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2010年3月20日 (土)

山口洋&細海魚 (HEATWAVE) TOUR2010 ひかりを探しに / 3月20日(土)千葉ANGA

細海魚という人は、日本ではかなり珍しいタイプのキーボード・プレイヤーなのではないだろうか。シンセ機能を駆使して不思議な音色を作り出し、場の空間を変えてしまう人。千手観音のように鍵盤を操り、プレイヤーとしての存在感を見せ付ける人。大まかに言ってしまえば、キーボード・プレイヤーはその2つのタイプのどちらかに分けられると思う。でも、細海魚はそのどちらでもない。両方を併せ持った稀有なタイプのプレーヤーなのだ。
その魚と山口洋のデュオ。洋自身も激しいR&Rギターとアコギの音の響きを活かした静寂な世界とを兼ね備えているだけに、相性は抜群。ヒロシの作る無骨な歌たちが、魚のキーボードの音色の音色によって、鈍く光りだす…。そんなライブだった。

それにしても、この日、僕が千葉の小さなライブハウスで聴いた音楽を何と表現すればいいのだろう…。
普通、R&Rバンドのギター&ボーカルとキーボードがデュオでライブをやるのなら、シンプルでタイトなサウンドを連想すると思う。ところが、この2人が作り出した音ときたら、R&Rの範疇に収まらない、とてもスケールの大きな音楽だった。

予定の開演時刻からやや遅れてステージに現れた2人。
最初、ヒロシは全く音を出さない。会場に流れるのは魚の操るシンセからの、空気を振動させるかのような金属的な音色。その不思議な音色に、僕はしばし自分のいる場所を忘れてしまう。そして、霧の中から光が射しこんでくるように山口洋のギターが鳴り、力強いボーカルが響き渡る。

セットリストは、普段山口洋のソロライブでよく演奏されているものが多く、特にレアな曲が飛び出したわけではない。だが、1月に横浜で見たライブの印象とはまた違った世界が展開されていた。短いながらもツアーをこなしたことで2人の呼吸がより合うようになってきたのだろう、山口洋の激しいカッティングに魚も激しく応酬する場面があったりして、2ヶ月前よりも激しさを増したような感じがした。
この音楽の“引きの強さ”は尋常じゃない。聴き手のイマジネーションをぐいぐい揺さぶり、目の前に断片的な風景を次々と浮かばせるような不思議な世界が展開されていった。

この日のライブが素晴らしいものになった理由として、会場である千葉ANGAの音響の良さも挙がられる。程よい音量でボーカル、ギター、キーボードの音がそれぞれにくっきりと浮かび上がる、とてもクリアーな音だった。この日のような重層的なサウンド空間に浸るには、音響の良し悪しはかなり大きいはず。この日の音の聴き易さは抜群だった。おそらく、ステージの洋も歌い易かったのだろう、ボーカルはいつも以上に朗々と響き渡り、力強かった。

魚が入ったことでアレンジが変わった曲のいくつかは、歌詞にさらに寄り添い、より緊張感が高まっていた。「Life Goes On」なんか、魚がアコーディオンを弾くのだけれど、この曲の由来を知っている者にとっては、ソロの時のアレンジより一層切なく聴こえたんじゃないだろうか。僕も、この辺は聴いていてけっこう辛かった。
ただ、その楽曲のヘビーさは、洋のMCでだいぶ救われたと思う。実は、山口洋のソロライブを見始めた頃、ちょっとした違和感を抱いていたんだよね、オレ。それは、楽曲とMCの落差が激しいこと(苦笑)。山口洋の楽曲に歌われる主人公たちは、何かに迷っていたり、絶望と諦観と必死で闘っていたり、とてもヘビーな状況にあるものが多い。ところが、肝心の洋ときたら、MCではつまらないオヤジギャグを言ってみたり、愛ある毒舌を吐いたりする(笑)。そのグダグダ感にずっこけたりもしていたのだが、この日のライブでもし洋のMCがなかったら、もしかしたらライブは息の抜けないぐらいに緊張感に溢れたものになってしまうかもしれないと思った。

正に“ひかりを探しに”というツアータイトルそのままのライブ。 
この日の山口洋のギターは、細海魚のスタイルに大きく触発されていたと思う。ソロの時に顕著だけど、もともとヒロシのギターはR&RやR&B的なフレーズを奏でるだけに留まらない。響きや空気感を大事にした音で会場の空気を変えていけるものがある。それは、魚の音作りのアプローチと良く似ているということに気付かされた。
近年のHEATWAVEのサウンドの深化は、この2人が出会ったことが大きいと僕は思う。間違いなく言えるのは、この2人は世界中誰もやっていない、独創的な音楽を作り出しているということだ。

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コメント

読み手のイマジネーションをぐいぐい揺さぶる素晴らしいリポート。
いつもありがとうございます!
今までに無い感じの素晴らしいライブだったようですね!!
観たかったな〜!!

投稿: 美海工房ターツー | 2010年3月30日 (火) 07時16分

CDはヒートウェイヴの『1995』から聞いているものの、ヒロシのライヴって見たことないんです(SFUのサポートでは何回か見ましたが)
このレポートを読んで見に行きたくなりました。ヒロシの唄を表すのに、“武骨な歌”って表現、端的で言い得て妙と思ってしまいました。
遅まきながら買ったCD『Live at Cafe Milton』、すごいよかったです。最近のヘビーローテーションになってしまいました。

投稿: フィル・カスル | 2010年3月30日 (火) 18時48分

◆美海工房ターツーさん
>今までに無い感じの素晴らしいライブだったようですね!!

そうですね。洋&魚のデュオは、近年のHEATWAVEのアルバムでの音の世界を、ある意味HEATWAVE以上に濃厚に打ち出していると思います。
それにしても、山口洋、とうとうフルマラソンを完走しましたね!アクシデントの後だから取り止めるのかと思ったら、いきなりの3時間台。スゲエなあ~。僕も半年後ぐらいにハーフマラソンに出るのを目指してみようかと思ってます。

投稿: Y.HAGA | 2010年4月 1日 (木) 15時42分

◆フィル・カスルさん
ヒロシのライヴ、いいっすよ~。バンドの時と違ってアコギ主体なのですが、グレッチを弾き倒すのとはまた違った魅力があります。『Live at Cafe Milton』は僕も愛聴盤です。あれはすごく音のいいライブですよね。透き通るようなアコギの響きと洋の生々しいボーカルは癖になります。

投稿: Y.HAGA | 2010年4月 1日 (木) 15時46分

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