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2009年10月10日 (土)

エルビス・コステロ / マウス・オールマイティ

オレは特別熱心なエルビス・コステロのファンじゃないし、何枚か持ってるアルバムだって全編通してぐっとくる曲ばかりってわけでもない。
でも、コステロの作る曲の中には、聞いた瞬間にグッと身体に取り付いちゃうような“超”の付く名曲がいくつかあることもまた確かなのだ。

この曲、「マウス・オールマイティ」もその一つ。
これは80年代初頭にリリースされた「パンチ・ザ・クロック」というアルバムに収録されていた一曲。決してアルバムのメインとして語られるような曲ではないし、だいたいこのアルバム自体、それほどの思い入れを持っているわけでもない。はっきり言って、熱心なコステロのファンでもこの曲に大きな思い入れを持つ人は、あまり多くないかもしれない。
にもかかわらず、初めて聴いた時からオレのハートを鷲づかみにしちまったんだよなあ、この曲は…。

この3分間の中には、“パブロッカー”エルビス・コステロと彼の率いるジ・アトラクションズのR&R職人としてのセンスの良さが100%出ていると思う。
オレが魅了されてしまうのは、コステロの独特なメロディラインに更に細かく折り目をつけるような、スティーブ・ナイーブのピアノだ。いったい、どうやったらこんなに情緒溢れるピアノがプレイできるんだろう?それに加えて起伏の激しいベースラインが、更に曲の陰影を深くする。
完璧なアレンジ。完璧なバンド・アンサンブル。こういうのを、我々の間では“渋い”と言うのであります(笑)。

曲後半の計算され尽くしたギターソロは、50年代のR&Rを彷彿とさせつつ、明らかにパンク以降を感じさせて新しい。
ずばり、この3分間はセンスの塊なのだ。この楽曲は、R&Rという限定されたフォーマットでも、作り手の気合次第でここまで美意識に溢れた作品を作る事ができるという典型だと思う。この楽曲を聴くと、極東の島国で人気を博す一バンド、ミスター・チルドレンは、この時期のアトラクションズがいなければ生まれなかったことがよくわかるだろう。
この3分間の中に、オレはビートルズからキンクス、パブ・ロッカーにまで繋がる正統派ブリティッシュ・ビート・バンドの系譜を見る。うーん、カッコいいです!エルビス・コステロ…。

ぴーんと冷え込んでどんより曇った冬の日の朝、黒の細身のスーツでも着込んじゃって、この曲をipodで流しながら眉間にシワ寄せて気持ち足早に街を歩くと、気分だけはもうパブ・ロッカー(笑)。見慣れた新宿の街が、一瞬だけでもロンドン・タウンに様変わりする。

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コメント

コステロはほとんど聴いたことが無くてこの曲も初めて聴きました。
HAGAさんの仰ってるセンスが一度聴いただけでよく伝わってくるいい曲ですね。

80年代のPOPさ、米国の華やかさ明るさ、それと英国人独特なのメロディーラインの美しさとか、クラシック的なもの・・いろいろ融合してますね。
どっさりいろいろ混ざってる感じがしましたが、聴きやすいです。そこが職人の細かい技が効いていると言うところでしょうか。
それに、センスの良い鍵盤弾きは絶対必要ですよね。つくづく思います。

繊細で頑固、夢追い人・・英国を背負って米国を想っているアーティストは大好きです。

投稿: Lavinia | 2009年10月11日 (日) 09時01分

◆Laviniaさん
そうそう。コステロにしてもレイ・デイビスにしても、彼らは英国にいながら米国に限りない想いを持っているんですよね。だから、同じR&Rをやっても、ルーツ回帰的になるスプリングスティーンやヒューイ・ルイスと、外から様式に近づこうとするブリティッシュ勢とでは微妙に違うテイストになるんだと思います。
そういった意味では、英国と日本は比較的似た立ち位置でR&Rと関わってると言えるのかも。まあ、むこうは母語がイングリッシュであるという決定的な違いはありますが…。

投稿: Y.HAGA | 2009年10月11日 (日) 12時53分

こんばんは。僕もコステロについてはそんなに詳しくはないのですが、コステロなりのソウル/R&Bを強く意識したこの“Punch the Clock”と次の“Good-bye Cruel World”は当時からずっと大好きです。Everyday I Write The BookとかOnly Flame in Townとか、はっとするような名曲がたくさんありますね。
それにしてもこのMouth Almighty、確かにかっこいいです。
ピアノやギター・ソロ、HAGAさんの文章を読んでから聴くと、耳について離れなくなってしまいました。

投稿: goldenblue | 2009年10月11日 (日) 23時36分

◆goldenblueさん
いやあ~独り言みたいに書いたエントリーにこんなにレスが付いて嬉しいです。っていうか、やっぱりエルビス・コステロの楽曲は音楽好きの琴線に触れる何かがあるんだなあってことを改めて認識しました。

Good-bye Cruel Worldは僕も大好きです。Everyday I Write The BookのPVにはびっくりしましたよね(笑)。このアルバム、コステロ本人はあんまり納得してないようなんですよ。自分で作ったアルバムなのに、あるインタビューでこれをけちょんけちょんに貶しているのを見てびっくりしたことがあります。
でも、こういう天邪鬼なところもこの人の真骨頂かもしれませんね(苦笑)。

投稿: Y.HAGA | 2009年10月12日 (月) 11時51分

はじめまして。通りすがりですが思わず熱くなってしまいました。
凡庸でないイケてるフレーズが次から次へと一曲にてんこ盛りで、普通の人ならアルバム一枚に引き伸ばすのでしょうが、3分間に詰め込んじゃったのがコステロさんのすごいところですね。そのわりにはB面っぽい雰囲気が好きです。

投稿: Nana | 2009年10月13日 (火) 19時16分

◆Nanaさん
コステロは多作ですよね、とりあえず。で、器用すぎて僕の音楽キャパシティを越えちゃうことがこの人を追いきれない理由になってます(苦笑)。でも、自分の書き込みに触発され、最近のコステロに俄然興味が出てきました。
コステロ先生、去年もアルバムが出てましたよね。聴いてみようっと。

投稿: Y.HAGA | 2009年10月14日 (水) 11時24分

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