R.I.P. 角野恵津子様
リクオのツイッターで突然の報せを知った。
僕は今猛烈に悔しい。角野恵津子さんという音楽ライターはずっと前から知っていたのだが、角野さんが“あの人”だとはずっと気が付かなかった。ライブハウス「晴れたら空に豆まいて」のスタッフであり、リクオやソウルフラワー・アコースティック・バルチザンのライブなどでもたびたびお顔をお見かけしていた“あの人”。“あの人”が角野さんだったとは…。
角野恵津子さんのお名前は、80年代からさまざまなミュージシャンのインタビューで見掛けてきた。角野さんのフィールドは、「パチパチ・ロックンロール」みたいなミーハー誌からコアなファンクラブの会報まで幅広かったけど、僕にとってはやっぱりCHABOや麗蘭に関するものが印象深い。嵐のような80年代が去り、メジャー誌が掌を返すようにベテランとなった人たちを取り上げなくなっても、角野さんは相も変わらず彼らを追い続けてくれ、本当に心強く思ったものだ。
そう、角野さんの目線は常に一貫していたのだ。彼女の目には、売れている・売れていない、メジャー・マイナーはまったく関係なかった。ただひたすらに良質の音楽を作り続けている人を、ベテラン若手の区別なく応援し続けていた。
90年代に入ると、メジャー誌に載るインタビューのほとんどは、レコード会社とのタイアップだということに、音楽ファンはうすうす気付き始めた。だが、角野さんはそんな提灯記事を書くようなことも一切なかった。好きなミュージシャン、信頼できるミュージシャンだけを取り上げ、やがてメジャー誌から声がかからなくなっても、自ら作り上げたウェブサイトで良質な情報を僕らに送り続けていた。それは決して楽な生き方ではなかったと思う。ウェブの日記では、アルバイトをしながら音楽ライターとしての仕事を続ける日常が記されていたりして、なんと気骨ある女性なのかと思ったものだ。
個人的なことを言うと、CHABOの2001年10月のAXのソロライブのレポを、僕が当時やっていたファンサイトに書いた時、偶然それを角野さんが読んでくださったことがきっかけで、何度かメールのやりとりをしたことがあった。愚かな僕は、彼女主催のイベントにも何度か誘われていたというのに、何かどうでもいいような理由のために一度もそこに行くことがなかったのだ。
そして、まさかライブハウスで何度もニアミスしていたことも、角野さんが人知れず癌と闘っていたことも、僕は何一つ知らなかった。なんてオレは能天気なんだろう…。なんてオレはバカなんだろう…。
僕は角野さんのイベントに遂に行けなかった(行かなかった)ことを、すぐ傍にいらしたのに挨拶一つできなかったことを、一生後悔し続けるだろう。
バンドブームなんていうバカみたいな風が吹き荒れ、80年代に活躍した良質なミュージシャンたちが軒並みメジャー誌から干されていたころ、角野さんのサイト「恵津子の部屋」は、本当に最後の砦のような存在だった。このサイトは角野さんの生きた軌跡のようなものだと思う。願わくば、彼女の生きた証として永遠に残してほしい。
また一人、癌は美しい人を遠くに連れて行ってしまった。
角野さんのご冥福を謹んでお祈りいたします。(一方的にですが)本当にお世話になりました。どうぞ安らかに…。
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Chaboさんをはじめ ARB、シナロケなど
80年代から数知れず
中でも ボクの好きな EPOさんを
長らく取り上げてくださいました
自分の好きな音楽を追求することで
所謂メジャー路線から離れたあとも
角野さんのサイトは いつもチェックしていましたが...
ご冥福をお祈りいたします。
投稿: さみしげなパイロット | 2010年10月 5日 (火) 21:07
◆さみしげなパイロットさん
僕、一時期EPOさんにすごくハマった時期があるんですが、「WICA」というアルバムの存在を知ったのが、何を隠そう角野さんのサイトからでした。その後も、私費で彼女のツアーを追い駆けたりまでしていて、あの情熱ぶりにはほんと驚きました。
でも、こうも思ったんです。本当に音楽が好きでそれを仕事にしているなら、むしろこうすることが当然じゃないかって…。だけど、僕も含めてその当然のことが「生活といううすのろ」に囚われてなかなかできない。
彼女は軽々とそれをやってしまっていたんですよね。やがてはライブハウスで良質な音楽の現場まで作ってしまって…。なんて美しく生きた人なんだろうと思ってしまいます(涙)。
投稿: Y.HAGA | 2010年10月 6日 (水) 10:52