2010年6月18日(金) 東京うたの日コンサート Vol.5 ~PLEASURE PLEASURE 編~ 山口洋/直枝政広 / 渋谷PLEASURE PLEASURE
このライブは、渋谷のロック喫茶BYGを中心に行われているイベント、「東京うたの日コンサート」の一環として行われたものだ。山口洋はカーネーションのギタリスト・直枝政広と共に出演することになった。
会場は渋谷にできた「PLEASURE PLEASURE」という新しいライブハウス。オレも初めて入る会場。どこかと思ったらセンター街から道玄坂に向かう途中の、一階にド派手なユニクロがあるビルの6階だった。入ってびっくり。会場はクッションの効いた座り心地のいい椅子が並ぶゴージャスな雰囲気で、なんか全然渋谷っぽくない(苦笑)。椅子にはドリンクホルダーまで用意されていて、ライブハウスというよりは小奇麗な映画館みたいだ。ステージも広く、これなら大編成のバンドでも対応可能だろう。
この日のオレは最前列のステージに向かって一番右端という微妙な席。ほとんど角度のないところから観るようになっちゃうんでは?と思われ、空いている席があるのなら移りたいってよっぽどスタッフに言おうかと思ったんだが、フタを開けたら2人とも中央に立っての弾き語りスタイルだったんで、斜めから仰ぎ見るような形になり、逆に見易かった。ただこの会場、音はあんまり良くないな。特にボーカルが変なエコーがかかっていてとても聴き難かった。もっとも、これはオレの場所が場所だったからで、他の席がどうかはわからないけど…。
開演前の会場には、ずっとルー・リードの曲が流れていた。これは出演する2人のカラーを考えればとても納得できるセレクト。
開演予定時刻を10分ほど回り、まずは直枝政広がステージに登場した。オレはこれまでカーネーションもソロライブも観た事がないので、全く先入観なしで臨むライブ。黒地に水玉のシャツを着た直枝は、赤いテレキャスターを肩にかけると、いきなり歪んだ音色で空気を震わせ、淡々とボーカルをとっていく。まずは歌詞がとてもシュールなことに惹き込まれた。夏の駅で独りたたずみ“幻想列車”を待っている…とか、日常のありふれた光景をぐらりと揺るがせる言葉がたくさん散りばめられていた。シュールなだけでなく、聴き手に映像を喚起させる映画的なタッチも感じられ、曲調もベースにブルースやざらついたロックテイストが感じられるものばかりで、とてもサイケデリックな気分になった。向こうの人で言えば、開演前にかかっていたルー・リードやテレヴィジョンのトム・ヴァーラインなんかに近いかな決してとっつき易いタイプの音楽ではなかったけど、思っていたよりずっと楽しめた。
短いセッティングの後、山口洋の登場。ステージに用意されたのはアコースティック・ギターとハーモニカホルダー。
1曲目は「トーキョー・シティ・ヒエラルキー」だった。相変わらずボーカルの音響は悪かったが、ヒロシの声は直枝政広よりもはっきりと聴き取れ、ヒロシのボーカリストとしての力量を改めて感じた。
現在ソロツアーで全国を回っている最中のヒロシ、このところはお客さんとステージが近いところでの演奏を重ねているせいか、最初はPLEASURE PLEASUREのがらんとした雰囲気にちょっと戸惑ったみたいだ。「今日はえらい静かですねえ、皆さん」「今日の会場はエグゼクティブですね…。ビジネスクラスにようこそ(笑)」とか、盛んにお客さんをイジる。いやあ~ヒロシ、戸惑ってたのは観てる方もなんだよ。こんなゴージャスな会場でR&Rってちょっと…。始まって早々に硬い椅子のライブハウスが恋しくなった(苦笑)。
まあそれはそれとして、この日は共演した直枝政広が似たタイプのギタリスト&シンガーだったことで、山口洋の個性や楽曲の良さがより際立って感じられるライブになったように思う。率直に言って、直枝政広の後に耳にしたヒロシの歌はとても聴き易いと思った。どちらも日常の風景を切り取って独自の視点で世界観が貫かれているには違いないんだけど、ロック村の住人としての感覚が顕著な直枝に対して、ヒロシの表現はもっと普遍的。20年前のオレだったら、直枝の表現の方がぐっときたかもしれないけど、今は外に向かって扉が開いたような山口洋の方に惹かれてしまうなあ。
セットリストも普段どおりというか、この日のためにがらっと何かが変わったわけではない。
だけど、もしかしたらこの日のライブは、オレがこれまで見た山口洋のライブの中でも一番余裕があるように見えた。
なんだか、今のヒロシは自分の歌と楽曲に絶対の自信を持っているように感じる。実は、この日のヒロシの機材は何故か機嫌が悪くて、ケーブルはノイズが入りまくりだった。ヒロシみたいに曲にどっぷり入りこみながらプレイするタイプには、かなりストレスだったと思う。だけど、この夜のヒロシはトラブルを逆手に取るように、ある曲でケーブルを引き抜き、なんと生音でまるまる一曲演奏したのだ。オレ、なんかすごくヒロシを逞しく思ったなあ。“音がでかいからロックなんじゃない。街でやるからロックなんだ”っていうのは、ピート・タウンジェントの名言だけど、アコギを激しくかき鳴らしてステージを彷徨する山口洋は、紛れもなくロックだったと思う。なんだかとてもいいものを見た。反抗的だったケーブル君に感謝したい気分だ(笑)。
アンコールは直枝政広と山口洋のジョイント。まずは直枝の曲。直枝のエレキにヒロシがアコギでバックアップ。この2人、一緒にステージに立つのは初めてのようだが、初対面ではなくて以前地方のバーで飲んだことがあるそうな。もっとも、そのことをヒロシは完全に忘れていたようだが…(苦笑)。直枝のMCで、出番前のヒロシはこの日3本もドリンク剤を飲んでいることが判明。“こんな人、初めて観ました”という直枝の言葉には笑うしかなかった(笑)。
それと、こうやって並んだ2人を見ていると、やっぱヒロシはカッコいいなあ(笑)。直枝の方がちょっと年齢が上だってこともあるのかもしれないけど、引き締まったヒロシのそばだと、なんだかオタッキーなロック少年が中途半端に大人になっちゃいました、みたいな感じでちょっと辛かった(酷いこと言ってますね、オレ。直枝さんのファンの方、すいません(苦笑))。
アンコール2曲目は、この日演るとは思わなかった「満月の夕」。いやあ~ナマで聴くのは久々のような気がするなあ…。
終わってみたら2時間半。2人ともたっぷり1時間づつ演奏したから、とても満足感のあるイベントだった。次に山口洋のライブに行くのは7月の江ノ島。久々にリクオと共に出演するイベントだ。楽しみだなあ~。
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