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2010年4月13日 (火)

Jeff Beck Live in Japan 20101 / 2010年4月13日(日) 東京国際フォーラム・ホールA

実はオレ、ジェフ・ベックって最近まで全くのノーマークだったんだ。もちろん彼が三大ギタリストの一人として世界中のロックファンからリスペクトされていることは少年の頃から知っている。だけど、ジェフ・ベックって他のロック・ギタリストと比べると、ちょっと特殊な感じがしてたんだよね。この人の場合、“あの曲でギターを弾いている人”という見方ではなしに、“ギターであの曲を弾いてしまう人”という見方になっちゃうじゃん、どうしても。音楽以前にギターありき、みたいな感じがどうも…。これは、自分自身がギターに挫折した経験があるからなのかもしれないけど、ジェフ・ベックの音楽を理解するには、ある程度自分もギターを弾きこなせないとダメなんじゃないかと思い込んでたんだよね。

そんな気持ちが180度変わったのは、昨年さいたまスーパーアリーナで行われた、エリック・クラプトンとのジョイントライブを観てからだ。
初めて見た生ベックはとにかく凄まじかったのである。指使い一つで、白いストラトキャスターが人の声のように叫び、泣き、歌う。トーンの一つ一つ、フレーズの一つ一つまでが完璧に制御され、まるでギターが身体の一部分になっているかのようにさえ見えた。
数え切れないくらいライブを観ている僕だけど、あんなに生々しいギターを聴いたのは生まれて初めて。しかも、それがただのテクニック披露大会ではなく、きちんと音楽として成立していたのだから二度びっくり。ほんとなら、慣れ親しんでるブルースを基盤にしたプレイをするクラプトンの方が、自分的にはしっくりきやすいはず。なのに、終わってみたら心を打たれたのは圧倒的にジェフ・ベックだった。以来、機会があったら絶対に単体のジェフ・ベック・ライブを見なきゃ、と思っていたのだ。

その機会は意外に早く訪れた。2010年4月、花冷えのする日本に、ジェフ・ベックは「Emotion & Commotion」という新作を引っ提げて来日したのである。このチャンスを逃したら、今度はいつ観られるかわからない。絶対観なきゃ!と思った。
このツアーで、ベックは新しいメンバーとバンドを組んでいる。去年のヴィニー・コライータとタル・ウィルケンフェルドがすごく良かったんで、最初ちょっとがっかりしたんだけど、すぐに思い直すことになる。それは、ドラムにナラダ・マイケル・ウォルデンが来る事がわかったからだ。この人、かの名盤「WIRED」でベックと一緒にやっていた名プレイヤー。80年代は超売れっ子で、高中正義のアルバムで叩いてたこともあったっけ。最近はプロデューサーとして大成功しちゃったから、もうドラムは止めてたのかと思ってた。それがベックと一緒に来るってのなら、これはもう「WIRED」の再現じゃないか。がぜん気持ちが盛り上がってきた!

この日のライブは日本公演最終日ということもあり、会場の国際フォーラムは満員。最近の洋楽不況が嘘のような盛況ぶりだった。年齢層は高めだけど、いかにものギター小僧だけじゃなく、スーツ姿の普通のおじさんも多くて、この人の根強い人気を感じた。

開演時刻の19:00を10分ほど回って会場が暗転。オープニングの「Eternity's Breath」に続いて「Stratus」が初っ端から飛び出す。白いストラトキャスターから耳に馴染んだリフレインが弾き出されていくんだけど、その演奏は昨年観た時とはまた一味違っていた。これは常に新鮮なプレイを求めているベック自身のプレイぶりももちろんだけど、やっぱりバンドメンバーが変わったことが大きい。ナラダ・マイケル・ウォルデンはやっぱり強力だった!ヴィニーが超絶技巧で聴かせるドラマーだとしたら、ナラダの身上は力強さ。とにかく、一音一音が地響きがするほどドカドカ響き渡るのだ。加えて女性ベーシストのロンダ・スミスは、長くプリンスのバックをやってた人。この強力な組み合わせのおかげで、バンド全体がファンキーな味わいとロックっぽい力強さを増した。

ロンダ・スミスのベースソロに続いて、3曲目では待ってましたの「Led Boots」!「WIRED」の再現となるジェフとナラダの邂逅だ。個人的にはこれが今回の目玉曲かと思ってたんで、まさかこんな早い段階で演奏されるとは思わなかったなあ…。ベック先生はリフを決める毎に腕を振って客席を鼓舞。ストラトの艶やかな音色とパワフルなリズム隊からの強力なビートが、マシンガンのように客席に投げ出されてゆく。

そして、新譜からのナンバー「Corpus Christi Carol」が。熱くなった頭を冷やすかのように静謐なナンバーだ。ジェイソン・リベロが幻想的な音色でベックのギターを盛り上げる。
こんな感じで、今回のベックのライブは、新作の「Emotion & Commotion」からの曲を中心にしながら、間に定番曲を挟み込むようなセットリストだった。実はオレ、ライブを観るまではちょっと心配だったんだよね。今度のアルバムはオーケストラとの共演があったり、しっとりと聴かせる曲が多いから、ライブもちょっと地味な展開になるかもなあ、と思ったりしてて…。だが、蓋を開けてみるとミディアムな曲とハードな曲とが絶妙の順番で飛び出すセットリストになっていて、かえってベックのプレイの多彩さを楽しめる構成になっていたと思う。「Rollin' And Tumblin'」とか、何曲かではロンダ・スミスがボーカルをとるんだけど、これもむちゃくちゃパワフルで良かったなあ。

しかし、何度も言うようだけど、ジェフ・ベックのギターはほんとスゴイ…。もう、こんなスゴイ人をスルーしてたオレはなんてバカなんだろうと、ヤケ酒を呑みたくなるぐらいだ(笑)。
思うんだけど、ジェフ・ベックみたいな人のライブって、90年代以降のPAシステムの向上で、その良さが倍増したんじゃないだろうか。今回のライブだって、国際フォーラムは元々あんまり音のいい会場じゃないんだけど、腕のいいPAミキサーのおかげか、低域・中域・高域ともすごくバランスがとれた聴き易いサウンドになっていた。そのおかげで、ベックの細かい技、プリングオン・オフやらタッピングやらがはっきりと聴き取れ、ギター・テクをしらない僕みたいな客にも、その超絶ぶりがはっきりとわかるようになったのだ。トーンコントロールとか、ほんと絶妙。ギターってこんなにいろんなことのできる楽器だったんだなあ、って唖然としてしまうぐらいだった。
しかも、それがちゃんと音楽として成立していることが何よりも素晴らしい。これはもう、ロックとかフュージョンとかのジャンルを超越しているのではないか。強いて言えば、唯一無二のジェフ・ベック・ミュージック。そうとしか言えない。
本編最後にプレイされた「A Day In The Life」なんて、観てたらなんだか無性に泣けてきた(苦笑)。ジョン・レノンの作ったビートルズのあの曲が、21世紀にこんな思いもしなかったアレンジで演奏され、極東の島国で演奏されている。ロックもここまで来たんだなあ…、なんて感慨深くなっちゃったんだ(笑)。

見た目も、御年66歳とはとても思えないぐらい若々しいジェフ・ベック。体形は若い時とほとんど変わらず、上腕は筋肉が盛り上がっているのが客席からもはっきりとわかる。
かつてベックは、いつまでも若々しくいられるコツをインタビュアーから質問され、「必要ない時には食べないことだ」と答えてたっけ(笑)。オレ、これってすごくジェフ・ベックらしい発言だと思うんだ。いつまでもステージに立ち続け、刺激的なプレイを続けるためには、ギターをメンテするように、自分自身の身体をもきちんと制御しておかなければいけないと、そんなことを思ってるんじゃないかなあ、この人は。
ベックぐらいの歳になれば、新しいことにトライするより、それまでの活動を総括するような展開にシフトする人が多いと思う。だけど、この人は今でもアルバム毎に追求する音楽を換え、ギターの可能性を切り拓こうとしているのだ。ジェフ・ベックのギターがこんなにも刺激的なのは、そのサウンドの中に、彼自身の飽くなき向上心が感じられるからなんだろう、きっと。
ステージで滑り止めの白い粉を、もうもうと白煙が立ち込めるほど指にふりかけるベックの姿は、まるで一球一球に魂を込める現役のピッチャーのようだった。

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コメント

いろんな人から絶賛され、勧められてもいながら「う~ん、ギタリストって興味がなくて…」と、思いっきりスルーし続けてる私もヤケ酒組かなぁ(笑)。
技巧派のイメージがあったので、音楽として成立というのが意外(なんて言ったら失礼か…)でした。

しかし最近の60代ロッカーの皆さん、若々しくてかっこいいですよね~。
娘世代の私も惚れてしまいます(単なるオッサン好きという噂も…笑)。

投稿: ayako | 2010年4月16日 (金) 12時15分

◆ayakoさん
そうそう、僕もベックに関してはたぶんayakoさんとおんなじような先入観があったと思います。ギター少年の教科書的な人ではあるけど、一般の音楽ファンが楽しめるようなタッチとは別じゃないか、みたいな…。
でも、十分音楽として成立してます。っていうか、もともとフュージョン系の音楽が持っていた異種格闘技系の興奮が時代とともにだんだん薄れっちゃったのに対し、いまだにスリル満点の音楽をやってるのってスゴイと思います。クラプトンやペイジとは別次元の人なんだなあって思いますよ、マジで。

投稿: Y.HAGA | 2010年4月18日 (日) 10時21分

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