにプレイしたり、黒人のパワフルなドラムを入れてファンク・テイストでプレイすれば、とりあえず前にどんどん転がっていく。そこに最新型のエフェクターを噛ませて音色を変えでもしようなら、斬新な響きをなんとなく感じるようにもなるのだ。それだけで満足していたんだよな、オレは。それは確かに50年代に録音された音源にはない躍動感が感じられるものではあるからね…。

でも、そこで止まっていたことも事実なのだ。それはオレだけじゃない。ひょっとしたらプレイヤーの方だって、そこ止まりの人はけっこう多いんじゃないだろうか。
ブルースみたいな様式のしっかりした音楽の怖いところは、フォームを忠実になぞればそれでOK。怖いものなしだと思い込みがちなところだと思う。つまり、様式自体が既に洗練されたものなんだから、それをに忠実にプレイするだけでも、音楽的には十分深化するのだという論理だ。これだと、そもそも50年代には状態のいい音源が残ってないんだから、21世紀の今現在、バンドスタイルできちんと演奏されているものが聴けるだけでもありがたいことなんだという図式が出来上がってしまう。

ブルース・ザ・ブッチャーを初めて見たとき、このバンドにはその図式が全く通用しないと思った。このバンドの目指しているのは、50年代ブルースの再現では断じてない。ブルースの基盤はそのままに、もっと新しい刺激を求めて未来へ転がろうとしている。少なくとも、こんなにグルーヴィーで変化自在なビートを操るブルース・バンドをオレは他に知らない。まるで金槌で頭を背後から殴られたような衝激を受けた。
何度も言うけど、ブルース・ザ・ブッチャーが演奏しているのはブルースのド定番だし、バンドの編成は超オーソドックス。なのに、出てくる音は明らかに21世紀の最新型なのだ。この奇跡のような音は、どうやってやってきたのだろう?

自分が思うに、これは永井“ホトケ”隆という日本ブルース界の重臣と、沼澤尚という日本屈指のオールラウンド・ドラマーが同じバンド内に共存しているところに秘密があると思う。
永井“ホトケ”隆は、70年代に関西ブルースシーンを引っ張ったウェストロード・ブルースバンドのギタリストだった男。いわば日本ブルース界の重臣のような存在だ。一方の沼澤尚は、大学を出た後、アメリカの音楽学校に留学し、様々なジャンルのミュージシャンと他流試合を経験して卒業後にはその学校の講師まで務めたという人物だ。バックを務めたミュージシャンも、チャカ・カーンをはじめ、吉田美奈子や岩崎宏美、角松敏生、大貫妙子、スガシカオ、椎名林檎、くるりなど、洋の東西もジャンルも、まるで関係ないかのような幅広さ。
そんな2人がブルースという様式を通じてがっぷり四つに組み合う。それが刺激的で面白い。沼澤尚という人のバックボーンはブルースだけじゃないのだ。ロックやジャズ、それにブラジル音楽など、世界中のリズムを知るカリスマドラマー。そんな彼が今あえてブルースを叩き、その奥深さに酔いしれている…。ライブを観ているとその発熱ぶりが観客にもはっきり伝わってくるのだ。

この日も沼澤さんのドラムは凄まじかった。ブルース・ザ・ブッチャーの曲はインプロビゼーション的な部分がかなりあるんだけど、そういう時、沼澤さんの千手観音のようなドラムさばきが冴えまくる。全身がビート、ビート、ビート!まるで身体がドラムと一体化したような凄まじさ。決して手数が多いわけでも、音圧がべらぼうに高いわけでもない。でも、この“圧”でこの“打点”しかありえない、そう思わずにはいられないほどジャストなドラムなのだ、沼澤さんのビートは。
しかも、この人はカッコいい!ものすごくカッコいい!(笑)。その体躯は研ぎ澄まされた筋肉に包まれ、自らの叩き出すビートに陶酔するかのように表情豊かにドラムを叩くその姿は、見る者をひきつけて離さない。
JIROKICHIのような狭い空間で、こんなにもスゴイ演奏を間近で見られるなんて、なんて幸福なことなんだ…。

この日はもう一つ大きなサプライズがあった。
この日、僕はカウンターのスツールに腰掛けて演奏を見ていたんだけど、開演直前に、女性の二人連れがすぐ横にやって来た。その女性の顔をよくよく見たら、なんとLeyonaだったのだ!ブルース・ザ・ブッチャーのライブには、何度かゲストボーカルとして参加している彼女だが、この日はゲスト参加のアナウンスはなく、あくまでも観客の1人としてJIROKICHIに来ていたのだった。
Leyonaは最近ヘアスタイルを変えたらしく、ショートで前髪を切り揃え、すいぶん印象がずいぶん違って見えた。ジーンズのショートパンツにTシャツ、腰にレザージャケットを巻いたカジュアルないでたちで、連れの女性と2人、時に声援を送りながら身体でリズムを取りノリノリでステージを観ていた。

本編最後の「モージョー・ブギ」では、ステージのホトケさんに促され、遂にステージへ。さすがにボーカルパートはホトケに譲り、自分はサビのコーラスぐらいにとどめていたが、アンコールで再び登場。
今度は最初からガツン!だ。曲は変則ビートの「ハウンドドッグ」。髪を振り乱し、激しくステップを踏みながら汗だくでシャウトするLeyonaにJIROKICHIが揺れる、揺れる、揺れる…。いやあ~こんないいモノ、こんな近くで観ていいんだろうか…。最高に得した気分の夜だった。

オレ、今、沼澤尚というドラマーの動きがとてもとても気になっている。このビートは唯一無二だし、どんどんどんどん進化していってとんでもない次元にまで到達してしまいそうな予感がするからだ。
そして、自分の中で固まりかけていたブルースという音楽を、今一度刺激的なモノにしてくれたブルース・ザ・ブッチャーというバンドにも心底惚れこんでしまっている。

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