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2010年1月 9日 (土)

Sheena & The Rokkets “Back In The Rock City '10” / 2010年01月09日(土) 渋谷duo music exchange

Sr2009_lineup_7 今年の初ライブはシナロケ。
このバンドを観るのは、2008年9月にCHABOがゲストで出たライブ以来なんだけど、実は最近のシナロケ、去年からずーっと観たいと思っていたんだよね、オレは。それは、シーナの声が、最近になって往年の調子を取り戻しつつあるという噂を耳にしていたからだ。

オレはイベントなども含め、昔から何度もシーナ&ロケッツのライブを観ている。だけど、ここ何年かはどこか要求不満が残るものになってしまっていた。その理由は、最近のシナロケを見たことのある人なら、暗黙のうちにわかってもらえていると思う。そう、シーナの声だ。煙草を1日60本も吸うというシーナの声からは、若い時の甘いコケティッシュな味が完全になくなってしまった。まるで男かと思うような太いガラガラ声。もともとフラットな歌い方のボーカリストだったこともあり、ハードにシャウトする曲ならともかく、往年のポップな曲が歌いこなせなくなってしまったシーナは、昔を知る者にとっては痛々しかった。
そんなシーナが、昨年春から煙草をきっぱり止めたというのだ。その成果は早くも現れ始めており、昨年の夏ぐらいからは、ライブに行った人から口々に“昔のシーナが戻って来た!”と言う声を聞くようになった。加えて、今のシナロケはドラムの川島に加え、2008年からベースの浅田孟も復帰してメンツ的には最強だ。これでシーナの声が蘇ったのなら、もう何も言うことはないじゃないか!

2008年に結成30周年を迎えたシーナ&ロケッツは、昨年あたりから再び動きが活発になってきている。12月にボックスセットを出したり、シーナの自伝本が出版されるなどしていて、今回のライブはそのリリースに併せたものであった。もう、これ以上ないぐらいのタイミングの良さじゃないか!スペシャルな、バンドの集大成的なライブが観られるんじゃないかと、年が明けてからこっち、オレはこの日が楽しみで楽しみで仕方がなかった。

この日の整理番号は22番。オレは前から3列目、鮎川さんとシーナのメインマイクの中間あたりというばっちりの席をゲットして、Tシャツ一枚で早くから気合入りまくりだった(笑)。もっとも、てっきりオールスタンディングだと思ってたんで、座席があったのはちょっと驚きだったんだけど。まあ、オレも含めて観客の年齢層が高いライブだからそれもしょうがないか…(苦笑)。

ライブは開演予定の18:00を10分ほど回ってスタート。恒例のロケット発射のカウントダウンSEを観客も一緒に叫び、「ゼロ!」と同時に照明がバーッと明るくなってメンバーがステージに出てくる。毎度毎度のパターンだとわかってはいても、やっぱしカッコE~!興奮せずにはいられない!周りを見たらみんな総立ち。なんだあ~やっぱり座席、いらないじゃないの~っ!(笑)。

オープニングは、お馴染みの「バットマン」。続いて「ゲリロン・ベィブ」やら「ホラフキイナズマ」やら、定番曲を惜しげもなく畳み掛ける。カッコ良し~っ!最初の4曲はシーナ抜き・ザ・ロケッツ(笑)で演奏するのが定番なんだけど、男4人は全員革ジャンでキメていて、まったくもうカッコいいったらありゃしない。もう、徹頭徹尾R&Rだ。鮎川さんたちは、オレたちのイメージするR&Rのイメージそのものを体現している。
そんな硬派な面構えと男前なプレイ。…に反する鮎川さんの素朴なMC(笑)。ガツン!とハードに決めた後に、“寅年~!明けましておめでとう~”なんて、超日本風なことを言うんで、ついつい笑ってしまうんだなあ、これが(笑)。

シーナは5曲目から満を持して登場。曲は「スイート・インスピレーション」だ!うわー、懐かしい!これはシナロケの曲の中でもポップなヤツなんだけど、前述した理由もあって、最近は正直言ってちょっと聴くのがキツかったりもしたんだ。だけど、この日は違った!だって、シーナの声、ほんとに戻ってたんだから!もちろん、全盛期と同じとまではいかないけれど、ここまで回復しているとは思わなかっただけに、嬉しかった、これは。
続いて演奏された「プリティーリトルボーイ」や、本編ラストに演奏された「ユー・メイ・ドリーム」は、やっぱりシーナのコケティッシュな声があってこそ輝く楽曲なんだなあ、ってことを改めて強く思った。

シーナの好調ぶりに触発されたか、浅田孟と川島のリズム隊も、以前にも増して強固になったように感じた。オレ、浅田さんがロケッツに帰ってきたのは嬉しいなあ、やっぱり。ARBでのベースも印象深いけど、浅田さんが抜けた後、渡邊信之がベースに回った時は、正直言ってがっかりしたからなあ…。ストーンズじゃないけど、やっぱりこのバンドにはツインギターが似合うと思う。鮎川さんのギターは、一本の時より今の方が明らかに余裕が出てきた。まるで水を得た魚みたいに、カッコいいフレーズをビシバシとキメまくる。ボキャブラリー不足で申し分けないけど、やっぱしカッコE~ぜぇ鮎川さん!最高のキャプテン・ギター!
王道のR&Rバンドはやっぱしツインギター。ストーンズしかり、エアロスミスしかりだ。シナロケは、どうしても鮎川誠のギターばかり注目されるけど、実はナベのサイドギターも凄く良かったりするんだなあ…。この日も、鮎川さんはお馴染みのブラック・レスポールを思いっ切り歪ませ、ナスティーなトーンでひたすら攻めてたんだけど、ナベは曲ごとにギターを持ち換え、いろんなトーンを聴かせてギター小僧の片鱗を見せてくれていた。
あと、思ったんだけど、今のシナロケ、昔の曲も全般的にテンポ速くなってないか?歳を重ねるとレイドバックしたサウンドに傾く人が多い中、まるでクロマニヨンズばりの失踪感。60を超えた人たちが出してるビートだとはとても思えなかった。また言いますが、やっぱしカッコE~!(笑)

キャリアの節目でもある特別なライブだということもあってか、バンドはこの日のためにウェブでリクエストも募ったらしい。そこから選ばれたのは「ハートブレーカー」とか。オレ、この曲聴くの20年ぶりぐらいかもなあ…。いやあ~なんというか、自分がジョン・レノンが亡くなった歳を超えても、シーナ&ロケッツというバンドがまだ存在してて、こともあろうに土曜日の夜に渋谷のど真ん中でライブ観てるなんて…。なんとも言えない不思議な気分になった。こういう瞬間、オレは歳をとるのも悪くないし、音楽を好きで本当に良かったなあ~って思うんですよ。
豪快な「キャプテン・ギター・アンド・ベイビー・ロック」や、お決まりのカウントの合いの手が気持ちいい「ダイナマイト」あたりは、もう頭の中が真っ白になるぐらいノリノリになっちゃった(笑)。

後半は、ロケッツ定番メニューのオンパレード。懐かしい「レイジー・クレイジー・ブルース」、Hでカッコいい「レモンティー」、鮎川さんのギター大爆発の「たいくつな世界」…。本編ラストの「ユー・メイ・ドリーム」では、シーナがステージ下に降り、最前列に詰め掛けた熱心なファンたちの目の前で歌った。

アンコールがまた良かったんだよなあ…。
まずはシーナ抜き・ザ・ロケッツで「マイウェイ」。曲前では、“シド・ビシャスも内田裕也さんもやってました”っていう、先人へのリスペクトも忘れない鮎川さんのMCが泣かせる。次からはシーナも出てきて、デビューシングルの「涙のハイウェイ」。そして、なんとルイ・アームストロングの「What A Wonderful World」をパンクバージョンで演奏。CHABOファンのオレは、いつもライブの最後のSEで聴いている曲だけど、テンポをガンガンに上げてプレイされたシナロケ・バージョンもなかなかでした。
最後の最後は、これまたカバーで「My Bonnie」。これは、ビートルズがデビュー前、誰かのバックバンドで演奏したバージョンがロックファンの間では有名ですよね。シナロケ版もそれと近いアレンジだったな。

全部で2時間半弱。最近のバンドのライブと比べると、ちょっと短いと思うかもしれないけど、オレは十分。なんと言っても、60超えてあのパワーを2時間持続するだけでも凄いと思う。シーナなんて、若い時とほとんど体形も変わってなく、いまだにピンヒール履いて踊りまくっているんだから驚いてしまう。よくあれだけ踊りながら歌い続けられるもんだよなあ…。衣装換えは3回やったのかな。最初がお腹丸出しの白いレザーのセパレート、次がサファイアブルーのチャイナっぽいドレス、アンコールの時が黒い革ジャンと革のホットパンツ。そのどれもが若い時と同じ超ミニスカートなんだから、その心意気だけでもカッコいいと思うよ、オレ。

オレは、シーナ&ロケッツのライブを観ていると、正直言って伝統芸能を見ているような気分になることもある。彼らのライブの展開は、昔から何も変わっていないのだ。お馴染みのR&Rマナーに徹した楽曲を、ガツン!とカマして後は最初から最後までガーッと駆け抜ける…。それ以上でもそれ以下でもないのだ。
でも、それがイイんですよ。以前、誰かが言ってたことだけど、ジャックダニエルは百年前から21世紀の現在まで何も変わらず、美味く芳しいではないか。R&Rやブルースもそれと同じ。変わらないことが芳醇さを生むものだってあることが、この歳になってやっとわかってきたよ、オレも。
ただ、今のシナロケは“進化”はしてないかもしれないけど、演奏のレベルはますます“深化”している。今のバンドのコンディションは、過去のシナロケの歴史の中でも最高レベルなんじゃないだろうか?

彼らのファン達の熱さにも感動したなあ…。開演前、オレは席近くのファンたちと言葉を交わしたんだけど、驚いたことに、静岡だの三重だの九州だの、遠くから来ている人たちもたくさんいたんですよ。そんな人たちも、この日のライブの熱さは大満足だったことだろう。
ストリート・スライダーズもRCサクセションも存在しない今、シーナ&ロケッツは、80年代の日本のロック黎明期から残っている、数少ない正統派R&Rバンドのひとつだ。鮎川さんもシーナも、いつまでも元気にステージで暴れてて欲しい。

いやあ~今日はほんと、パワーをもらった。ごっつあんでした、鮎川さん、シーナ!
オレ、ガッツが欲しくなったら、またライブに足を運びます。お互い、それまでkeep on Rollin'っすね!

Back In The Rock City '10 SHEENA & THE ROKKETS @ 20100109 (sat) DUO MUSIC EXCHANGE, SHIBUYA

Batman's Theme (Neil Hefti) バットマン
Get it on babe ゲリロン・ベィブ
Oh no! I'm flash ホラフキイナズマ
Virus Capsule (Ayukawa - Shibayama) ビールス・カプセル
Sweet Inspiration スイート・インスピレーション
Pretty Little Boy プリティーリトルボーイ
Happy House ハッピー・ハウス
Rock on Baby ロックの好きなベィビー
JAPANIC (4:25) ジャパニック
PLANET GUITAR (4:28) プラネット・ギター
Heart Breaker ハートブレーカー
A Main Lover 今夜はたっぷり
Captain Guitar and Baby Rock キャプテン・ギター・アンド・ベイビー・ロック
DoBuNeZuMi (Ayukawa Makoto) ドブネズミ
Stiff Lips スティッフ・リップス
Dynamite ダイナマイト
Propose プロポーズ
Cry Cry Cry クライ・クライ・クライ
Lazy Crazy Blues レイジー・クレイジー・ブルース
Lemon Tea (Ayukawa - Shibayama) レモンティー
Taikutsuna sekai たいくつな世界
You May Dream ユー・メイ・ドリーム
ENCORE

My Way マイウェイ
Namida No Hiway 涙のハイウェイ
What A Wonderful World ホヮット・ア・ワンダフル・ワールド
My Bonnie マイ・ボニー

OPEN/SHOW:17:00/18:00
全自由席 \4,500(1Drink別、入場整理番号付)

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コメント

HAGAさん、ありがとう!!!というのは20数年前友達のとこで聞いた「Oh no! I'm flash ホラフキイナズマ」ずーっと
頭の隅にあって、でも鮎川さんがやってる曲としかわからなくて
何度かネット検索したんだけど・・・霧が晴れました。
この曲盛り上がったでしょうね!!!

◆大内ONCHI真一さん
>この曲盛り上がったでしょうね!!!

盛り上がりましたよ~!この曲はロックファンなら誰でもわかるとおり、JJFのオマージュですが、さびの部分のメロとか、ニヤリとしてしまいます(笑)。
そう言えば、ローリング・ストーンズも今年で初来日から20年になるんですよねえ…。ストーンズの日本公演なんて夢のまた夢だった時代には、シナロケやスライダーズのライブを、海の彼方のバンドのライブと重ね合わせながら観ていた時代もありましたっけ…。

おおー!
シーナ、声が戻ったんですね。これは聴きたい。
私も最近のシナロケは、どうもシーナの声が耳になじまなく、敬遠していた部分ありました。

これは聴かないといけないですね。

しかし、まぁ、よく声を整えたものだなぁ。

◆dokemonoさん
シーナ、やっぱプロのボーカリストの意地だと思います。考えてみると、ミック・ジャガーにしてもイギー・ポップにしてもロッド・スチュワートにしても、偉大なボーカリストは今みんな煙草止めてるんですよね。そんな先輩達に倣ったんだよ思うよ、シーナも。

シナロケに関しては熱心な聴き手ではない俺ですが
記事読んでたら熱いモノがこみ上げてきました。
そうですよね、あの時代からそのまま生き残ってるのって彼等ぐらいですもんね。

ルイ・アームストロングの「What A Wonderful World」のパンクバージョンはもしかするとジョーイ・ラモーンの影響かも。
ジョーイの遺作(ただ1枚のソロ作)のトップに入ってました。
聴いてみたかったな~。

◆LA MOSCAさん
>ルイ・アームストロングの「What A Wonderful World」のパンクバージョンはもしかするとジョーイ・ラモーンの影響かも。

ああ、これは間違いなくそうだと思います。僕はラモーンズはあんまりきちんと聴いてないんですが、シナロケはストーンズと同じくらいラモーンズをリスペクトしてますからね。
鮎川さんとシーナは、ストーンズやキンクスみたいな60年代のビートバンドと80年代のパンクのビートを同時に消化した人たちですよね。世代は上ですが、そのバランス感覚にはすごく共鳴できます。

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