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2010年6月14日 (月)

メイン・ストリートのならず者<デラックス・エディション> / ローリング・ストーンズ

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正直言って、オレはこのリマスターにはあんまり期待してなかったんだ…。
そもそも、このアルバムは楽曲の良さだけじゃなく、それぞれの楽器が一塊りになったような音の悪さも逆に魅力になっているとオレは思う。モノラルみたいなモコモコの音が、キースの家の地下室で行われたというこのセッションのリアルさをより強く際立たせていると感じるのだ。これが変にすっきりした音像になっちゃったら、それはもはや「ならず者」ではないような気がする。物事はなんでもかんでもクリアにすりゃいいってもんじゃないと思うぜ。音楽も人生も混沌としてるから面白いんじゃないか?(笑)。
ただ、CD1枚丸々収録されるというボーナストラックだけは気になった。なにしろ、ローリング・ストーンズがリリース済みのアルバムに曲を追加したのは、今年になってリリースされた「ゲット・ヤー・ヤー・ズ・アウト!」40周年記念盤からで、スタジオレコーディングの未発表テイクにいたっては、50年近く活動を続けているストーンズの歴史の中でもこれが初めてなのだ。

そういうわけだから、アルバムを買ったオレはまずボーナストラックの入ったDISC2から聴き始めた。そして、びっくりして腰を抜かしそうになってしまったのである。それは、飛び出してきたミック・ジャガーの声が明らかに70年代のものではなかったからだ。一瞬、オレのCDには何かの手違いで彼らの最近の発表曲が入ってしまったのかと思ったぐらい(笑)。
慌ててライナーノーツを読んでみると、ボーナストラックのかなりの曲にはオーバーダビングが施してあることが判った。中にはメンバーだけでなく、現在のストーンズのツアーメンバーであるリサ・フィッシャーらがコーラスを被せているテイクもある。
驚いた。この力の入れようは何なんだ!オレは、このアルバムの前情報を全然チェックしていなかったから、どうせボートラって言ったって、腐るほどある未発表曲の中から適当にぶち込むんだろうぐらいにしか思っていなかったんだ(苦笑)。いやあ~ここまで緻密に作りこんだものにしてくるとは…。

オレは、これまで過去音源のリリースには消極的だったストーンズが、ここまでやったことに非常な驚きを感じている。
しかも、収録された曲のどれもが極めて完成度が高い。ボーナストラックには、純粋な未発表曲と、「メインストリートのならず者」に収録された曲の別テイクの2パターンがあるが、1曲目の「PASS THE WINE」なんて、既発の「メインストリートのならず者」に収められたどの曲とも違うタッチを感じる。っていうか、これは2010年の今、新曲としてリリースしても全然違和感ないんじゃないだろうか?
2曲目の「PLUNDERED MY SOUL」はストーンズならではの分厚い音のミディアム・ソウル。リードギターは間違いなくミック・テイラーだと思うが、今回のオーバーダブ・セッションには彼が呼ばれたという噂もあるそうで、これはひょっとすると新録かもしれない。
「FOLLOWING THE RIVER」のミックのボーカルは間違いなく新録。正直言うと、オレは最近のミックのこの“ウニャッ”っていうバラードの歌い回しがあまり好きではないのだが、これに関しては亡きニッキー・ホプキンスのピアノとよくマッチしていると思った。ニッキーは「I'M NOT SIGNIFYING」でもニューオリンズ・テイストの素晴らしいピアノを聴かせているし、やっぱりこの時期のストーンズ・サウンドに欠かせない存在だったことが改めて判る。
既発の曲も、チャック・ベリー風味バリバリの「オール・ダウン・ザ・ライン」や、キースのカントリーっぽいギターが最高でオリジナルより数段ねちっこい「Shine A Light」など、聴き所満載だ。
リマスター盤と銘打ったアルバムではあるけれど、DISC2に関して言えば、これはもう新作と言ってもいいぐらいだと思う。

おそらく、このやり方には賛否両論でるだろう。オーバーダブなんかせず、70年代当時の音をそのまま真空パックして世に出すようなやり方のほうがベターだと思う人もきっと多いと思う。
だけど、個人的にはこの方法、“全然アリ”だと思うなあ…。それどころか、このやり方は今後キャリアの長いバンドのリマスターのあり方にも、新たな一石を投じたのではないか。
プライドの高いミック・ジャガーは、埃をかぶったような音源をススばらいするだけなのは絶対嫌だったに違いない。どうせやるなら、今からでも手を入れて自分たちの満足できる作品として世に出そう。それがバンドとしての現役感を打ち出すことにもなると考えたんだと思う。そういった意味ではやっぱりこれは新譜。ミュージシャンが過去の定番曲を時代ごとにアレンジを変えて演奏していくように、1971年の音を2010年式にリメイクした新譜なんだ、これは。オレはDISC2をそう捉えた。
ただ、これは相当今の自分たちに自信がなければできないと思う。ローリング・ストーンズは、この作品で“過去の遺産を食い潰しているどっかのバンドとは違う!”という強烈な自己主張も成し得たように思う。

肝心の「メインストリートのならず者」本編のリマスターも素晴らしい出来栄えだ。何よりも素晴らしいと思ったのは、新ミックスがオリジナルの混沌とした空気を損なうことのない自然な仕上がりになっていたこと。全体的に低音を強調したり、音の定位をはっきりさせて聴き易くしたりしているが、それほどド派手なマスタリングでないことにほっとしている。これならOK。素晴らしい!

しかし、遂にやったな、ストーンズ。これで、彼らは一つのタブーを破った。膨大な過去の遺産を一般公開する準備はいつでも整ったってことだ。そういった意味で、この作品はストーンズの長い歴史の中でもかなり重要な転換期だと思う。
悪徳ジャーマネ、アラン・クラインが亡くなって足枷がなくなったのかもしれないが、これは今後も何が出てくるかわからないのではないだろうか。21世紀になっても相変わらずワクワクさせてくれるローリング・ストーンズ。彼らが元気でいてくれるだけで、人生の楽しみが何倍にも増えるような気がしてしまう。

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コメント

ラヴィングカップのアウトテイクが最高です!!
このゆったりとした気持ちよさは、一体なんなのだろう?

◆おぎょさん
>ラヴィングカップのアウトテイクが最高です!!

僕もこのテイク、大好きです!既発のテイクはピアノが耳に残りますが、こっちはキースのカントリータッチのぶっといギターが曲を引っ張ってる感じですね。サビのコーラスも、いかにもこの時期のストーンズっぽいいなたさが堪りません。
きっと、こんなこってりしたテイクがまだまだたくさん眠ってるんだと思うんですよ。また出して欲しいです、こういうの。

“ウニャッ”(笑)
確かに。
俺もコレには違和感あるというか辛いものがあります。
でも、今度のボーナス・ディスクは、それを差し引いても
聴き心地よかったですよね?
元があの時代の曲だからなのかなぁ?
このボーナス・ディスク、期待というか予想してたものとは違ったんだけど、よかったです。
俺もありだと思います。

◆LA MOSCAさん
“ウニャッ”。ミックは「オレって上手いなあ~」とか思いながら歌ってますよ、きっと(笑)。あんな変な節回しで歌うボーカリスト、世界中見渡してもあんまりいないと思うんですけどね(苦笑)。
ボーナス・ディスクは、ミックスのやり方も本編ディスクとは変えてますよね。本編はオリジナルの味を極力活かした印象。ボートラは今風のリアルステレオ・ミックス。「ソウル・サバイバー」なんか、後ろのオケは本編・ボートラともに同じものだと思うんですけど、ミックスでかなり違ったテイストを感じます。こういうのを聴いちゃうと、「ならず者」本編の今風ミックスも聴いてみたくなる…って、エントリーと言ってることが矛盾してますけど(苦笑)。

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