小坂忠 with 鈴木茂、中野督夫、永原元、Asiah HORO 2010 -完熟トリオ、フジ・ロックに行く。前夜祭!- / 2010年7月28日(水)横浜Thumbs Up
7/28 wed 横浜Thumbs Up
小坂忠 with 鈴木茂、中野督夫、永原元、Asiah -完熟トリオ、フジ・ロックに行く。前夜祭!-
ゲスト:高野寛、堂島孝平
OPEN18:30/START19:30 ADV¥4500/DOOR¥5000
とても温かいライブだった。まるで小坂忠さんの朴訥とした人柄がそのまま表れたような一夜。この人が如何に多くの人に愛されているミュージシャンズ・ミュージシャンであるかがよくわかった。
僕は最初このライブは行く予定がなかったのだが、2週間前に初めて見た忠さんがあまりにも素晴らしくて、どうしても見たくなってしまったのだ。この日は忠さんが初めて出演するというフジロックの前夜祭という名目。今年忠さんは鈴木茂と中野督夫というベテランギタリストと組んだ“完熟トリオ”でフジロックに出演することになった。こんな豪華な組み合わせを見られる機会はそうそうないぞ。加えてこの“前夜祭”は、高野寛もゲスト主演するっていうんだから、このチケット代はとんでもなく安いと思う(笑)。仕事をサボってでも横浜に行く価値は十分にあると見た(笑)。
ライブは2部構成。
1部は中野督夫が忠さんをサポートし、曲によって高野寛と堂島孝平がゲストで出てくるという展開だった。比較的最近の歌やゲストの持ち歌も歌われ、若手ミュージシャンから見た“リスペクト小坂忠”みたいなタッチもあったと思う。
今日の忠さんは黒いパンツに白いシャツ、素足に白いシューズ。うーん、相変わらずダンディだ…。出番前から楽屋はいいムードだったらしく、柔らかい笑みを浮かべてとてもリラックスした空気をまとってステージに現れた。椅子に腰掛けて次々に曲を歌い上げていくんだけど、いやあ~やっぱり素晴らしいわ、忠さんの声…。なんなんでしょうね、この説得力。またまた大感動してしまった。リラックスして歌ってるように見えるんだけど、ものすごく伝わってくるものがあるのだ。
中盤には高野寛とのデュエットで早くも「ありがとう」が飛び出す。あ~いいなあ…。普段、ぎしぎしした毎日を送っていると、こういう寛容さを忘れてしまうよね。“あんまりカリカリしなさんな…”忠さんの歌声を聴いていると、そんな風に諭されてるような気持ちになった。
パーカッションの永原元が加わると、ますます曲にいろんな色が加わる。1曲だけ忠さん自身がジャンベを叩いた曲もあったんだけど、忠さんのあったかい声とジャンベの土の香りのする音がとてもよく合っていた。
2部は最初から完熟トリオ(やだね、この言い方(苦笑))が登場。1部で出た中野督夫と永原元に加え、コーラスに忠さんのお嬢さんAsiahと、待ってましたの鈴木茂!名盤「ほうろう」に収録されたナンバーを中心に、途中で中野督夫と鈴木茂の持ち歌も1曲づつ挟んで、畳み掛けるように代表曲が演奏された。
いやあ~もう大満足っすよ!げっぷが出ちゃうぐらい(笑)。「ほうろう」に入ってる代表曲はほとんど歌ってくれたんじゃないかなあ…。2部は1曲目がいきなり「ほうろう」。曲後半には鈴木茂の長いギターソロがフューチャーされ、客席から自然と拍手が起こっていた。
自分が鈴木茂のギターを聴くのは今年5月の野音以来だが、まさかこんな短いスタンスで、まさかこんなにステージと近いライブハウスで茂さんのギターと再会できるとは…。鈴木茂が使用していたのは、タバコサンバーストのストラトキャスター。やっぱり鈴木茂といったらストラト!そのコシの強い乾いたトーンには、とても旅情をかき立てられた。モニター用にインナーイヤーのヘッドフォンを付け、音の世界に没入する紡ぎ出す鈴木茂には、一世一代のギター職人のオーラを強く感じた。
もう一人のギタリスト、センチの中野督夫は、1部ではエレキも弾いてたのだが、2部はそれをすべて鈴木茂に任せ、自身はアコースティックでのバッキングに専念。中野さんのプレイも素晴らしかったんだよなあ、実に…。しっかりした確実なカッティングで忠さんの歌を静かに盛り立てていた。バンド全体をコントロールしていたのは明らかに中野さんだろう。それと、MCも面白いのね、この人(笑)。忠さんも茂さんも喋りに関してはあまり得意な方ではないだけに、そっちの方でも忠さんをサポートして頼もしいバンマスぶりを見せていた。
圧倒されたのは「機関車」。すーーーーーーばらしいボーカル。オレ、もう泣きそうだった…。ソウルフルってのはこういうことを言うんだろう。忠さんの歌を聴いてると、ほんとにいろんなことを一瞬のうちに感じてしまう。それは、忠さんの声にとても多くのものが含まれているからじゃないかと思うんだ。まるで、山奥の泉から湧き上がる天然水のような声だと思う。
この曲の深い歌詞にも改めて想いを巡らせた。世の中のラブソングって、「こういう風にしたい愛」とか「こうしているから愛なんだ」みたいなのがすごく多いでしょ?でも、それは結局願望を歌っているだけだったり、狭い世界の中での現状を肯定したいだけだったりする。そういうのは、経験を重ねてくるとすごく薄っぺらく感じちゃったりもするものなのだ。「機関車」に歌われている「愛」は、そんなモノとは全然違う。もっと絶対的な強さを感じる。どうあるべきかとか、どうしたいかとかじゃない。愛は「ただそこに静かに存在している」だけ。でも、それだけでどうしようもなく激しく狂おしい…。そんな深い愛が歌われた名曲だとオレは思うなあ…。
「氷雨月のスケッチ」は、アルバムバージョンとは味わいが違っていたが、このバンドならではのアレンジが素晴らしく、とてもスケールの大きい演奏が引き出されていた。この曲を小坂忠と鈴木茂が一緒に演奏するのは格別の感がある。はっぴぃえんどの「HAPPY END」に収録されたこの曲は、上手くいえないんだけど、それまでの鈴木茂とはちょっと違う、何か彼が新しい次元に足を踏み入れたような気がしている。今の鈴木茂に直接繋がるスタイルはここから始まった、みたいな…。果たしてこの日も茂さんのギターは、雨に煙るネオンが目に浮かぶような色彩感豊かなトーンを発していた。
アンコールでは、演ろう演やるまいか迷ったという「ふうらい坊」を、この日の出演者全員で演奏。休憩を挟んで2時間半のライブだった。
僕の座った席は楽屋ととても近いところだったのだが、ライブ中も周辺はたくさんの人が出入りしており、多くの人に慕われる忠さんの人柄が偲ばれた。そうそう、その中には俳優の佐野史郎さんや2週間前に共演した山口洋の姿もあったなあ…。
あらためて小坂忠さんという人のデカさに魅了された夜だった。
この人の声は日本の音楽界の宝だと思う。何よりも僕がこの人に惹かれてしまうのは、忠さんの声がとてもブライトだというところだ。しっとりした曲を歌ってもからっと明るくて、常にタップを踏んでいるような軽やかさを感じる。そして、人生になくてはならないユーモアもたっぷり。
忠さんはきっと知っているんだろうな。「ありがとう」じゃないけど、喜びも哀しみも、強い人もダメダメな人も、全部ひっくるめてこの世界があるんだってことを…。そんな器の大きい忠さんだからこそ、多くの人を惹き付けて止まないんだろうと思った。
素敵な人だよなあ、小坂忠さん。オレも歳とったら、あんな粋な大人になりたい…。しみじみそう思ってしまった。
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投稿: taukita | 2010年8月23日 (月) 00:20