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2010年1月17日 (日)

MASTER TAPE-荒井由実“ひこうき雲”の秘密を探る NHK BS2 2009/01/16 21:00-21:55

素晴らしい番組だった。まるで、魔法の種明かしをするかのような至福の時間。50分があっという間だった。

荒井由実(現・松任谷由実)のデビューアルバム「ひこうき雲」。この無名の新人のデビューアルバムには、今はユーミンの旦那になっている松任谷正隆や細野晴臣、林立夫、鈴木茂など、キャラメル・ママ系の錚々たるミュージシャンが名を連ねている。制作に要した期間はなんと1年。当時としては最先端の機材を揃えた、芝浦のアルファ・レコード所有の「スタジオA」で、伝説のサウンドは収録された。
この番組は、現存するアルバムのマスターテープを、ユーミンをはじめ当時レコーディングに参加した人たちが30年ぶりに試聴して当時の様子を語りあい、名盤「ひこうき雲」の秘密を探っていくというものであった。

Hikokigumo_3 集まったミュージシャンは、松任谷由実、松任谷正隆、細野晴臣、林立夫、そしてレコーディングスタッフ。いまや押しも押されもしない大ベテランたちが、37年前の自分達のプレイに顔をほころばせ、「あ、ここはボーカル抜きで聴かせて…」とか「ピアノとベースだけにして…」とか、当時を思い出しながら静かに興奮していた。
マスターテープには、16のトラックに各楽器がきちんと振り分けられており、息を呑んでしまうような生々しい未加工のサウンドが蘇る。これは、レコードの完成されたサウンドとはまた別の味わいだ。テレビの前のオレは、思わず座り直してしまうぐらい、そのぐらい素晴らしかった。

実は、オレは荒井由実時代のユーミンが大好きである(あくまでも“荒井由実時代”というカッコつきで)。この時期のユーミンを語るにはいろんな要素がある。バックを務めたキャラメル・ママ=ティン・パン・アレイとの関係性、アルファ・レコード創設者・村井邦彦の存在…。
確実にいえることは、この時期に製作されたニューミュージック系のアルバムのいくつかは、その後の日本の音楽にとても大きな影響を与えたということ。70年代初めと言うのは、日本の音楽史で言うと、いわゆる「ニュー・ミュージック創成期」にあたり、後々メジャーシーンで大活躍していく人たちの多くが、スタジオ・ミュージシャンとして活躍していた。この時期のポップスや歌謡曲のアルバムには、そんな腕達者なミュージシャンたちが、信じられないぐらい素晴らしいプレイを披露しているものが数多くある。いわゆるヘッド・アレンジの手法が本格的に確立していったのも、この時代なんじゃないだろうか?

「ひこうき雲」でのミュージシャンたちのプレイぶりも筆舌に尽くしがたいほど素晴らしいのだ。70年代後半の亜米利加音楽を聴いてきた人ならわかると思うが、細野晴臣のベースは、さしずめチャールズ・ラーキー+ジェームス・ジェマーソンといった感じだし、鈴木茂は、ダニー・クーチとエイモス・ギャレットとローウェル・ジョージのエッセンスをそれぞれミックスしたようなプレイを効かせている。
そんなマニアックなことを言わなくったって、センシティヴな感性を持った天才少女の作った繊細な歌が、アメリカ音楽に強い影響を受けたミュージシャンたちによって、しっかりした骨組みを与えられ、素晴らしく普遍的な作品になっていることは、誰が聴いてもよくわかるだろう。

この番組、嬉しい驚きもたくさんあった。
たとえば「きっと言える」で細野さんがガットギターでバッキングをやっていたなんて、これまで全く気付かなかったぜ、オレ。これがまた、ボサノバっぽいタッチで実にイイのだ。細野さんのガットギターとユーミンのボーカルだけで聴くこの曲は、アルバム・ヴァージョンとは全く別モノ。いやあ~素敵だったなあ…。オレ、つくづく思った。ほんとにイイ曲ってのは、たとえ何十年経とうとも鮮度が落ちる事がないんだと…。
「ひこうき雲」では、あの駒沢裕城もスティール・ギターを弾いている。駒沢さんは、このブログを観てくださるような人なら、CHABOと何度か共演したペダル・スティール奏者と言えばお分かりだろう。駒沢さんは、アルバム収録のある曲で自分が演奏した間奏を気に入っておらず、ずっと録り直したいと思っていたそうで、なんと番組中に間奏を再録してしまったのだ!もちろん、今後この曲のトラックを、この日収録されたものと差し替えて発売する、なんてことはないと思うのだが、世に出る出ないは抜きにして、ただ自分の気持ちに素直に、37年ぶりの再演を果たした駒沢さんのピュアなミュージシャンシップは素晴らしいと思った。

当時を再現したスタジオで、ミュージシャンたちが実際に当時の曲を演奏する場面もあった。ピアノの前に座るなり「ベルベット・イースター」のフレーズを弾き出すユーミン…。そして、細野晴臣、林立夫、松任谷正隆と一緒の「ひこうき雲」。オレ、なんだか涙が出そうだったぜ…。このサウンドは、正に日本のポップスの至宝だと思った。

後半、ユーミンが、ぼそっと「小さい部屋で打ち込みだけでやってるミュージシャンたちは可哀想ねぇ…」って言っていたが、ほんとにそうだなあ…。バブルがはじけて、レコード会社も制作費を出し渋り、若いミュージシャンたちは、たっぷり時間をかけた音作りができ難くなっていると聞く。だけど、やっぱり生音の響きと、じっくり時間をかけたミュージシャン同士の音の交換、そして、その場で生まれるヘッド・アレンジの妙こそが音楽の魔法なんじゃないだろうか?

オレ、この機会に荒井由実時代のアルバムをもう一回買い直そうと思う。なにしろ、長いキャリアのユーミンだけど、荒井由実名義のものは、「ひこうき雲」「ミスリム」「コバルト・アワー」「14番目の月」とベスト盤「ユーミン・ブランド」の5枚だけしかないのだ。

YouTubeで探したらこんなのが見つかった。これはかなり貴重だと思うよ、凄い!

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コメント

私も感動しました。いい番組でした。crying

投稿: やまん | 2010年1月18日 (月) 09時53分

ボクも見てました。この番組。
ボクもHAGAさん同様、ユーミンは「荒井」時代が好きです(笑)
ボクが小学生の頃、兄貴がこのアルバムを録音したテープを
持ってて何回も聴きました。

ポット出の新人のアルバムつくりにあそこまで手間と情熱を注ぐ。
今、こんなアルバムつくり恐らく出来ないでしょうね。
もちろんバックのサウンドも素晴らしいんですが・・

やっぱりあのユーミンの声、そして歌詞。
当時流歌謡曲と違う「翳り・暗さ」を帯びた歌。
それはポップスと違う危険な魅力に溢れてた気がします。
ある意味初めて触れた「ロック」かも。

70年、80年はTVやCMからサザンやRCやモトハルが流れてた。
TVやラジオからステキなオンガクが流れてた。
今流れてるのは「平均的」で破綻の無い曲ばかり。
だからこそ・・こういう丁寧な作品つくりをしてほしいな。
ユーミンがきっとこの後長く活動出来たのも・・・
デビューアルバムでここまでステキな体験を出来たからと思うから。

投稿: ながわ | 2010年1月18日 (月) 23時39分

◆やまんさん
はじめまして。ほんとにいい番組でしたね。この番組、他のアルバムとかもやる予定あるんでしょうかね?

投稿: Y.HAGA | 2010年1月19日 (火) 10時36分

◆ながわさん
70年代後半から80年代にかけては、時間もお金も情熱もたっぷり注ぎ込んで作られたアルバムがたくさんありましたよね。バブル期の絶頂の中、レコード会社に潤沢な資金があったことももちろん大きいのでしょうけれど、なによりも、アルファ・レコードの村井さんをはじめ、採算を度外視してでもいい作品を世に出したいという熱意を持ったスタッフの存在が大きかったんじゃないでしょうか?
今は何でもかんでも数字ですよね。いい作品か、ということより、どれだけ売れたかが重視されちゃう。音楽ファンの会話でも“コレは売れそうだね”とか“これでブレイクしそう”なんて話が日常的に出るのっておかしいと僕は常々思ってるんです。僕らは音楽が好きなだけなんだから、売れるか売れないかなんていう視点はどうでもいい話なんですよね、ほんとは。
イイ音楽が聴きたいから、丁寧なアルバムを作って欲しい。それが結果的にいい数字を残せばそれに越したことはないし、実際、ほんとにいい音楽ならそうなると思うんですけどね…。

投稿: Y.HAGA | 2010年1月19日 (火) 10時37分

飛行機雲、何か癒される響きでもありますよね。
ただし、事実を無視する訳には行きません。
以下の動画を是非、是非ご覧ください。
本当のことを知ることは大切なことですから。

http://www.youtube.com/watch?v=70iBeck35nI&feature=player_embedded

投稿: kwwmsy | 2010年3月 2日 (火) 00時49分

◆kwwmsyさん
ゴメン、笑ってしまった(笑)。
いやあ~すごいレスが付くもんだなあ…(笑)。

投稿: Y.HAGA | 2010年3月 2日 (火) 20時39分

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