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2009年11月16日 (月)

【映画】SOUL RED 松田優作

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あんまり期待しないで観に行ったんだけど、驚いた。これは凄い。凄すぎる!見応えたっぷりだった。
「SOUL RED」は、今年生誕60年・没後20年を迎えた俳優・松田優作のドキュメンタリー映画。エグゼクティブ・プロデューサーに未亡人の松田美由紀の名前があることからもわかるように、これは“作らされた”映画ではない。故人に近かった人たちが、前々から“作ろう”と模索していていた松田優作の公式ドキュメントなのである。
オレは特別熱心な松田優作のファンではないんだけど、少年時代にテレビで観た松田優作やショーケンの影響はやはり大きい。CSの再放送ドラマなんかはつい見てしまうし、彼らに関する動きが何かあったりすると必ずチェックしてしまう。

この映画は、生前松田優作が残した映画やドラマの名シーンを選りすぐり、親交のあった著名人や内外の映画人らのインタビューを集めて構成されている。熱心な優作ファンの中には、映画をブツ切りにしちゃ意味がないし、収められたエピソードも予測できる範囲内のもので物足りないという声があるらしいんだけど、オレにはえらく刺激的だった。
なにしろ、初っ端から「ブラック・レイン」のオーディションなんていう貴重映像が出てくるのだ。これがもう完全にオーディションの域を超えてしまっている。瞳の奥に滲む狂気を抑え込むように演技する松田優作は、もう完全に“入っちゃってる”状態だった。その磁力の強さはスクリーンを超えてこっちまでガシッと伝わり、オレは思わず座席で座り直してしまったぐらい。
「ブラック・レイン」で共演したアンディ・ガルシアも、優作に関するコメントをたくさん語っていたが、それも決してリップサービスではなかったと思う。今でもオフィスに優作と2人で写った写真を飾っているという彼の中には、今でも間違いなく松田優作が住み続けているのだろう。

その他にも、優作の代表作からの名シーンが目白押し。もう、圧倒されてしまった。「あばよダチ公」での有名な“札束一気食い”や、「蘇える金狼」での肉体美を見せ付けるワンシーン、探偵物語での薬師丸ひろ子との切ないラブシーンなど、とにかく出るわ出るわ…。CM映像にも独自のアイディアを出してこだわっていた松田優作、懐かしいGATSBY(ヘアスプレー)やトライアングル(焼酎)なんかのCMも観る事ができた。とにかく、ブツ切りだろうがなんだろうが、これだけ気合の入ったシーンを次々に見せられてはぐうの音も出ない。どんな人のどんな言葉より、松田優作という役者のとんでもなさが伝わってきた。
それと同時に、当時の日本映画の持っていたパワーにも圧倒されたなあ…。オレ、これは観てなかったんだけど、鈴木清順監督の「陽炎座」で、大楠道代が井戸の中に沈んでいくシーンなんか、凄まじいぐらい胸に迫るものがあった。あの壮絶なまでの美しさ…。今の一線の女優で、果たしてあれほどの凄みを出せる人がいるんだろうか。そんなことも感じた。

ともあれ、松田優作という俳優の凄いところは、自分の演技に関する要求が極めて高く、それを求めて水が流れるように変わり続けてきたところじゃないだろうか。こうして時系列で名シーンを並べられると、その変遷ぶりが手に取るようにわかる。
「家族ゲーム」の森田芳光監督は「松田優作は“ブラックレイン”から国際スターになったんじゃない。その前からとっくに世界レベルの役者だったんだ」と言っていた。オレもそう思う。松田優作は出てきた時から完成品だったのだ。「太陽にほえろ!」の刑事役がそうであったように、ただ走り、ただ撃つだけで、ただそれだけで見とれてしまう。体躯のバランスも、身体全体から醸し出す空気も完璧なのだ。走るだけで男が見惚れてしまうような俳優なんてそうはいないだろ?
ところが、本人はそれに満足せず、アクションの域を脱した作品に次から次へと出演し、最後はハリウッドへ…。出来過ぎといえば出来過ぎだけど、本人はまだまだ満足してはいなかったんだろうな…。

松田優作、改めて凄い俳優、凄い男だったと思う。
もし、優作が今生きていたらどうだったんだろうか…。たぶん、俳優をやる傍ら、監督作品もいくつも手掛けていたんじゃないかと思う。

現役の松田優作チルドレン達、浅野忠信や香川照之のコメントも熱かった。生粋の優作の子供たち、松田龍平と翔太も、父親としてとしてというより、一人の役者としての松田優作を語っていたところが頼もしい。
オレ、今の日本映画界は決して暗くないと思うなあ。テレビを観ればふやけたドラマばかりやってる昨今だけど、松田優作の魂・SOUL REDをきちんと受け継ぎ、身を削って演技の高みを目指すような役者は確かにいる。彼らの心に、松田優作は今も生き続けているのだ。

脚本家・筒井ともみが映画の中でこんなことを言っていた。“この世にいるかいないかはどうでもいいこと。自分が強く影響され続ける存在である限り、その人は自分の中で生き続けるのだ”と。
うーん、いい言葉だ…。

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