« 皇居を走る | トップページ | 羽根をもう一枚 »

2010年11月 4日 (木)

【映画】ドアーズ/まぼろしの世界

Doorsnn
ドアーズを初めて聴いたのは高校1年の夏だったか…。流行りモノを追い駆けるより、ガイドブック片手にロックの名盤を辿るような聴き方をしていたロック少年にとって、この70年代のLAを代表するサイケデリックなバンドに出会うまで、そう時間はかからなかった。ある意味、思春期に出会うべくして出会ったバンドだと思う。それに、なぜかあの頃はTレックスとドアーズが再評価される波が来ていた。渋谷陽一もよくラジオでドアーズをかけていたし、未発表ライブやベスト盤がリリースされたりしてマスコミへの露出もけっこう多かった記憶がある。

でも、僕はジム・モリソンという人物になかなか感情移入することができなかったのだ。70年代に若くして亡くなりリジェンドされる何人かのミュージシャンがいるけれど、僕はジムをどうしてもそういう人たちと同じようには見られなかったのである。
ジミ・ヘンドリックスが死んだのはなんとなく納得できる。あんな人間とは思えないような音楽をやっていたら寿命が何百年あったって足りないだろう。ジャニス・ジョプリンにしたって、あれだけヘヴィな歌に自身を寄り添わせてしまっては身が持たないに決まってる。
じゃあ、ジム・モリソンはどうか?僕は彼の死は自滅としか思えなかった。音楽に殺されたというより、ロックスターとしての自分と素顔の自分との谷間に落ち込んでしまった結果が“死”であったという見方しかできなかったのである。

もう一つ、ドアーズの音楽は“楽しむ”という聴き方を拒絶してしまう音楽だとも感じていた。ジミヘンにしたってジャニスにしたって、音楽そのものに死の影はあまり感じない。Tレックスにいたってはヤバい高揚感で一杯だ。それらは今でもipodに入れて持ち運べるし、精神のドーピングとして魂を高揚できる。しかし、ドアーズは聴けば聴くほど頭の芯が冴え渡ってきて、頭上斜め45度からもう一人の自分が自分を見下ろしてくるような冷たい感覚に襲われてしまうのだ。
まあ、その感覚が無性に欲しくなる時があるのも確かなんだけどね。つまり、ドアーズってのは常習したくなる音楽ではないけれど、時としてどうしても欲しくてたまらなくなる時がある…。そんな存在なのだ。こんな風に、僕は少年の頃からドアーズやジム・モリソンに対しては、ずっと複雑な思いを抱いていたのである。

そのドアーズの軌跡が映画になるという。
実はドアーズに関しての映画はこれが初めてではない。10年ぐらい前、オリバー・ストーンが監督を務め、どっかの若手俳優がジム・モリソン役をやったやつがあるはず。だけど、僕はそんな映画を見る気にはなれなかった。ジム・モリソンを俳優が演じるなんてクソだと思ったからだ(確か、元メンバーもこの映画には否定的なコメントを言っていたはず)。
でも、この「ドアーズ/まぼろしの世界」は純然たるドキュメンタリーだというではないか。映像はすべてバンドが活動していた71年までのもので、後から追加撮影されたものは全くないという。おまけに、監督のトム・ディチロは、僕の好きなジム・ジャームッシュ監督のストレンジャー・ザン・パラダイスで撮影監督を務めたと男だというし、ナレーションはなんとジョニー・デップ!
ピンときた。何かが僕の琴線に触れた。これは観ておかなければならない…。

結論から言うと、とてもストレートな作りでドアーズの活動を追った映画だと思った。
そして、僕の中ではこのバンドとジム・モリソンに対する見方がかなり変わったことを告白しなければならない。ジムは決して自滅したのではなかったのだ。この男は、アメリカという巨大な国の時代の潮流に翻弄されたのではないか。
これまで僕は、ジム・モリソンの死は自らがそこに向かって突っ走った結果だと思っていたところがある。いや、ジムに限らずオーバードーズで死に至ったミュージシャンのほとんどにそういう見方をしていたかもしれない。言ってみれば“緩やかな自殺”というか…。
しかし、ジムは決して死を望んではいなかったのだ。むしろ、そこから離れよう離れようともがいていたのだと思う。そんな彼を死に追いやったのは、カウンター・カルチャーの旗手として彼を持ち上げ、やがて掌を返すように保守化して彼を批判したアメリカという国そのものだったのだ。

うーーーん。大衆ってのは、つくづく残酷なものだなあ…。結局、彼らの音楽そのものがじっくり聞かれるようになったのは、ジムがいなくなってからなのだろう。僕が高校時代に体験した再評価の波は、そういう時期だったのかもしれない。まあ、実際にあのライブを見たら、僕だってジムの圧倒的なカリスマ性と喩えようもないぐらい独特なステージ・パフォーマンスに心奪われ、音楽なんか二の次になってしまっていたかもしれないけどね…。

オレはこのバンドの音楽をちゃんと聴いていたのだろうか…。そんな風に自省したりもした。ドアーズは、ある意味伝説化されやすいバンドだ。でも、この映画はあくまでもクールなドキュメンタリーに仕立ててあるのがすごく良いと思う。
出会ってから30年近く。僕はこの映画を見ることで、ようやくドアーズという水晶のようなバンドの実像が掴めたような気がしている。末期のコンサートでジムが叫んだ言葉、“楽しめ!”にはなんだか目の覚めるような思いがしたなあ。
映画学科の学生だったジムが、69年に自主制作した映画『HWY(ハイウェイ)』の映像が、違和感なく挿入されているのも素晴らしい。とにかくこの映画、ロック好きなら必見だと思う。

P.S. 新宿武蔵野館ではロビーに生前ジム・モリソンが残した直筆のイラストなんかも展示されてます。

1
2

|

« 皇居を走る | トップページ | 羽根をもう一枚 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

気になってはいたんですが、記事読んでたらスゲー観たくなりました。

そうそう、高1の頃ですよね。
確か『地獄の黙示録』の時期でしたね。

投稿: LA MOSCA | 2010年11月 6日 (土) 08時33分

◆LA MOSCAさん
>記事読んでたらスゲー観たくなりました。

これ、絶対見て損はしませんよ。ドアーズという不思議なバンドの軌跡を冷静に描き切っていると思います。
『地獄の黙示録』は確か映画の中でもドアーズの曲が使われてませんでしたっけ?時代に関係なく、何年かおきに必ず再評価の波が来るバンドのひとつですよね。

投稿: Y.HAGA | 2010年11月 7日 (日) 13時25分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/111538/49934245

この記事へのトラックバック一覧です: 【映画】ドアーズ/まぼろしの世界:

« 皇居を走る | トップページ | 羽根をもう一枚 »