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2010年5月 9日 (日)

An Evening EPO&RIKUO / 2010年5月9日(日) 神奈川県藤沢市 太陽ぬ荘(てぃーだぬそう)スタジオロビー

この日のライブは、リクオとEPOというちょっと信じられないような豪華な組み合わせ。3月にEPOがパーソナリティーをやっているラジオ番組にリクオがゲスト出演し、話が盛りあがってその勢いでこの共演が決まってしまったそうだ。

実はオレ、EPOのライブを観るのはこれで3度目なんだ。
初めて見たのはもう20年ぐらい前。当時付き合ってた女性がEPOのファンで、彼女に連れられてクリスマスに新宿の厚生年金まで出掛けたんだよね。この頃のEPOは元気いっぱいにポップスを歌っていた時期で、RCだのスライダーズだの男臭いライブにばかり行っていたオレは、その華やかさにびっくりしたことを憶えている。
それと、何の曲だったかでEPOが歌詞を間違え、曲を最初からやり直したことも…。ライブで歌詞を間違うなんて別に珍しいことじゃないよね?その時だって、言われなきゃわかんないぐらいの間違いだったはず。他のミュージシャンだったら、そのまますっとぼけちゃうだろうに、わざわざアタマからやり直したんだ、この人は。
アンコールでは、なんとマイクを通さずアカペラで「ハーモニー」を歌った。あれはきっと、ファンへの感謝を生声で伝えたかったんだろう。さらに、後から本人の直筆サイン入りで、ライブに足を運んだことに対するお礼の葉書が送られてきた。
これまで数え切れないくらいライブを観ているオレだけど、お客さんに対してこれほど気を遣ったミュージシャンは他に思い浮かばない。この時から、EPOってつくづく生真面目な人なんだなあ~というイメージが、オレにはある。
2度目に見たのは、90年代に今の奥さんと見た「FANTAGIA」っていうミュージカルみたいなライブ。これはあんまり記憶に残っていないんだけど、ディック・リーやチボ・マットのようなアジア系のミュージシャンが何組か出ていた中、EPOの歌の上手さが際立っていたのだけは、よく憶えている。

その後は彼女のライブに足を運ぶことはなくなっちゃったんだけど、時々無性に聴きたくなる人なんだ、EPOって。
90年代に入ると、彼女は作風が大きく変わり、自分の内面を深く見つめたアコースティックな楽曲が多くなった。アルバム「FIRE&SNOW」とか「WICA」に見えるのは、ポップス歌手EPOではなく、孤独と闘いながら自分のあるべき姿を探し続ける一人の自立した大人の女性の姿だ。それは社会人になり立てで、いろんなことにどん詰まりになっていた頃のオレにとって、とても癒され励まされるものだったのである。
最近はセラピストとしても活動しているというEPO。久しぶりに見る彼女が、いったいどんな歌を歌ってくれるのか、リクオとの共演がどんな感じになるのか、オレはこのライブを本当に楽しみにしていたんだ。

この日は事故で電車のダイヤが大幅に乱れ、EPO自身も到着が遅れた関係で、予定よりやや遅れての開演となった。場所はリクオの地元(そして葉山在住のEPOにとっても地元)、藤沢の音楽スタジオ「太陽ぬ荘」。ここは1年前にもリクオとeliのジョイントライブで来たことがあるのだが、スタジオなのにバーカウンターがあって、お酒も飲めちゃうご機嫌なお店。はっきり言って、下手なライブハウスよりずっとリラックスできちゃう。
お店には地元の音楽ファンがたくさん詰め掛けていた。オレにとっては完全アウエー(笑)なんだけど、何人かの知り合いにも会えたし、この町の人たちのフレンドリーな空気が全然疎外感を感じさせなかったなあ…。開演直前には山口洋も姿を現し、藤沢の音楽人間全員集合!みたいな雰囲気だった。

ジョイントライブ、まずはEPOの登場だ。客席を通ってにこやかに登場してきたEPOさん、まずはその変わらない美しさにびっくりだ。白い衣装から出た肩と腕は健康的な小麦色に焼けており、笑みを浮かべた穏やかな表情は昔と変わらないチャーミングさ。歌いだすとさらに驚き。声も昔のまま!っていうか、昔よりも若返ってんじゃないか?むしろ(笑)。
ギターを抱えて弾き語りで歌われた最近の曲は、80年代の元気いっぱいのポップスとは違っていたけれど、まるで若葉の季節に降る小糠雨のように優しく胸に沁みた。
アコギで何曲か歌うと、今度はキーボードの前に座り、この日の午前中に行っていたというCMのレコーディング話や、海外でのボランティア活動に興味を持っていた時期の話、それに自分がコマーシャリズムから距離を置くようになった経緯などをさらりと語る。オレ、EPOさんのMCも何だかすごく印象に残ったなあ…。なんつうか、ああ、いい歳の重ね方をしてきている女性なんだなあって思ったんだよね。
キーボードでの弾き語りでは、なんとRCサクセションの「僕の好きな先生」も飛び出した。いやあ~EPOがRCサクセションの曲を歌うなんて…。さらにカバーで「花のように」。これは去年亡くなった加藤和彦が書いた曲。想いをこめて丁寧に歌い上げるEPOさんの姿は、本当に美しくて胸を打たれた。
そして、かつて自分がよく聴いていた「百年の孤独」。なんか、すごく揺さぶられたなあ…。この曲を聴いていた頃は、自分にとってはあまりいい季節ではなかったんだけど、間違いなく、この曲でオレのかなりの部分は救われたんだと、今更ながらに気付かされた。
なんて言うのかなあ、声に優しい力があるんだよ、EPOさんって。とても豊かで丸い声が温かく心を癒してくれる。改めて素晴らしいボーカリストだと思った。

休憩を挟んでリクオのライブ。藤沢でのリクオ・ライブは毎回すごく盛り上がるんだけど、この日も最初から客席は大盛り上がりだった。まずは定番の「HEAVEN'S BLUES」。コロコロ軽快に転がるピアノと、お客さん全員参加の指パッチンで体がヨコに揺れだす。
最新アルバムからは、まずユーミンの「やさしさに包まれたなら」が歌われた。これ、最近のリクオのライブでは必ず唄われているような気がする。リクオが江ノ島に住むようになって、気持ち的に一番フィットする曲なんだろうなあ。この日も、ここで暮らすようになって五感が発達したこと、この曲で歌われている神様が、西洋の一神教の神様ではなく、日本古来のよろずの神様の思想に通じる話をひとしきりしてから曲を始めていた。
気のせいかもしれないんだけど、この日の「やさしさに包まれたなら」は、いつも以上にピアノが優しく響いて、リクオの声もリラックスしていたように思うんだ。ホームでのライブって事もあるのかもしれないが、オレが思うに、直前に演奏したEPOさんの影響が大きかったんじゃないかと思うんだよね。
続けて演奏された「雨上がり」は、最近のEPOさんの曲とも通じるような、癒しの色合いをより強く感じた。さらにスーパー・バター・ドッグの「さよならCOLOR」や、新曲の「FOREVER YOUNG」と、カバー、オリジナル織り交ぜた演奏に客席は大盛り上がり。うーん、やっぱり藤沢のノリは素晴らしい!

リクオのライブ最後の曲は、忌野清志郎との共作「胸が痛いよ」。思えば、1年前悲しい報せがあった時、オレはこの場所でこの歌を聴いて涙したのだった。あれからこの曲は、リクオと清志郎を愛する者にとって特別な曲になったような気がする。あれから一年経って聴くリクオの歌は、やっぱりセツナかったなあ…。あの頃の気持ちを思い出したってのもあるんだけど、リクオの歌い方がいつも以上にエモーショナルで…。
1年前の5月9日は、青山で清志郎との最後のお別れをした日。あの日からちょうど一年経ったこの日に、またここで「胸が痛いよ」を聴けたことは、なんだかオレにとっては相応しい過ごし方のような気もした。

アンコールは、待ってました!のリクオとEPOの共演だ。リクオはキーボードの前に座り、EPOさんはハンドマイクを手にする。
セッション前にリクオのMC。「やっとEPOさんと出会えたという気がするし、今、この時期に会うべきして会えたような気もする」と彼は言っていた。これ、オレにとってもそんな感じだった。EPOにリクオ、聴き始めた時期も、ライブに行った時期もバラバラだった2人のアーティストが、時の流れと共に自分の中で結びついた。たかが音楽。人はそういうかもしれない。でも、聴き続けていると、思いがけない宝石みたいな瞬間が降りてることがある。今が正にその瞬間なんだと思った。
EPOさんもこの場所でライブができたことを心から嬉しく思っているようだった。彼女は、近くに住んでいるのに藤沢の駅を降りたことはあまりなかったらしいが、「太陽ぬ荘」がとても気に入ったみたいで、「ここでレコーディングするのも、“有り”だと思いました」って言ってたなあ。

アンコール1曲目は、EPOさんの「キミとボク」。これ、初めて聴いたんだけど、すごくいい曲だったんだ。何よりも、歌詞がこの日のタッチにぴったり。確か“人と人の巡り合わせは砂の粒ぐらいの奇蹟”なんていう素敵な詞じゃなかったかなあ…。
そして、間髪入れずにリクオが次の曲のイントロを弾き出す。え、え、え!?これって「DOWN TOWN」?!。いやあ~まさかリクオのピアノで「DOWN TOWN」が聴けるとは。もう、これだけでこの日のライブは元がとれたようなもんだ(笑)。藤沢まで来て本当に良かったと思った。EPOさんは身体全体でリズムをとりながら、元気いっぱいにこの名曲を歌う。サビでは客席にマイクを向け、一緒に歌うように促す。もちろん、みんな大合唱だ。
なんだか、この日のライブはスタートからエンディングの「DOWN TOWN」にいたるまで、不思議な流れがあったように思う。それは意図してそうなったわけではなく、EPOとリクオ、それに彼らの音楽と一緒に歳を重ねてきた観客とが、幸福な化学反応を起こしたから起こった奇跡なのかな、っていう気もするのだ。

本当に楽しかった。なんだか、改めて生きることの素晴らしさを感じるようなライブだったなあ…。また忘れられない夜が増えた。
それにしてもEPOさん、美しかったっす…。なんだか、久々にEPOのソロライブにも行きたくなちゃったよ。

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コメント

いらっしゃったんですね!
あの日、私もミキサーのすぐ近くにいました。

一般的にEPOといえば、DOWNTOWNという印象があるみたいだけれど、私がすぐに思い浮かんだのは、「音楽のような風」でした。
多分CMで流れていたのだと思います。

私はとりたててEPOの大ファンというわけではなかったんですが、初期のアルバム「GOODIES」がとても好きで、よく聴いていました。
ですから、あの日の曲はDOWNTOWN以外は、おそらく聴いたことがありません。

みんなはPOPイメージを持っていたんでしょうけれど、私の中では「GOODIES」のEPOとなんら変わることがなかったので、演奏した曲がいつ頃の曲かはわかりませんが、「GOODIES」の世界観を持つ女性が年齢を重ねるとこうなるよね、という印象でした。

とはいえ、DOWNTOWNが聴けたのは、やはり感激しました。
途中のMCであんな話をしていたので、昔の曲は演奏しないだろうなと思っていたのですが、前日にリクオさんがお願いしたら快諾してくれたそうです。

ちなみに、リクオさんは当日EPOのライブを聴いて、演奏曲を微妙に変えたらしいです。

◆YUMIさん
あらら、またニアミスでしたね。当日、りんりんさんやサウサリートの皆さんが後ろの方にいらしたのはわかったんで、軽く挨拶できたんですが、ミキサーの近くというとYUMIさんもその辺だったんですか?
後ろの方は山口洋さんの姿もありましたし、なんだか僕なんかには恐れ多い感じでした(苦笑)。

今のEPOさんは、とても自然に音楽を楽しんでる感じがしますね。ライブは80年代とはずいぶん違った感じでしたが、なんだか今の方が素顔のEPOさんらしいな、と思いました。
DOWNTOWNは、本人もとても楽しそうに歌ってたのが良かったですね。それも、ちゃんと今のEPOさんの色が出ていて…。歌い手と一緒に歌も歳を重ねたような感じでした。

それにしてもリクオさん、EPOさんのライブを聴いて、もともとのセットリストをどう変えたんでしょうねえ。興味深いです。

本当に、ニアミスでしたね。
ミキサーの近くというか、真ん中あたりに机が1つあったのですが、そこにいました。
HAGAさんは、どこにいらしたのですか?

私はEPOさんのライブ自体聴いたことがないんですか、そうですね、今のほうがきっと、素顔のEPOさんらしいのでしょうね。

私は、翌週、たまたま別のイベントでリクオさんにお会いして、「GOODIES」が大好きだとEPOさんに伝えたかった、っといったら、まだまだ機会はあるよ、といわれました。
EPOさんも藤沢が気に入ったご様子、あの時間が楽しかったのでしょうね。
セットリストの話は、サウサリートのジョージさんに聞いたのです。たしかに、気になります。その柔軟なところが、リクオさんの魅力だとも、思います。

◆YUMIさん
>HAGAさんは、どこにいらしたのですか?

僕はキーボードが置いてある側の前から2列目です。あまりにも近くてEPOさんと何度か目が合ってしまい、なんか照れてしまいました(笑)。

>まだまだ機会はあるよ、といわれました。

おー!ってことは、これからもリクオ+EPOのデュオが観られるチャンスがあるってことなのかな?確かに、あの組み合わせは一回だけじゃあもったないですね。欲を言えば、今度は2人が一緒にやる曲をもう少し増やして欲しいものです。

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