【映画】 ゴールデンスランバー
はっきり言って、これは出張中に時間調整で観た映画(苦笑)。もちろん、事前情報全くなし。
ところが、最高に面白かったんだな、これが!ホン良し、キャスト良し、音楽良し(なんと、斉藤和義が担当してました)。決して大作ではないけれど、2時間半、たっぷりと楽しめた。
映画の舞台は杜の都仙台。その日の仙台は、地元出身の総理大臣の凱旋パレードが華々しく行われていた。ちょうどその時、主人公の青柳雅春は、大学時代の旧友・森田森吾と久しぶりの再会を果たしている。だが、森田は最初からなんとなく様子がおかしい。やがて彼は意を決したように、青柳が首相暗殺の容疑者にでっち上げられようとしており、自分はそのために彼を呼び出したという恐ろしい事実を告げる。間髪いれず、森田と青柳の乗った車が爆発。危機一髪、何を逃れた青柳は仙台の町を逃げ回る。国家権力を敵に回した青柳は、果たして逃げ切れるのか…。大まかに言うと、この映画は、そんなサスペンス・ストーリーなのだ。
映画を観ていて、オレはこの映画の原作にすごく興味が出てきた。
映画の元となった小説を書いたのは、伊坂幸太郎という若手の作家だ。このところ、この人の書いた本がベストセラーになったり、ドラマ化・映画化されて大きな人気を博していることは知っていたが、オレはまだ一度もこの人の書いた本を読んだことがない。だが、映画を見れば、この人の書く小説が、かな~り面白いものであろうことは容易に想像が付く。
何よりも、登場人物のキャラクター設定が素晴らしい。小説を読まずとも、主人公・青柳を演じた堺雅人がハマリ役であることはすぐにわかった。堺の、ちょっとお人よし過ぎるぐらいに見える笑顔は、青柳のイメージにぴったり。警官に追われながらも、倒した自転車を思わず直してしまったりするシーンには、思わず頬が緩んでしまった。
脇を固める役者さんたちもナイスなキャスティング。大学時代のサークル仲間だった吉岡秀隆や劇団ひとり、それに竹内結子。みんなイイ味だしてたなあ…。
この映画、暴力的なシーンもけっこう出てくるんだけど、なぜかそれほど残酷さを感じない。それどころか、この話の根底には、何か温かいものが流れていることを感じてしまう。それは、主人公の昔の彼女や大学のサークル仲間など、青柳が過去に関わってきた人たちが、彼を救うために時を越えて大きな役割を果たすからなんじゃないかと思う。
人間が生活する上で何よりも大事にしなきゃいけないのは、人との繋がりや信頼関係なんじゃないだろうかか…。この映画の裏テーマで、伊坂幸太郎はそんなことも言いたかったんじゃないかと思う。この売れテーマこそが、この作品を話を単なるサスペンスで終わらせていない所以だ。
そして、これは映画のタイトルにもなっている、「ゴールデンスランバー」にも繋がっているところに、ロック好きのオレとしては、うーんと唸ってしまったわけですよ。
「ゴールデンスランバー」ってのは、音楽好きなら誰もが知ってる、ビートルズ最後のスタジオアルバム「アビーロード」に収められた、ポール・マッカートニー作の小品。
映画の中で、卒業を控えた青柳たちが「アビーロード」を聴きながら、気持ちがバラバラになってしまったビートルズのメンバーたちを必死で繋ぎ止め、昔のような関係に戻ろうとしていたポールの心境に思いを巡らせるシーンがある。それは、やがて、社会に出てバラバラになってしまったかつての仲間たちが、もう一度昔の絆を思い出し、青柳を救おうとするところに繋がるわけだ。ここにオレはぐっときたんだよねえ…。
自分が影響を受けた音楽が、その人の生き方にどう影響していくかというのは人それぞれだ。
ある1曲を聴いたことで、その後の人生の方向が決まるほどの影響を受ける人がいれば、あくまでも音楽は音楽として、自分自身には全く影響を及ぼさないという人もいる。オレの場合は、何かにぶつかった時や、悩み事ができた時、それと近い状況を歌った歌やアルバムに励まされてきたという経験を何度もしているので、「アビーロード」を聴いている時の青柳たちの気持ちも、すごくよくわかるような気がしたのであった。
おそらく、原作者の伊坂幸太郎も、そんな音楽のマジックを何度も経験しているのだろう。そして、こういうフィーリングは、ロックな感性と激しく共鳴するのではないか。
うーん、もはや純粋な映画の感想じゃないような気もしますが(苦笑)、伊坂ワールドに触れるきっかけとして、オレはとてもいいタイミングでこの映画に出会ったような気がするなあ…。
そうそう、エンディングテーマには、斉藤和義の既存の曲が使われてるんだけど、これが映画のテーマとあまりにもうまくハマっててびっくり。
知ってる人には、ちょっとネタばらしになっちゃうから、何が使われてたかは、あえて言わないでおきますけど(笑)。
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「ゴールデンスランバー」★★★★
堺雅人、竹内結子、吉岡秀隆、劇団ひとり、香川照之主演
中村義洋 監督、139分 、 2010年1月30日公開、2009年、東宝
(原題:ゴールデンスランバー)
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うわっ!
コレも観たいと思ってた映画です。
昨年11月に斉藤和義のライヴ観たとき
MCでこの映画のことに触れ
「ゴールデン・スランバー」さわりだけ唄ってくれました。
「今度は愛妻家」観てきました。
スゲーよかったです!
教えてくれてありがとうございました。
投稿: LA MOSCA | 2010年2月 4日 (木) 22:14
こんにちわ。アタシも今週観て来たばかりです。
>ある1曲を聴いたことで、その後の人生の方向が決まるほどの影響を受ける
自分トコにも書いたのですが、エンディングのせっちゃんのこの曲は伊坂にとって実際にそんなエピソードがある曲らしいですよ。
伊坂は音楽ファンとしても有名ですもんね。ピーズの曲をモチーフにした作品も書いてるし、ルースターズの大江の再活動に感動して書いた作品もありますし。
投稿: yukodokidoki | 2010年2月 5日 (金) 08:48
時間調整ってそんな(苦笑)。
今いちばん観たい映画です!
ので、途中から読み飛ばさせていただきました(すみません…)。
観に行ったら、また戻ってきます。
投稿: ayako | 2010年2月 5日 (金) 10:53
◆LA MOSCAさん
>MCでこの映画のことに触れ、「ゴールデン・スランバー」さわりだけ唄ってくれました。
そうなんですか!映画でもせっちゃんの歌う「ゴールデン・スランバー」はさわりだけなんですよ。もっとも、アビーロードに入ったこの曲自体、メドレーになっててさわりだけ、みたいなタッチもありますけど(苦笑)。これ、サントラも出てるんですよね。完全バージョンがどんなカタチで収められているのか、気になるところです。
投稿: Y.HAGA | 2010年2月 5日 (金) 14:14
◆yukodokidokiさん
>伊坂は音楽ファンとしても有名ですもんね。
え、そうなんですか!やっぱりねえ!
>ピーズの曲をモチーフにした作品も書いてるし、ルースターズの大江の再活動に感動して書いた作品もありますし。
ホントですか!全然知りませんでした。伊坂さん、筋金入りのロックファンじゃないですかあ!これはますますこの人に興味が出てきました。よろしければ、その作品名を教えていただけませんか?
投稿: Y.HAGA | 2010年2月 5日 (金) 14:16
◆ayakoさん
面白かったっすよ、この映画。
トピは映画の感想というより、伊坂幸太郎への興味みたいな書き方になっちゃいましたが、純粋に映画としても良かったですよ、もちろん。堺雅人って、去年の夏に鮎川誠さんと親子役で共演した「ジャージの二人」から注目してたんですが、なかなかいい俳優さんですよね。
投稿: Y.HAGA | 2010年2月 5日 (金) 14:16
ピーズの方はそのまんま「実験4号」ってタイトルです。同タイトルの山下敦弘監督の映像作品のDVDとセットになってます。JAPANでのハルのインタビューがそのまま使われてたりして、伊坂どんだけピーズが好きなんだよ?って作品です。
大江慎也復帰を聞き感激のあまり執筆したのは「チルドレン2」と言う短編で連作短編集(伊坂曰く短編集のふりをした長編)「チルドレン」に収録されています。
他にもモーサムの曲にインスパイアされて書かれた作品や、サンボマスターの山口がモデルとしか思えない登場人物が出てくる作品もありますよ。(これで伊坂にはまったら自分で探す楽しみにあえてタイトルは書きませんが)
伊坂原作で中村監督作品はこれが三作目なんですが、前2作もかなりイイですよ。前作はパンクバンドの話でやはりせっちゃんが音楽監督やってますし、1作目は「アヒルと鴨のコインロッカー」(これはボブディランの風に吹かれてが使われてる)でアタシが伊坂作品で一番好きな小説なんだけど、絶対映像化は不可能だろう!って話なのにそれを見事に映像化して来たので中村監督には一目も2目も置かざるを得なくて・・・。どちらも原作を読んでから映画を観るのをオススメしたいです。
投稿: yukodokidoki | 2010年2月 6日 (土) 00:25
◆yukodokidokさん
伊坂幸太郎って、僕が思ってた以上の音楽マニアみたいですね。ロッキンオン・ジャパンまで読んでるってのはスゴイ!ますます小説の方に興味が出てきました。教えていただいてありがとうございます。
投稿: Y.HAGA | 2010年2月 8日 (月) 12:59