Full Swing!ドクトル梅津SHOW -梅津和時 還暦記念コンサート- / 2009年10月15日(金)Shibuya DUO Music Exchange
Full Swing!ドクトル梅津SHOW -梅津和時 還暦記念コンサート- / 2009年10月15日(金)Shibuya DUO Music Exchange
日時:2009年10月15日(木) 開場18:30 開演19:30
会場:渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
出演 梅津和時(sax,cl)
★Full Swingers
太田惠資(vl) 清水一登(key) from 新大久保ジェントルメン/鬼怒無月(g) 早川岳晴(bass) from KIKI BAND/多田葉子(as) 松井亜由美(vl) 張 紅陽(acc) 関島岳郎(tuba) 夏秋文尚(ds) fromこまっちゃクレズマ/Horns: NARGO(tp) 北原雅彦(tb) GAMO(ts) 谷中敦(bs)/仙波清彦(per)
★Special Guests
おおたか静流(vo) 巻上公一(vo) 白石かずこ(詩) 片山広明(ts) 三宅伸治(vo,g) 仲井戸 “CHABO” 麗市(vo,g)
梅津和時はRCファンにとっては絶対に忘れることのできない重要人物だ。清志郎とは生活向上委員会からNEW BLUE DAY HORNSにいたるまでの長い付き合いだし、CHABOともお互いのライブのゲストとして何度も同じステージを踏んできた。
この日は、その梅津さんの還暦を祝ってゆかりのあるミュージシャンが一同に会した豪華な記念ライブ。いやあ~RCのステージでくるくる回りながらサックスを吹いてた梅津さんが還暦だって!オレもおっさんになっちゃうワケだよなあ…(苦笑)。
開演直前、場内に突然清志郎の声が流れる。「RHAPSODY NAKED」に収められていた、RCのライブに初めてゲストとして招かれた梅津さんを清志郎が紹介するMCだ。
ほどなくバンドがステージに出てきた。この日のために、新大久保ジェントルメンやこまっちゃクレズマのメンバーを中心に編成されたスペシャル・バンド。燕尾服を身にまとい、シルクハットを頭にのせた梅津さんが姿を見せると、場内はやんやの大喝采。梅津さん、めちゃめちゃキュート。いいなあ~。こんなお茶目な60歳にオレもなりたいぜ(笑)。
1曲目はボーカルにおおたか静流が加わって、どくとる梅津バンドと忌野清志郎名義で80年代に出されたアルバム「DANGER」から、「メロディ」がプレイされた。自分にとっては久々に聴く曲。歌詞のほとんどを忘れていたんだけど、おおたか静流の素晴らしい歌声と、軽くファンクが入った分厚い演奏に、自然と身体が動いてしまう。
おおたかさんは1曲目で引っ込み、次に登場してきたのは巻上公一だ。うわっ、ヒカシューの人じゃん!懐かしいなあ~。巻上さんは昔よりだいぶ恰幅がよくなって、見た目はまるっきり普通のおっさん(笑)。でも、唄うとすごいんだ、これが。ヨーデルみたいな朗々たる歌声。こういうのがクレズマーっていう音楽?よくわかんないけど、なんかすごく楽しくなってくる。
続けて、梅津さんが「こんなところでインプロビゼーションもなんですが…」とか言ってバンドによる即興演奏が始まった。巻上さんはどうするんだろう?って思ってたら、なんと声を使って演奏に加わった。これがバスドラのような低音から女性ソプラノみたいな高音まで自由自在。いやー恐れ入りました!全然普通のおっさんじゃないじゃん(苦笑)。正に人力テクノ!
オレ、この辺から前のめりでステージを観てましたね。普段、この手のライブの経験があまりないだけに、なんだか面白くて仕方がない。
「どんどんディープな世界へ…」という梅津さんのMCで、お次は詩人の白石かずこさんが登場。かずこさんをステージにエスコートしてきたのは、清志郎のローディーだったシャブちゃんだ。
実はオレ、白石さんのポエトリー・リーディングを昔自分の通ってた大学で観たことがある。うちの大学の現代詩研究会ってとこが白石さんを呼んだことがあったのだ。そのサークルの顧問の教授も詩人だったんで、どうも白石さんとは個人的な付き合いがあったらしい。で、オレもその頃ビート派の詩人とかに興味があったんで観に行ったってわけ。実は、それがオレの人生初のポエトリー・リーディング体験。CHABOよりも、その時も白石さんはサックス奏者を同伴してたっけなあ…。
この夜、白石さんは長い詩を巻物に直筆で書いていて、それを朗読するにつれてどんどんステージにたらしていく。なんか、ボブ・ディランの「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」のPVを見てるみたいだった。
ここでCHABOと三宅伸治が早くも登場。出番はてっきり終盤かと思ってたので、ちょっと驚いた。
梅津さんの紹介でまずは伸ちゃんがステージに。少し遅れてCHABOも姿を見せる。CHABOは11日のバースディライブと同じ格好だった。手には「60」の刺繍の入った真っ赤なシルクハット。CHABOは「梅津~!ばかやろーっ!」と愛ある言葉を投げかけて、その帽子を梅津さんの頭に載せた。ついでに伸ちゃんは真っ赤なストールを。彼らならではの還暦衣装。お客さんはやんやの喝采だ。
3人による演奏の1曲目は、いきなり清志郎がらみの曲。
曲に入る前、伸ちゃんがこんなことを語った。9年前、音楽生活30周年記念ライブの打ち上げで乾杯の音頭をとった時、清志郎はこんなことを言ったそうだ。「今度こうやってみんなが集まるのは、梅津さんの還暦記念の時だな…」って…。誰よりもこの日を楽しみにしていた清志郎…。
曲は、アルバム「GOD」に収録された梅津さんと清志郎の共作「春の嵐」だった。アルバムよりぐっとテンポを落とし、伸ちゃんの気持ちのこもった歌声が響き渡る。これはかなりキタ…。だけど、何しろこの日は梅津さんのおめでたい日だ。オレ、前の方の席だったから、ここで梅津さんに泣き顔なんか見せるのは違うと思って、歯を食いしばって耐えた。
伸ちゃんはもう1曲、自分のライブでもよくやってるハウンドドック・テイラーの「It's All Right」に日本語詞を付けたカバーを歌った。
ボーカルはCHABOにタッチ。CHABOの1曲目は「こんなおめでたい日にふさわしくないけど…」という前置き付きで、「THE 仲井戸麗市BOOK」から「カビ」だった。CHABOは11日のライブでも使っていたナチュラルボディの小振りなエレキを手に。このギター、見た目にそぐわずなかなかハリのある元気な音がする。見た目軽そうだし、これは今後かなり使用頻度が高くなる予感がするなあ…。
続いて、今年の春、梅津さんのプチ大仕事にCHABOがゲストで出た時、梅津さんから詞を付けるよう宿題で事前に渡されたという曲「祈り」。これ、“遥かなる想いがあの人に届かない時は、この歌に祈りをこめて…”みたいな歌詞なんだよね。しんみりしちゃうなあ、今となっては…。
3人による最後は、「清志郎の名唱と梅津さんの名演をいつも横で見ていた…」っていうCHABOのMCで演奏された「スローバラード」。
これは本当に素晴らしかった!ピアノの音色が耳に残る清志郎版「スローバラード」に対し、CHABOバージョンはストーンズの「むなしき愛」を思い起こさせるような、よりブルースっぽいアーシーなアレンジになっているのだが、CHABOの歌もギターも、初めて演奏された6月のマンスリーより更に進歩していた。
CHABOの歌に梅津さんのエモーショナルなサックスが叫ぶようにからんでゆく様は、どうしたってRCのライブを思い出させてしまうんだけど、この日の3人のプレイは、センチメンタルな要素が入り込まないほどに力強くもあったのだ。
この日の演奏は確実に“10月11日以降”になっていたとオレは思う。なんてのかな、決意って言うのかな、こういう意志を。3人の悲しみを乗り越え、明日へと向かおうとする気持ちがものすごく伝わってきたんだ。
ライブは佳境。いよいよこの日のスペシャルバンド、Full Swingersの登場だ。梅津さんも茶のジャケットに衣装換え。ここから後半までは正に怒涛のステージングだった。こういう音楽、なんて言えばいいんだろうか…。ジャンルなんかどうでもいい。とにかくすごく楽しかった!
BLUE DAY HORNSのもう一人の雄、片山広明ももちろん出てきた。この日も片山さんはあきれるほど片山さん(笑)。さすがに呑んではいないみたいだったけど、な~んか挙動不審なんだ、このおっさん(苦笑)。たとえば、片山さんのすぐ後ろには鬼怒無月さんがいたんだけど、片山さんったら、突然鬼怒さんに意味不明なアイコンタクトを送って人差し指を上げたりしてた。この時、鬼怒さんが思わず“はあっ!?”って顔をして、それを見たオレ、おかしくておかしくて笑いが止まんなくなっちゃったよ(笑)。
終盤では、なんとスカパラ・ホーンズの4人が登場してきた。
4人の立ち位置はステージ向かって右手だったので、オレからは手の届くような距離。スカパラのライブは昨年の夏に野音で観て、その迫力と人気の凄さに驚愕したんだけど、そのホーン隊がこんなに近くで見られるなんてウソみたいだ。
4人はそれぞれにソロも披露。いやあ~カッコいいです!PAの関係か、オレの座席の位置からは谷中敦のバリトンサックスが聴き取り辛かったのが残念だけど、ラストのロックっぽいリフの曲は大興奮だった。鬼怒無月のギターもえらい尖がってたし、早川さんのベースもレーシングカーのエンジンみたいにぶわんぶわん鳴ってた。こういうの、オレ、ダメ。無条件で腰がうずいてしまう…。
パーカッションの仙波清彦さんも素晴らしかったなあ。ソロパートでは、ありとあらゆるモノから音を出し、最後はジンのボトルを指で鳴らして「梅津さん、おめでとう~!」と叫び、キャップを開けてお酒をぐびぐび。うーん、パーカスの人って、なんでこうも面白い人が多いんだろう?(笑)
アンコールでは、まず梅津さんが独りでステージに。
そして、「今日は僕のためにこんなにたくさんのミュージシャンが集まってくれて、それだけでも感激してます。そして、今日当然この場にいるべきだったのに来れなかったミュージシャン、いや、僕は彼をバンドマンと呼びたいんだけど、忌野清志郎君に捧げる曲を独りでやります」と言ったのだ…。
「RHAPSODY」…。これはキタなあ…。だって梅津さんのサックス、息遣いもタイミングもピッチも、まるで清志郎の歌声そのものなんだもん。これが長年一緒にやってきた呼吸ってヤツなのかな…。参ったよ…。
でも、湿っぽい雰囲気にはならなかった。その後は、出演者全員がステージに出てきて賑やかなエンディング。みんな梅津さんの還暦を祝して笑顔、笑顔、笑顔だった。なんと、白石かずこさんも出てきて、演奏中のCHABOと何やら楽しそうに話しているシーンも見られた。
バンドの一群がステージを降りると、最後の最後に梅津さんがテーブルにおいてあったダルマに片目を入れてめでたい夜は終わった。全部で2時間30分ぐらいだったかな。
オレはRC人脈繋がりでしか梅津さんのライブを観たことがないんで、どうしてもそっち目線になっていたことは否めない。もともとこのライブの目当ては、梅津さんとCHABO、伸ちゃんがどう絡むかだったし…。
実を言うとちょっと不安でもあったんだ。だって、CHABOと伸ちゃん以外は“インプロビゼーションの嵐”みたいなライブだったら、ちゃんとついていけるかなあ、って…。そういうライブ、オレはちょっと苦手だからね。
ところが、始まったら全然心配することなんかなかった。めちゃめちゃ楽しくて面白かった。っていうか、全然ジャズじゃないじゃん、これ!梅津さんやこの日出ていたミュージシャンの音楽は、ほんと、自由で楽しかった。ジャンルなんてまるで気にしない、そんなこと関係ないって感じだったんだよな。
梅津さんの音楽はとにかく楽しいし、面白くてすごくのびのびしている。下手なロックのライブよりよっぽど自由だと感じたなあ…。オレはたまたま座っていた席が梅津さんのファンの多いエリアだったみたいで、彼らと一緒になって、普段自分が行っているようなライブとはまた違ったノリを楽しみました。
いやあ~食わず嫌いはいけないってつくづく思いましたよ。ちょっと、こっち方面もスイッチ入っちゃったぜ、オレは。こういうことがあるから人生は楽しい。
オレ、これからも梅津さんのライブ、タイミングがあえばぜひ行きたいと思ってます。
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レポありがとうございます。梅津さんの還暦コンサートの興奮が伝わってきました。「メローディー」「春の嵐」聴きたかったな。
DANGERのようなとんがったアルバムを梅津さんと清志郎還暦記念で作って欲しかった、なんて少し後ろ向きです・・・。
投稿: K.I | 2009年10月16日 (金) 22:35
メローディーになってしまいました。スミマセン。
投稿: K.I | 2009年10月16日 (金) 22:36
いいな~ライブ行かれて・・・私はチケットが入手できず行かれませんでした
。
先月は一緒にShibuya DUO Music Exchangeでフラワー・トラベリン・バンドのライブを見てきました。彼は山口富士夫も大好きで7つ上の姉とクロコダイルに行き、なんと楽屋にまでちゃっかり入れてもらって2ショット写真撮ってきました。富士夫氏は当時中学生だった彼がライブに来てくれたことをいたく喜んでくれたそうです。WHOもジェフ・ベック&クラプトンも1人で行ってしまう恐るべしティーンエイジャーです

でも、ライブレポ読むと光景が浮かんできて行った気になります。ありがとうございました。
わが家の次男は高校1年生。
なぜか70年代の音楽に夢中なんです
清志郎つながりで初めてY.HAGAさんのHPだったcafe HENDRIXに行き着いた時はタイトルのHENDRIXに驚きました。夫がジミヘンの大ファンなんですよ。清志郎のHPが地味変だった時も驚きましたがそれに次ぐ驚きでした
で、それ以降ちょくちょくお邪魔させていただくようになったという訳です。
とりとめの無いない書き込みでしたね。お許しを・・・
投稿: ちゃこ | 2009年10月16日 (金) 23:24
◆K.Iさん
今にして思えば、DANGERは清志郎にとって重要なキーポイントとなる活動だった気がしますね。R&Bのワクを超えて幅広い音楽性を身に纏うきっかけだったように思います。そうですね、もう一度バンドのホーンセクションという形だけじゃなくて、今の梅津さんと清志郎ががっぷり四つに組むような作品、聴きたかったですね…。
投稿: Y.HAGA | 2009年10月17日 (土) 10:47
◆ちゃこさん
素晴らしいお子さんですね!中学生で山口冨士夫のライブに行ったってのはスゴイ!僕が中学の頃は田舎住まいだったんで、ライブに行くなんてのは夢のまた夢だったんですよね。ラジカセに齧りついてYMOやRC聴いてたなあ…。
cafe HENDRIX時代からご覧頂いているようでありがとうございます。あのHPのタイトルは、CHABOの「ランタン」の歌詞からとりました。架空のお店の名前ですけど、いろんなものを象徴しているように思えて…。ジミ・ヘンドリックスはもちろん好きなんですけど、“ヘンドリックス”っていう言葉の響きもなんか好きなんです、僕。ボブ・ディラン、キース・リチャーズ、レイ・デイビス、ルー・リード、素敵なミュージシャンは名前もカッコいいですよね!(笑)
投稿: Y.HAGA | 2009年10月17日 (土) 10:47
そうなんですよ!昨夜はそんなようなことを書きたかったんです。でも考えてたら後ろ向きになっちゃって。HAGAさんがうまく表現して下さってびっくりしました。
「春の嵐」があるおかげでGODに深みが出ているように思います。清志郎のいろんな音楽性に触れることができるGODの中でも片方の端っこに位置すると言いますか。DANGERもそうだけど、清志郎の「声」と「ボーカル力」を一番理解して引き出してくれてたのが梅津さんなのではないかと。
投稿: K.I | 2009年10月17日 (土) 13:19
◆K.Iさん
>「春の嵐」があるおかげでGODに深みが出ているように思います。
僕もこのライブ後にGODを聴き直してみて、改めて「春の嵐」っていい曲だな~って思いました。
リリース当時は全然気にしてませんでしたが、これって作詞・作曲は清志郎と梅津さんなんですね。おまけに梅津さんが演奏しているのはサックスじゃなくてピアノとアコーディオン。この歌詞はいったいどんな意味なのか…。“僕”が待っている人は誰なのか…。いろんな謎賭けが含まれている曲だと思いました。
投稿: Y.HAGA | 2009年10月18日 (日) 19:14