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2009年12月 9日 (水)

【映画】E.YAZAWA ROCK

B6eaa9f1 80年代ごろは、僕らの間では“矢沢永吉が好きだ!”と声を大にして言うことは、なんとなく恥ずかしい雰囲気があったと思う。あの頃、たとえばRCサクセションやストリート・スライダーズが優等生にも不良にもなりきれない少数派のための音楽だったとしたら、矢沢永吉はストレートな“不良”のための音楽だった。当時はそんな住み分けがあったのだ。何と言っても、永ちゃんは僕らにとってはビックでありすぎた。“E.YAZAWA”の例のロゴや、本人が口にする強烈な上昇志向も、80年代の軽いノリには濃厚すぎて、なんだかそぐわない感じがしたっけ。 要するに、同じロックでも、矢沢永吉は僕らの聴くロックとはちょっと違う種類のような気がしていたのだ。

あれから20年の歳月が流れた。僕が、“あ、最近のヤザワ、いい顔してるなあ…”と気が付いたのはいつ頃からだろう。時々テレビで観る永ちゃんは、相変わらずパナマ帽を被って白いマイクスタンドを跳ね上げてロックを歌っていたけれど、その佇まいは80年代とは何かが違っていたのだ。使い込んだ銀のような味って言えばいいのかな…。いつの間にか、大人の男のシブさが備わっていたのだ。

そこへきてこの映画。もう、ガツーン!だぜ。ヤザワ、むちゃくちゃカッコいいじゃないの!オレ、男だけど、なんて色気のあるオヤジなんだと思った。若い時もそりゃあカッコよかったけど、今のヤザワは間違いなくもっとカッコいい。カッコよくて優雅なのだ。

オレ、しみじみ思い知ったよ。人から何といわれようと、ひとつの物事に正面から取り組んできた男はやっぱりスゲエな、と…。
矢沢永吉のやっていることは、昔も今も基本的に何も変わっていない。ドラマに出たり、海外進出してみたり、時代時代で夢中になることは違えども、基本は無骨なロックと珠玉のバラードの二本立て。それだけなのだ。でも、だからこそカッコいい。時代に色目を使うことなく、自分の信じることを真正面から“きちんと”やって、欲しいものは真正面から勝負して獲った。後ろから不意打ちを食らわして獲るようなことは決してしなかった。今の永ちゃんには、そんなスジを通して登り詰めた男にしか身に纏えない、いぶし銀のシブさが漂っている。その永ちゃんの男の顔を、リハーサルシーンで、ライブで、プライベートなインタビューで、この映画は真正面から捉えているのだ。それだけでもう十分じゃないか。素晴らしいドキュメンタリーだと思った。

当然のごとく、矢沢語録も大爆発。それも、うわべだけの台詞ではなく、すべて裸一貫でやってきたヤザワだからこそ言える言葉ばかり。その説得力たるやハンパじゃないのだ。20年前なら滑稽に聞こえたかもしれない言葉の数々が、大きな感動となって耳に飛び込んでくる。うーん、なんでこんなに感動してるんだろう、オレ…(苦笑)。永ちゃんがいい感じで歳を重ね、俺も歳食って若さだけではない人生の機微を感じられるようになったからなんだろうか…。
永ちゃんはこんなことを言っていた。

“若い時の俺は、季節で言ったら夏か冬しかなかった。だけど、この歳になって春のよさ、秋のよさにも気が付いたんですよ。これからの俺の人生は春と秋をいっぱい感じることだと思う”。

これ、すごくぐっときた。なんてイイ言葉なんだろう。15年後、俺が永ちゃんと同じぐらいの歳になった時、果たしてこんなことが言えるだろうか…。うん、言えるように頑張んなきゃな。心からそう思った。

それから、名曲“I Love You,OK”を歌ってる途中で、永ちゃんが感極まって歌えなくなってしまうシーンが出てくるんだけど、この時の顔がすごくすごく良かった。映画では、ここに広島から夜行列車に乗って東京に出て来た時の独白が重なるんだけど、これはヤラれたなあ…。思わずもらい泣きしてしまった自分にも驚いてしまった。俺、矢沢永吉のファンでもなんでもなかったんだけど、あんないい顔で涙する男の顔を見たのは久々だった。それが演技でも何でもなく、ステージで見せたってところがまたスゴイと思う。

かつて、僕ら世代が憧れたミュージシャンや俳優は、圧倒的に同年代よりも上の人が多かった。忌野清志郎しかり、萩原健一しかり、アントニオ猪木しかりだ。それは、そういった男たちの背中に、兄貴としての作法や人生の先輩としての生き様を見たかったからだと思う。
今年は、そんな僕ら世代のヒーローが次々に遠くに行ってしまった辛い一年だったけれど、最後の最後にこの映画に出会えたことは、すごく救いになった。そうだよな、俺たちにはまだ永ちゃんがいたんだよな…。

“俺は地球温暖化とか愛と平和とか歌ってきたわけじゃないけれど、毎年東京ドームに足を運んでくれるお客さんが、ヤザワを見て元気をもらって、またこれで一年頑張れる、そう思ってくれるだけでいいと思ってるんだ”

くーっ!泣かせるじゃねえか!永ちゃんの言うとおり、映画を見て、僕はものすごくたくさんパワーをもらったような気がする。

さあ、走らなきゃ。
60近い永ちゃんも、ランニングやってマシンで筋トレしてんだもんな。たかが40ぐらいでふやけちゃいられねえ。そう思った。

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コメント

始めまして。 今は仕事の関係でオーストラリア在住の同年代(’64年生)の者です。 所謂”矢沢ファン”と名乗れないジレンマを持っていた世代です。実は私は会津若松市出身で高校までそこで過ごしましたので、HAGAさんの言われている事にちょっとした高校時代当時の空気を思い出して思わずコメント入れさせていただいた次第です。

私も田舎で'70~'80前半のE.Yazawa(矢沢永吉ではなく敢えてこの時代はこうだと思います。)というのはツッパリ・ヤンキーのアイコンに過ぎず、ビッグマウスは面白かったというか惹かれるものもありましたが、「オレの人生でこの人との接点(ファンになる・歌を聴く)なんて絶対無いだろうな」と、もっと見た目知的でスマートなアーティストとか松田優作、萩原健一とか要するにヤンキー&田舎者的なものに侵されまいと頑張ってた気がします。

しかし、大学から東京で生活・就職してから40歳になってふと、「アーユーハッピー?」を読む機会が有り、これが一時期(今でもですが)座右の書となってしまいました。 自分も社会での座標が出来、自分の足で立ち、家族を養い、自分の周囲の人間の人生に責任を持つという立場に立った時にやっと、矢沢の言う「やったらんかい」「ふざけるな」という言葉の意味が分かったような気がしたのです。

冷静に考えるとまぁ、「糸井重里」の演出にやられているとは分かっているのですが、たとえそうであっても私にとっての人生のモデルがそこに有るような気がします。あれだけバカにしたり毛嫌いしてたのに...

でも、これはあくまでも私の個人的な見解なのですが、50を過ぎた矢沢永吉から入ったから、好きになったのかも?とも思いますが。

HAGAさんの仰るとおり、今は「優雅さ」というものさえ感じます。

やっぱり男は積み重ねなんですね。 「今」というのも大事だけど、未来への理想に向かっての「今」なんだと思います。スピード落としちゃいけないんですね。

ここまで胸張って「自分」を誇れる男になりたい、そう思わせてくれる男です。

乱文で失礼致しました。


 

投稿: Eddy | 2010年1月 8日 (金) 08時34分

◆Eddyさん
始めまして。同郷人からの、しかもオーストラリアからのコメント、とても嬉しいです。
Eddyさんとは、恐らく育った環境・見てきた景色もとても似ていたのではないかと想像します。80年代、都会的でスマートなアーティストを好きになろうとしてきたってのは、僕、すごく良くわかりますよ。当時は地方と都会との格差がとても大きかったですから、ヤンキー&田舎者的なものから脱する事が自分の夢の実現に繋がると僕も思ってましたからね。そういう文脈からすると、矢沢永吉ってのは好きになっちゃいけないアーティストだったんです、当時は(苦笑)。

でも、僕も仕事を持って家庭を持って、40を回ると、人生そんなにスマートに都会的にやり過ごせないってことがわかるようになってきました。それはバブルの崩壊やどんづまりの世相ともリンクしていることなのかもしれないけど、彼の一貫した、時代に流されない生き方がとても逞しく、素敵に見えてきたんですよね。

正直言うと、音楽的には僕はやっぱり昔の矢沢クラシックが好きで、今の永ちゃんの音作りはちょっとゴージャス過ぎて、ついていけないところもあります。
でも、男としての生き方には大いに惹かれるし勇気付けられますね。なんか、ミュージシャンというよりアスリートに近い感覚でこの人を見ている自分がいます。

投稿: Y.HAGA | 2010年1月 9日 (土) 10時06分

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