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2010年1月12日 (火)

ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト! 40周年記念デラックス・エディション / The Rolling Stones

Msc0912151610002p1 いやあ~やっぱしカッコいいなあ、69年のストーンズ!
実は、この時期のストーンズ・サウンドはなかなか微妙なのだ。オリジナルメンバーのブライアン・ジョーンズからミック・テイラーへと、初のメンバーチェンジを経たバンドは、60年代のタイトなビートと70年代のへヴィロックの中間のようなノリを聴かせるようになっていた。この、わざと腰を屈めたようなルーズなタッチは、ストーンズの長い歴史の中でもこの時期だけのものだと思うんだ。

実は、高校生の時にこのアルバムをはじめて聴いたオレは、もったりしたビート感がどうにも好きになれなかった。その頃大好きだったストーンズのライブ盤は、何と言っても「Still Life」。あのパンキッシュなライブを先に聴いてしまうと、「ゲット・ヤー…」はどうにもゆるゆるに思えたんだよな。はっきり言うと、この遅さは単にストーンズがヘタだからだと思っちゃってました(苦笑)。
でも、90年代に入ってから、突然このテンポ感がものすごくカッコよく聴こえてくるようになったんだよなあ…。いつの頃からか、この手のルーズなビートは“スワンプ・ロック”と呼ばれるようになった。要するに、オレら世代はパンクから一回りしてまたここに戻ってきたし、デジタル世代には聴いたことのない新鮮な音として響いたってことなんだろう。
この時代のノリは、今のストーンズでも絶対に出せないと思う。2曲もチャック・ベリー・ナンバーがカバーされてるけど、テンポを遅くしているが故の、この腰のうずくようなスイング感は一体何なんだろう?正にR&Rの魔法だ。

もっとびっくりしたのは、今回はじめて世に出ることになった「放蕩むすこ」や「ユー・ガッタ・ムーヴ」。これは、今では当たり前になったアコースティック・セットの走りだともいえる。物の本でこの時期のストーンズがこういう曲をライブで演ってることを知ってはいたけど、こんなスタイルでライブが展開されているとは思わなかったので、ちょっと驚いた。
ディスク3の前座ミュージシャンの熱演集も素晴らしい。特にアイク&ティナ・ターナーのパワフルなパフォーマンスには圧倒されてしまった。

オレ、思うんだけど、どうせならこれ、ストーンズのパートは1曲目から実際のライブに忠実に再現した方が良かったんじゃないだろうか?
世間的には、ボートラを別ディスクにまとめたのは、長年の名盤としての本作の味わいを崩さなかったとして、評判がいいみたいなんだけど、オレは逆。どうせ、レギュラー盤はこれからも残るんだから、ここはひとつ、スペシャルなものとして当時の空気をそのまま再現すれば良かったと思うのだが…。

それにしても、「アンダー・マイ・サム」のこのシブさはいったい何だ?地を這うようなグルーヴを生み出すビル・ワイマンのベース、イイなあ~。映画「ギミー・シェルター」でもこの曲は演奏されていたけれど、それとこのアルバムとではかなりアレンジが違って聴こえてくるから不思議だ。
このボックスセットには、ローリング・ストーンズという、イギリス人のブルース好きが作ったマニアックな集団が、強靭なロックバンドへと変容してゆく直前の“屈み”が真空パックされていると思う。ホップ・ステップ・ジャンプの“ステップ”状態。うん、味わい深いよ、この時期のストーンズは。

それにしても、ついにストーンズもこういうリイシューをするようになったのかと思うと、なんとも感慨深い。
アンソロジー・プロジェクトにおけるビートルズや、ブートレッグ・シリーズと題したボブ・ディランのお蔵出しなど、今やビッグネームのほとんどは、過去の貯金を何らかの形で世に出す作業をしているけれど、これまでストーンズはそういうことを一切しなかった。リマスターを出すにしても、せいぜい別バージョン止まりで、未発表曲は絶対に出さない徹底ぶりだったのだ。それが、このボックスセットでついに禁を解いたわけである。
なぜ、今になってストーンズがこういったリリースをするようになったんだろう?僕は、悪徳ジャーマネとして名高かったアラン・クラインが亡くなったことが大きいと思う。ストーンズの曲の権利はすごく複雑になってて、本人たちですら自由にステージで演奏できないものがあると聞いたことがあるが、そういった諸々にアラン・クラインが関わっていたことは想像に難くない。その枷が無くなった今、やっと自由に過去の音源がリリースできるようになったということなんじゃないだろうか?

こうなると、もう何が出ても不思議じゃない。まずは、「エグザイル・オン・メインストリート」のリマスターだな。ひょっとすると、こいつも未発表曲やらライブ映像ならを詰め込んだボックスだったりして。
個人的には、今まではブートでしか聴けなかった、スティービー・ワンダーが前座を務めた72年ツアーの完全収録ライブなんかを期待したいなあ。スティービー+ストーンズで演奏された、UP TIGHT~SATISFACTIONのメドレーが高音質でリリースされたりなんかしちゃったら、もう泣いちゃうよ、オレ。

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コメント

俺、まだコレ聴けてないんです・・・。
自分じゃ買わない(買えない)けど近々聴ける予定。
読んでたらスゲー聴きたくなりました!
HAGAさんの高校生の時の感想、とても判ります。
俺もそうでした。
ストーンズって、好きで判ったつもりでいると
後で“そういうことだったのか!”みたいなこと多いと思いませんか?
ホントに奥が深いですよね~。
そうか、アラン・クライン亡くなったんですか?
間違いなく関係あるでしょうね、リリースしたことに。
今後に期待ですね!
俺は「NASTY MUSIC」の正式リリース希望!です。

◆LA MOSCAさん
ストーンズのサウンドって、“ずっと変わらない”なんてしたり顔で言う人がいますが、年代年代で別のバンドかと思えるぐらい変わってますよね。しかも、それぞれにそうなった理由があるという…。
だから、僕らみたいなパンク世代は80年代初頭のスタイルに一番最初に馴染んで60年代はじわじわと…、とか、若い人たちにとっては逆に69年頃が新鮮、みたいに聴くほうのバックボーンでいろんな風に付き合える懐の深さがあると思います。

>ストーンズって、好きで判ったつもりでいると、後で“そういうことだったのか!”みたいなこと多いと思いませんか?

あるある!ほんと、そうですよね。で、ストーンズってそういうマニア心をくすぐるような発言やリリースを絶妙のタイミングでして来るってところがニクイと思いませんか?(笑)。正直言うと、日本のミュージシャンだと、キャリアが長い人がなかなかいないせいもあるんだけど、そこまで深くサウンドの変遷を追及できる人はあまりいないような気がします。
ヤザワなんかさあ、人間的にはすごく共感できるんだけど、音としては“なんで今こうなっちゃうのかなあ?”って個人的にはちょっと物足りないです。

ナスティー関連は、けっこう可能性あるんじゃないんですか?音源はばっちりあるわけだし、もともと状態が良いんだから、最新技術で飛び切り上等のサウンドに仕上げて映像つきでガツン!と出されたら…もう、失神しちゃうよね?オレたち(笑)。

>この腰のうずくようなスイング感は一体何なんだろう?正にR&Rの魔法だ。

俺もそう思います!特にリトルクィニーのダルさは秀逸。
ズルズルいろんな物?を引きずりながら少しづつ進んでくかのよな
グルーブ感、最高ですね!!!

◆大内ONCHI真一さん
ストーンズに限らず、この時代のアメリカ南部かぶれのロックバンドが出していたルーズ感には、独特のものがありますよね。
このダルいグルーブ感に取り付かれちゃうと、底なし沼のようにずぶずぶはまり込んでしまいます…(笑)。
日本のバンドには、こういうタメの効いたグルーヴを出せるバンドがなかなかいません。ストリート・スライダーズにしたって、今聴くとあのビートはクリアすぎるよね。強いて言えば、やっぱ村八分ってことになっちゃうんだよなあ…。

素晴らしくモッサリしたビートが最高ですね。
キースのギターもフェンダーの「ジャキーン!」って音じゃなく
ギブソンの「ジャリッ!」とした音で最高です。
とくに、アンダーマイサムのギターがさいこう!!

◆おぎょさん
“素晴らしくモッサリしたビート”って表現、最高!(笑)
うん、確かにあの頃のストーンズのギターのトーンって独特ですよね。この頃のキースのメインギターってギブソンだったんですか。ギターにあまり詳しくない僕が言うのもなんですけど、確かにフェンダー系のハリのある音じゃなく、この頃はゴリゴリしたトーンで覆われてますよね。アンダー・マイ・サム、ほんと気持ちいいです!

P.S. 人違いだったら恐縮ですが、おぎょさんって98年のB2Bツアーの時、大阪でストーンズ・オフ会があった時にお会いした方ですか?だとしたら、ものすごく懐かしいし、ここで再開できてとっても嬉しいんですけど。

覚えていてくれてありがとうございます。
そうです。あの、ミナミの二階の居酒屋でBGMが最高でしたね。

◆おぎょさん
やっぱり、あのオーギョーチーさんでしたか!ミナミの居酒屋、懐かしいです!あれからもう10年以上の歳月が流れてるんですねえ。みんな元気なのかなあ…。現役バリバリのストーンズを見ていると、昔のことも思い出したりしますよねえ…。

Y.HAGAさんの予言、当たりそうですよ♪

リイシュー盤「Exile on Main St.」は3バージョンでリリースか?
http://www.stonescollectors.com/blog/item_2652.html

ホントだとしたら、超楽しみ!

◆きあさん
おおーっ!あくまで噂の段階ですが、ボートラ10曲ってのはスゴイ!大盤振る舞いですね、ストーンズ!
オレ、エグザイルは数あるストーンズのアルバムでも最も好きなもののひとつなんです。多くの人が言うとおり、ストーンズはブルースにロックのフレーバーをふりかけて演奏するのが上手いバンドですけれど、このアルバムに収められた曲はあえて加工してないブルース丸齧りのものばかり。こんなアルバムはストーンズの歴史の中でも初期を除けばあんまりないと思うんですよね。

リイシュー盤、ものすごく楽しみです!

立て続けに失礼します。

いよいよ、曲目も明らかになってきました。
というかもう予約受付とな!です。

http://www.stonescollectors.com/blog/item_2664.html

DVDに、Cocksucker Bluesと、
Ladies and Gentlemenの名前があるのが凄く気になったりします(笑)

◆きあさん
いよいよですね。噂では音処理にドン・ウォズが関わってるとか。あの人は、90年以降のストーンズの音の方向を決定づけた重要人物だと思ってるので、リマスターにも期待できると思ってます。
それとDVD。コックサッカー・ブルースにレディス・アンド・ジェントルマン…。これは多分、例の映像のダイジェスト版なんじゃないかなあ。演奏シーンだけ抜き出したみたいな。とても全部は公開できないでしょうからね(苦笑)。

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