一年半後の気持ち
雑誌「SWITCH11月号」に、今のCHABOが清志郎に対して抱く心境が語られている。「LOVE さまざまな愛のかたち」という特集の中で唐突に出てくるかけがえのない盟友への想い。やっぱり重かったなあ、俺にとっては…。
10月まで行われてきたツアーの中で、CHABOは切々と清志郎と過ごした日々を語り、彼と二人で作った曲をプレイした。そこにはある種の“覚悟”があったと僕は思う。
この雑誌でのCHABOは、そこからまた一歩気持ちが進んでいるんだなあと思った。今のCHABOは、たとえばライブを終えて独りになった時、「どうして俺は今日清志郎の話をしてきたんだろう…」と思ったりするそうだ。そして、あれから一年半も月日が経っていることに驚き、清志郎がもうここにはいないという実感がますます薄れてきていると告白している。
読んでいて、僕は胸が締め付けられるような思いがした。
最近、僕自身もつらい別れを経験したからよくわかる。CHABOはこれからもずっとこういう気持ちを抱えながら生きていくのだろう。その気持ちは、今後カタチを変えることはあるにせよ(わかり易いところでいえば、清志郎と作った曲を演ったり演らなかったりするとか)、盟友の不在をどうしても受け入れられず、自分はずっと“あいつ”とともに生きているという感覚が消えないのではないか。そんな気がする。
CHABOがこういう気持ちでいることが、彼にとって幸せなことなのかは僕にはよくわからないし、それが時間が経って落ち着くところに落ち着いた故人への“落とし前”であるのかもよくわからない。でも、いずれにしてもCHABOはそういう気持ちでいるのだろうし、僕も今後の人生の節々で居なくなった親友のことを思い出しながら生きていくことになるのだろう。それは辛いとか悲しいとか、そういうことではないのだ。なんと言うか、そうするしかないのである。
やるせないよなあ、残された方は…。でも、残った者が居なくなってしまった人を忘れずに未来を生きていくということは、イコールこんな気持ちを抱きながら歩み続けるということなのだと自分は思う。
多くのファンの気持ちとは違うかもしれないが、僕はCHABOがRCサクセションや忌野清志郎の曲を歌わなくても構わないと思っている。少なくとも、CHABOが清志郎やRCを歌うことが自然なことでは断じてない。清志郎の曲を歌うのは、清志郎の盟友CHABOが誰よりもふさわしいとか、そんな単純な話ではないのだ、これは。そうではなくて、歌ったって自然だし歌わなくたって自然。それは、清志郎の不在と闘い続けているCHABOの気持ちがカタチを変えているだけの話なんだから…。
もうひとつ言いたいこと。それはCHABOが歌う清志郎&RCは、あくまでもCHABOの歌う清志郎&RCなのだ。それを僕は忘れないでいたいと思う。言い方を変えると、CHABOが歌う清志郎&RCを聴くことは、忌野清志郎という男の圧倒的な存在感とその不在を感じることでもある。それは身を切られるように苦しいけど、そのどうしようもない喪失感に胸を焦がすことも、故人を思い続けるための残された者の生き方なのではないだろうか。
P.S. それにしてもSWITCH、創刊当時から知ってるけど、つくづくつまんねえ雑誌に成り下がっちまったなあ…。このCHABOのインタビューをまとめた記事を除くと、後のコンテンツは殆どがタイアップ記事じゃん。今回の特集だって、結局はカルチェの“LOVE”コレクションとリンクしてるというオチだからねえ。
これって愛なの、新井さん?
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コメント
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こんばんは。
私もSWITCHは20数年前の学生時代から読んでますが、
確かにタイアップ記事多いですね。
エンタメ誌もスポーツ誌もこんなのばっかりで残念です。
タイアップしないとやっていけないんでしょうかね。
時代の流れか。
学生時代に買ったSWITCHは大切な宝ものなのにな。
投稿: takuji | 2010年11月 7日 (日) 21:23
◆takujiさん
SWITCHが創刊された時の驚きは今でもよく覚えていますよ。サム・シェパードとかトム・ウエイツとか、当時は日本であまりなじみのなかった人をとても丁寧に紹介してましたよね。デザインも海外のマガジンみたいで、日本でもこんな素敵な雑誌が出るようになったのか、と毎号欠かさず買ってました。
なんだか、日本人の旬な人をとりあげるようになってからクオリティがガクンと落ちたような気がしますね(苦笑)。
>エンタメ誌もスポーツ誌もこんなのばっかりで残念です。
ほんとにそう思います。出版業界が苦しいのはよくわかりますが、紙面がどんどん保守化していってますよね。本屋に言ってもマガジンラックで新しい驚きに出会うなんてことはなくなってしまいました…。
投稿: Y.HAGA | 2010年11月 8日 (月) 11:16