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2009年11月11日 (水)

ソウル・フラワー・アコースティック・パルチザン『エグザイル・オン・メインビーチ』 発売記念地方巡業 ~アコースティック編~ / 2009年11月9日(月)横浜「サムズアップ」・ 11月11日(水)代官山「晴れたら空に豆まいて」

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僕にとっては、ほぼ一年ぶりのソウル・フラワー・アコースティック・パルチザン(以下アコパル)のライブ。
今回のメンバーは中川敬とリクオはいつもどおりだが、キーボードの奥野真哉が不参加で、代わって春からソウル・フラワー・ユニオンの新ギタリストになった高木克が加わった。これまでのようにダブル鍵盤ではないアコパルが果たしてどんな音を出してくるのか、とても楽しみだったし、なにしろ直前にリリースされたソウル・フラワー・ユニオンのライブ盤『エグザイル・オン・メインビーチ』がすごく良かったから、僕はこのツアー、本当に心待ちにしていたんだ。
どうせ行くなら、がっつり観たいと思い、首都圏2ヶ所、横浜と代官山のライブの両方に行ったんだけど、この2夜、セットリストは同じなのに全然印象の違うライブになったんだよねえ…。
いいライブってのは、ミュージシャンの演奏の良い悪いだけじゃない。場の空気や観客の発する気がスパークしあってこそなんだなあ~ってことを改めて感じた。

9日のサムズは平日で19:00の開演。これは都心で仕事をしてる僕のような人間にはちと厳しい時間だ。案の定、お店に着いたのは開演から15分遅れぐらい。
ギンギンに盛り上がってんだろうなあ~と思って、いそいそとお店に入ったら、なんか妙に静かなんだ、これが。ちょっと拍子抜け(苦笑)。僕は後ろの方の、すでにカップルがいたテーブルに相席させてもらったんだけど、その2人も食うでもなく聴くでもなく、なんか妙にそわそわ。後から来たオレに気を遣ってたのかも知れないけど、こっちはステージしか目に入ってないんだから勝手にいちゃついてりゃいいのに…(苦笑)。
この日は2部構成のライブだったんだけど、結局1部はそのままの空気でなんとなく終わってしまった感じだった。
2部は定番曲をたくさん持ってきたこともあり、後半はかなり盛り上がったんだけど、それでも普段と比べればまだまだだったような気がするなあ…。演奏自体はとても良かったし、僕自身も、2部は前方の音楽仲間がいたテーブルに移動してステージを楽しんだんだけど、それでもちょっと不完全燃焼気味だった。

ところが、11日の代官山は横浜とはまるで正反対だったのだ。もう、最初から最後までどっかんどっかん大盛り上がりで、まるでお祭りのような千秋楽に相応しいライブとなった。これはもう、冗談抜きに僕がこれまで観たアコパルのライブの中でも最大級の盛り上がりだったかも。
なにしろ、アンコールが終わってSEが流れてもお客さんは誰も帰ろうとせず、手拍子や合唱がいつまでも止まなかったのだ。もう、完全に“イっちゃってる”状態だった。

横浜サムズアップのライブは、アタマ何曲か飛ばしちゃってるので、代官山でのセットを中心にライブを振り返る。
オープニングは「松葉杖の男」。その後、「そら」からリクオの「光」へと繋げていく。「光」は普段、ラスト近くに演奏される事が多いので、こんな序盤から演るのは意外だった。
これに限らず、前半は比較的ゆっくりめの曲が多かった。たぶん、歌をじっくり聞かせようという意図があったんじゃないのかな。確かに、こうやって聴くと改めて中川敬の書く歌ってほんとにいい曲が多いとしみじみ思った。歌われたのは、1年前に出たアルバム「カンテ・ディアスポラ 」からの曲が多かったんだけど、どれもこれもほんと、しみじみイイんですよ。
なんて言うんだろう、ソウル・フラワーの歌たちは、一回りしてきたロックファンが、常に傍に置いておきたい気持ちにさせられる歌ばっかりなんだよね。新宿の雑踏の中でも、中央線の通勤電車の中でも、何かの瞬間に突然サビがぽっと頭から再生されるような密着感がある。近くに海はなくとも「海へゆく」に篭められた思いはビシビシ伝わってくるし、「寝顔を見せて」の愛があふれる歌詞には涙が出そうになる。そういうことだ。

代官山でのライブは、最初から素晴らしい盛り上がりだった。観客は最初からもう完全に“出来上がってる”状態。白けたヤツは一人もいなかった。リクオはよく“ライブはステージとお客さん両方で作るもの”って言うけど、そういう意味では、この夜集まった観客はみな自分を開放するのが上手だった。僕らはあの夜、限りなく自由だったんだよ。
これは「晴れたら空に豆まいて」のお店のムードが醸し出した部分も大きい。気持ちをするっと楽にさせてしまう空気が、このお店には確かにあると思う。まず、「晴れ空」は都会のど真ん中にあるってのに、全然代官山っぽくないすごく沖縄っぽい匂いがあるのだ。。僕なんか、入場する時にドリンクチケットの換わりに貝殻を貰えるだけで気分が盛り上がっちゃうもん(笑)。後方には靴を脱いで上がれる畳の桟敷席があったり、赤い唐傘があったり(中川は再三“あれ、回らんのかいな?”って突っ込んでたっけ)、まるで島で暮らす友人の家を訪ねるような気分になっちゃうんだよな。
僕は開演前からオリオンビールとタコライスでスィッチを入れた。千秋楽だしガンガンに楽しもうと最初から気合入ってたんだよな。一緒に観た友人たちをはじめ、周りもそういう人たちが多かったみたいだ。少なくとも、この日はお店の人が思っていた以上にタコライスの売り上げがよかったことは間違いないな(笑)。

高木克のプレイは予想以上に素晴らしかった。オレ、この人は元SHADY DOLLSだし、三宅伸ちゃんのバンドにいた時のプレイが印象的に残っていたから、バリバリのR&Rギタリスト的イメージを持っていたんだけど、結局エレキを手にすることは一度もなく、ブズーキ、マンドリン、ペダルスティールというディープ・サウスの空気やスワンプ的な広がりを感じさせる演奏を見せてくれた。克ちゃんが入ったことで、アコパルの音楽が持つ多国籍感が更に広がったような気がする。
ペダル・スティールをフューチャーした高木克のソロ曲も2つ演奏されたのだが、これも素晴らしかった。「スリープ・ウォーク」というちょっとジャジーなノリの曲は、コード進行が麗蘭の「真夜中のカウボーイ」とよく似ていて、やっぱりギタリストの曲作りだとアプローチが似てくるのかもなあ、なんてことを思ってちょっと面白かった。

それと、高木克の加入でリクオのプレイもちょっと変わったように感じる。ダブル鍵盤だったときは、奥野さんがベーシックなラインをキープして、リクオは割とフリーに遊び回る様なパターンが多かったように思ったのだが、今回はリクオが意識的にキープする側に回り、克ちゃんがのびのびプレイできる場を作っていたような気がする。その分、リクオがアコーディオンを持つ場面がなかったのはちょっと残念なんだけど…。
とは言っても、後半のアッパーな曲の時はリクオも相当ハメを外していたけどね(笑)。特に、横浜がキーボードだったのに対し、代官山の時は生ピアノがばっちり用意されていたので、リクオ自身ノリノリだったように見えたし…。

2部はカバーも飛び出した。リクオの「サヨナラCOLOR」と、なんと中川敬ボーカルの「僕の好きな先生」だ。続けてリクオの「胸が痛いよ」。いうまでもなく、これは忌野清志郎との共作曲だ。この2曲は2人の清志郎に対する気持ちを形にしたんだと僕は受け止めた。中川は前述のライブ盤のライナーでも清志郎に対する哀悼の言葉を述べていたし、来年正月に出すシングル盤でも「僕の好きな先生」をカバーしているらしい。
「胸が痛いよ」に関しては、今年5月、あの事があった直後の藤沢で聴いて以来、僕にとっては特別な曲になってしまった。この日はさりげなく、本当にさりげなくライブが佳境に入る前に挟み込むような形で演奏されたんだけど、僕はどうしても涙をこらえる事が出来なかったなあ…。アコパルのライブで涙を見せるなんておかしいし、実際周りでそんな人は誰もいなかったんだけど、どうしても駄目だったんだよ、俺…。

その後は怒涛のハイテンション・ナンバー連発。観客は大喜びで、リクオの「ミラクルマン」で総立ちに。続けてソウル・フラワー・ユニオンの「ラヴィエベル ~人生は素晴らしい!」とか「荒れ地にて」とかが始まるもんだから、これで盛り上がらないわけがない。もう、手拍子・足拍子・大合唱!
ライブであんまりでかい声で歌うのはルール違反!とか言う人がいるかもしれないけど、ソウル・フラワー・ユニオンのライブに関してはそれは通用しないんじゃないか。僕も喉が痛くなるぐらい、ガンガンに歌ってしまった(苦笑)。
「道草節」のサビの大合唱は本当に凄かった。ステージのミュージシャンの声が聞こえないんじゃないかと思えるほどの大合唱。こんなに大きな声で観客が歌うのを聞いたのは初めてかもしれない。
最後はリクオの「アイノウタ」。最近のリクオが必ずラストで歌うこの曲も、コーラスを観客が歌い続けて大盛り上がりのまま本編が終わった。

アンコールは「うたは自由をめざす!」だったかな。オレ、実はこの辺はかなり興奮してたんであんまり良く憶えてないんだけど(苦笑)。

セットリストは横浜も代官山も同じだったんだけど、代官山はなにしろMCもどっかんどっかん笑いが起こる状況だったので、必然的にツアーのこぼれ話なんかがたくさん飛び出し、全体のライブ自体も結果として30分ぐらい長くなっていた。

もう一回おんなじことを言うようだけど、ほんとにライブってのは水物だとつくづく思った。ステージの演奏・場の空気・観客の波動、そういったものが化学反応して素晴らしい共鳴空間が出来上がるんだってことを改めて思ったのだ。

アコパルに限らず、サムズアップとかスター・パインズ・カフェでのライブは、時々しーんとした雰囲気になることがある。
行ったことのある人はわかると思うけど、これらのお店は単なるハコ貸しじゃなく、テーブル席で食事もお酒もゆっくり楽しみながらライブを観るアメリカン・ダイナー風のスタイルだ。僕はこういう雑多な雰囲気が大好きだし、見知らぬ人と相席だって全然平気なんだけど、苦手な人もけっこういるんだろうなあ…。まして地方から遠征して来た人なんかだと、都市生活者と地方生活者との流儀の違いまで必要以上に意識してしまったりするんじゃないだろうか?
意外なことに、中川敬もサムズでライブをやるのは初めてだと言っていた。推測だけど、横浜の時は観客もサムズに初めて来たという人が多かったんじゃないだろうか。そんな人たちは、通常のライブハウスとは違う場の空気に馴染むのに時間がかかってしまい、今ひとつ自分を開放しきれなかったのではないかと思うのだ。

でも、ライブはやっぱり“参加する”んじゃなくて“みんなで作る”ものなんだと思う。僕も、“みんなで作る”ことの楽しさを、中川敬のおかげで改めて気付かされた気持ちだ。
それと、俺自身がこんなにもソウル・フラワー・ユニオンが好きだったことにも、今さらながらに気付いたなあ(笑)。オレ、実はソウル・フラワーのアルバムだってそんなにたくさん持ってるわけじゃないんですよ。なのに、なんでこんなに曲知ってるんだろう?(笑)
なんか、この2本のライブはひとつのきっかけになるような予感がする。忘れられない夜がまた増えた。嬉しい。すごく嬉しい!

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コメント

はじめまして。
かなり前からこっそりのぞいていましたが、書き込むのははじめてです。

代官山、行きました。
ソウル・フラワー・ユニオン(SFU)は昔から大好きでしたが、最近ライヴに全然行ってなかったし、リクオや克ちゃんを生で見たことがなかったので楽しみにしていました。
もちろんアコパルははじめてでした。

中川敬の刺激的なうた(相変わらずうたもキャラも濃い)、リクオのメンバーや客を煽ってはじけたプレイ(意外なキャラでした)、克ちゃんの不思議な音色(スティールペダルってどんな楽器か知らず、後ろのほうにいたため見えなかったので気になって仕方ありませんでした)、盛り上がる客席(ソウルフラワーのライヴにしてはおとなしめな気もしましたが)、どれもが素晴らしかったです。

ちょっとカゼ気味だったので、翌日のことを考えて行くのを迷ったのですが、行ってよかったです。(翌日から喉の調子が悪化しましたが・・・)
中川が言っていたように、ホモサピエンスにうたがあってよかったです。来月のSFUのライヴ、久しぶりに行ってみたくなりました。

「僕の好きな先生」をカバーすること自体に驚きましたが、中川が、清志郎のレコードでは『初期のRCサクセション』を一番好きでよく聞いたと言っていた(確か追悼文で)ので、その中でも好きな曲だったのかもしれませんね。次のシングル(9曲入りって!)も楽しみです。

◆フィル・カスルさん
良かったですよねえ、代官山。実は僕も翌日は喉がガラガラでした。ちょっと大きな声で歌い過ぎちゃって…(苦笑)。

「僕の好きな先生」は確かに驚きでしたが、中川が清志郎の曲の中でカバーするなら相応しい曲かもな、っていう気もします。
それにしても、いつもながら9曲入りシングルってのは凄いですよね。それはアルバムじゃないか!って突っ込みたくなりますね(笑)。

SFUのライブは僕もしばらく行ってなかったんですが、ライブ盤と今回のアコパルを観て、“これは今観なきゃ駄目だ!”って思っちゃいました。
12日@リキッドルームのライブはビルボード東京での麗蘭のライブと重なってたんですが、オレ、そっちはキャンセルしてソウル・フラワーの方に行くことにしました。
麗蘭は年末の京都で。CHABO、ゴメン!(笑)

先日のライヴ以降、数年おきに来る“ソウル・フラワーの波”(?)がきてしまったようで、SFUのCDばかり聞いています。(会場で買ったリクオのCDも、思い出したように聞いてますが・・・)

型にはまらず、唄いたい歌を好きなように唄う。
表現者としては“あたり前こと”を忠実にやっていることがSFUの魅力、そんな気がします。
表現は意外に?シンプルで、たとい扱っている主題がこ難しくても、わかりやすい歌詞とリズムだからこそ、ライヴではみんなが唄え(歌詞をよく知らなくても)、情感を揺すぶられるのかなあ、などとつらつら考えてしまいました。

9日に下北での石やん、14日に横浜でのヘモグロビンデュオのライヴをすでに予定に入れていたので、12日はどうしようかと躊躇していましたが、これはもう行くしかない、とあきらめ?ました。

考えてみたら、まともにSFUのライヴを見るのは今世紀初かもしれません。(2000年くらいに当時歌舞伎町にあったリキッドルームで見たのが最後かも・・・)
とまれ、メンバーチェンジでどんな音が聞けるのかすごい楽しみです。

ほんとは麗蘭も行きたかったのですが、今年のチャボのライヴは予定が合わなかったり、チケットがとれなかったりで縁がないようで・・・今年は見ない!聞かない!と決めました。
とは言いつつ、うっかり?Leyonaの10周年記念では見てしまいました・・・CDでは感じなかった“力強さ”がすごく印象的でした。

◆フィル・カスルさん
僕も最近はSFUの最新ライブばっかり聴く日々です。最近の中川はすごくいい感じなんじゃないでしょうか?かつてはちょっと頭でっかちなところがあったように思うんですけど、今はもう、何を歌っても、前向きに突き抜けちゃってるっていうか…。僕も今、久々のSFU祭りに突入してます(笑)。

>考えてみたら、まともにSFUのライヴを見るのは今世紀初かもしれません。(2000年くらいに当時歌舞伎町にあったリキッドルームで見たのが最後かも・・・)

実は僕もそうかも…。っていうか、そのライブ、たぶん僕も行ってました。ズボンズが前座だった時じゃないですか?あれ、なんか僕的には今いち乗り切れなかったんだよなあ。あれでちょっと離れちゃったんですが、去年のアルバムあたりから、おっ!と思い始め、今度のライブで完全復活って感じです。
12日、どんなライブになるのか、すごく楽しみです!

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