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2009年11月11日 (水)

【映画】パイレーツ・ロック

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これは、1960年代、まだイギリスに民放ラジオが存在せず、BBCでもポピュラーミュージックの放送時間が制限されていた時代に、北海の船上からロックを流して人気を集めた海賊ラジオ局にまつわる物語だ。
主人公は、煙草とドラッグで高校を退学させられた少年カール。彼は更生のために母親の旧友クエンティンのもとで暮らすことになったが、クエンティンは北海に浮かぶ海賊ラジオ局、「ラジオ・ロック」の代表を務める人物だった。その船では、毎日ロックを大音量で流しながら、自らもロックそのものの享楽的な生き方を楽しむDJたちがたくさん暮らしている。カールは自由気ままな彼らに振り回されながらも、すぐに彼らの仲間に。彼らの反体制的な行動は、しばしば政府の神経を逆なでするが、それも上手くかわしながら自由な生き方を求め続ける…。ってな話だ。

これはオレ、大人のおとぎ話だと思う。
映画は、60年代のブリティッシュ・ロックをたくさん盛り込み、ミュージカル調の展開。“体制に立ち向かう自由人”みたいな部分や、1人の青年の成長や初体験を描く青春ドラマ的な部分、それに破天荒なキャラクターたちが繰り広げるイギリス的コメディ・センスを楽しむ部分など、いろんな見方を楽しめるパーツがたくさん揃っている映画だと思った。
笑っちゃったのはクライマックス。まるで「タイタニック」もどきの海洋パニックになるんだもん(笑)。破天荒なストーリーに付いていけない人もいるかもしれないけど、とりあえず俺は大笑い(笑)。これはね、ストーリーを几帳面に追っちゃいけない映画だと思うぞ。何しろ、皮肉屋さんの英国人が作った映画なんだぜ(笑)。

そう言えば、朝日新聞の映画評で作家の沢木耕太郎が、この映画を“終わりが見えている哀しい映画だった”みたいな言い方をしていた。沢木さんは、体制側ってのは実は柔軟で、海賊ラジオみたいな反抗はいずれ体制側が取り込んでしまうのが目に見えている。そもそも、海賊放送はロックが一般的なモノになればなるほど世の中に必要とされなくなるパラドックスがあるから、その存在自体が哀しいものだったんだ、なんて言い方をしていた。

まあ、言ってる事はわかるけど、俺はこの映画、体制VS反体制みたいな見方や、海賊ラジオに対するリスペクトなんて見方をするより、イギリス人らしい毒気を含んだ極上のエンターティメントだと思って、頭の中を空っぽにしたほうが楽しめると思うんだ。
なにしろ、監督のリチャード・カーティスは、あのミスター・ビーンの仕掛け人だった男ですよ。そして、イギリス人はモンティ・パイソンから繋がる捻ったコメディを面白がる国民ですよ。バカ真面目にストーリーだけ追っかけたり、現実はどうだったんだろう、なんて考えちゃいけませんって(笑)。

当たり前ですが、この映画は音楽の使い方が絶妙だ。ラジオのチャンネルを合わせたとたんに流れ出す「All Day & All Of The Night」には鳥肌が立ったし、ビーチボーイズの「Good Vibrations」もカッコよかった。うん、この映画は出来る限り音響のいい映画館で見たほうがいいと思う。俺は、新宿武蔵野館で観たんだけど、もう少し音量上げて欲しかったぜ(笑)。

まあ、楽しいだけといわれれば確かにそれだけの映画なんだけど、ちょっと真面目なことを言っちゃうと、これを観てて、かつて反主流のはずだったロックは、今や音楽の“主流”になっちゃったんだなあ、なんてことを感じた。
今の時代、いわゆる“ロックっぽい”カッコをしていても、眉をひそめられることは少なくなったし、いつでもどこでも自由にロックが聴けるのはいいんだけど、枕元で深夜放送をこっそり聴いて得られる“後ろめたい快感”は味わえなくなっちゃったんだなあ、って思ったのだ。

そういう意味では、最後にデビッド・ボウイの「Let's Dance」が流れたのは、リチャード・カーティスらしい皮肉がこめられていたのかもしれない。
それまでずっと60年代のヒット曲が流れていたこの映画で、いきなり80年代の「Let's Dance」が出てきたのは、すごく唐突で違和感を感じた。けれど、これは80年代以降のロックが単なるポップスになってしまったことの風刺だったのかもしれないと気が付いたのだ。海賊ラジオ局を乗せた船が沈んだことで、それに関わった人たちは助かったけれど、70年代以前のロックが持っていたスピリットは海底奥深く沈んでしまった…。みたいなね。

うーん、まるでホテル・カリフォルニアだな、こりゃ。

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コメント

前に観た「ラブ・アクチュアリー」が面白かったので是非見たいと思っていましたが、HAGAさんの記事を読んで更にその思いが強くなりました。
イギリス人って屈折してますからねー。ナンセンスな笑いが大好きだし。シリアスに見えてバカバカしかったりするのを理解できず正面から受け取ってしまう人には違った風に観えてしまう映画なのかな?
松田優作の映画も観たくなりました。HAGAさんの文章ってラジオ聴いてるみたいですね。

投稿: K.I | 2009年11月20日 (金) 08時18分

◆K.Iさん
>イギリス人って屈折してますからねー。ナンセンスな笑いが大好きだし。

ビートルズやキンクスの一連の作品なんかにも、イギリス人の捻りの効いたセンスを感じる事ができますよね。この映画は、そういう英国音楽を聴き慣れてる人には割りとすんなり理解できてしまうところがあるかもしれません。

>HAGAさんの文章ってラジオ聴いてるみたいですね。

すごく嬉しいご感想です!ありがとうございます。

投稿: Y.HAGA | 2009年11月20日 (金) 16時19分

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