懐かしい武蔵野・三多摩の匂い - 【映画】「グーグーだって猫である」を観て -
2年前にロードーショー公開された映画をWOWWOWにて鑑賞。
んー、一口で言ってしまうと、いかにも文科系女子が喜びそうな映画だ、こりゃ。あまりにもまったりした展開に、オレなんか途中眠たくなってしまったぜ(苦笑)。でも、映画の本筋とはちょっと違う話ではあるんだけど、僕はこの映画の舞台になった町をリアルによく知ってるんで、その町の空気がとても上手に収録されているのには、ちょっと感心してしまった。
この映画は、漫画家の大島弓子さんと彼女の愛猫、それに周辺の人たちとの様々な人間模様を描いた作品。その大島さんが長年住んでいた町が東京の吉祥寺だ。この映画のロケも、実際に吉祥寺のさまざまな場所を使って数多く行われている。
実は、僕は18で東京に出てきてから、結婚するまでの長い間、吉祥寺に近い小金井に住んでいた。地方に住んでる人には位置関係がよくわからないかもしれないが、吉祥寺も小金井も東京の中心からちょっと離れた、中央線に沿って広がる“武蔵野”と呼ばれるエリアに属している。昔からこの辺に住んでる人だと、三多摩地区なんていう言い方をしたりもするなあ。
中央線沿線は昔から音楽や演劇を志す者、小説家・漫画家などが多く住むと言われ、特に吉祥寺はライブハウスや芝居小屋、ギャラリーやアートっぽい洒落た店が数多くあり、若者に人気がある町なのだ。
十代後半、僕は小金井市から隣の武蔵野市にある大学に通う生活を続けていた。吉祥寺は武蔵野市にある街だったから、本当に良く遊びに行っていた。当時は呑みに行くのもデートするのも、CDを買うのも服を買うのもすべて吉祥寺。都心なんかめったに出なかったもんね。友人や行き付けの店の店員さんなど、知り合いが何人もいて、住んではいなかったけど、僕自身も町の持つ独特の雰囲気に溶け込んでいたように思う。
吉祥寺ではいろんな人を見かけた。たとえば、この映画にも出ている漫画家の梅津かずおさんなんか、もう何度会ったかわからないぐらい。行き付けのバーのカウンターで一人でお酒を呑んでいたら、隣に大柄な女性が座ったので、そっと顔を見たら当時人気が出始めたばかりの松下由樹だったなんてこともあった。今はもう無くなってしまった三鷹楽器の前の道で、忌野清志郎にばったり!なんてこともあったなあ…。
さらっと書いてるけど、ほんとにさらっとそんなことが起こる町だったんだよ、あの頃の吉祥寺は。
映画には、青春の思い出が残っている懐かしい場所もたくさん出てきた。たとえば、小泉今日子演じる漫画家が作品を書き上げ、打ち上げをするお店として提案した「ドスガトス」ってのは、吉祥寺に昔からあるスペイン料理の老舗だ。アシスタント役の森三中と上野樹里が呑んだくれてるのは、フォークシンガーの高田渡が常連だった、焼き鳥が旨い居酒屋の「いせや」。
その他にも、井の頭公園やら、日本最高齢の象として有名な自然文化園のはな子やら、今でも時々行っちゃう駅前のハモニカ横丁やら、若い頃の青い思い出が染み込んでいる所ばかり。
住んでる町の匂いがアーティストの作品に影響を与えるってことは、大いにあると僕は思う。映画の原作者、大島弓子さんの漫画は読んだことがないけれど、東京23区の喧騒からちょっと離れた吉祥寺のタッチが、彼女の作品に影響を与えているであろうことは、映画からも容易に想像が付いた。
ところで、この映画を観て、久々に思い出したのが、ストリート・スライダーズのアルバム「スクリュー・ドライバー」だ。
僕は、これほどまでに吉祥寺から福生あたりの三多摩地区の匂いを色濃く感じるアルバムを他に知らない。実際に三多摩の町を歩いたことのない人には、なかなかわかってもらえない感覚なのかもしれないけれど、もし、彼らが武蔵野の空気を吸う日々を送っていなかったら、このアルバムに収められた曲たちは、世に出ていなかったのではないかとすら思う。
んー、なんだか映画からかなり離れた話になってしまいました(苦笑)。
でも、これを観たおかげで、忘れかけていた吉祥寺でのワイルドライフが蘇ってきたのは嬉しい。昔は、仲間と「いせや」で呑んでたら、突然蘭丸やPJが入ってきた、なんてこともあったんだよなあ…。当時は全然そんなことを思わなかったけど、小金井・吉祥寺時代は、自分の人生の中でも、かなりロックな季節だったんだなあ、と今思う。
下のスライダーズの懐かしいPV、これ、最初の方は吉祥寺の井の頭公園で撮られたものだ。
僕は仲間たちと公園で酒盛りをした時、酔っ払って終電を逃し、HARRYの後ろに見える野外音楽堂のステージの上で夜を明かしたことがある。
あの時、冷たいステージの上に寝転びながら、“東京でもこんなに星が綺麗に見えるのか!”って感動したのを今でも憶えてるなあ…。
もう20年も昔の話だ。
« 「笑っているよ」 -そして日々は続く- | トップページ | リクオ・アルバム発売記念ライブ・ツアー「リクオ&ピアノ」 / 2月20日(土)神奈川県藤沢市片瀬海岸 虎丸座 »
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 【映画】 さよなら渓谷(2013.06.26)
- 【映画】 黄金を抱いて翔べ / 監督・井筒和幸 原作・高村薫(2012.12.03)
- 【映画】 夢売るふたり/西川美和監督作品(2012.09.12)
- 【映画】「山下達郎 シアター・ライヴ PERFORMANCE 1984-2012」(2012.08.27)
- 【映画】へルタースケルター(2012.08.02)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
« 「笑っているよ」 -そして日々は続く- | トップページ | リクオ・アルバム発売記念ライブ・ツアー「リクオ&ピアノ」 / 2月20日(土)神奈川県藤沢市片瀬海岸 虎丸座 »
グーグー~吉祥寺~いせや~スライダーズ
なんかすごく同じ場所をすれ違っているんだなあと
読んでいて感じましたよ
スライダーズ、あれから10年か
生きている間に見たいですね。また
いせやはときどき、バンドの打ち上げで
今も行きますね。
投稿: NOAH | 2010年2月16日 (火) 07:55
◆NOAHさん
え、NOAHさんも中央線ロッカー(笑)だったんですか!じゃあ、どっかですれ違ってても不思議じゃないですね。
>いせやはときどき、バンドの打ち上げで今も行きますね。
僕はもう二年ぐらい行ってないなあ…。公園通り店は改装してえらい綺麗になっちゃったらしいですね。あの、二階に上がると命がけで降りなけりゃならなかった階段が懐かしいです(笑)。
投稿: Y.HAGA | 2010年2月16日 (火) 12:21
来月にはISETANが閉店、駅の改修工事に伴いユザワヤも閉店、ロンロンも改装中。ついでに丸井も改装etc...
街の景色がまた大きく変わりそうですね。
ハーモニカ横丁をはじめとした、ごちゃごちゃした楽しげ(怪しげ?)な街並みは変わって欲しくないです。
投稿: フィル・カスル | 2010年2月16日 (火) 23:35
◆フィル・カスルさん
吉祥寺はもともとデパートが多過ぎましたよね(苦笑)。あの狭い町に、最盛期には、パルコ、ISETAN、丸井、近鉄、東急、それにユザワヤにロンロンに西友だもん。良くやってられるなあ~って思ってたんですよ、実は。町の風景はいろいろ変わっていくけど、ハモニカ横丁や末広通りのような昭和の名残を残す街並みはずっと残ってて欲しいですね。
そうそう、昨日の夜、ちょっと仕事が遅くなった僕は、久々に「もんくすふーず」で夕飯を食いました。
投稿: Y.HAGA | 2010年2月17日 (水) 09:45