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2010年11月 1日 (月)

【映画】 ベンダ・ビリリ~もう一つのキンシャサの奇跡

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この映画は、アフリカのコンゴ民主共和国の首都キンシャサ出身のバンド、スタッフ・ベンダ・ビリリが、1stアルバムをリリースしてヨーロッパで成功するまでを描いたドキュメンタリーだ。いやあ~なんかもう圧倒されてしまった。超強力!なんなんだ、この徹底的に前向きな音楽は。
スタッフ・ベンダ・ビリリみたいな人たちってのは、日本では見て見ぬふりをされてしまう場面が多々ある。なにしろ、彼らはメンバー8人のうち4人が車椅子、1人が松葉杖という身体障害者。おまけに生活は徹底的に貧乏で、メンバーのほとんどはストリートに段ボールを敷いて寝泊まりをしているという有様なのだ。日本で言ったら、小人プロレスみたいなもんか。あれも、子供の頃は屈託なく見て笑ってたってのに、大人たちは見てはいけないものを見たように顔をしかめてたなあ…。
ベンダ・ビリリの音楽は、そんな過酷な境遇にもかかわらず徹底して明るい。いやいや、歌詞はなかなかにヘヴィだし、メロディーラインだって哀愁を帯びたものもあるんだけど、それでも底辺には“何とかなるさ”的ポジティヴさと強力な希望が満ち溢れているように感じるのだ。そして、なんと言ってもヘヴィな日常もぶっ飛ばしてしまうほどの異常なトランス感!
こういうの見ると、ほんと痛感する。かなわねえよ、とても…。

はっきり言って、彼らの奏でる音楽のジャンル自体はオレが日頃好んで聴くようなものではない。自分は“ワールド・ミュージック”と言われる音楽の要素を取り入れたロックを聴くことはあっても、生身のそれを聴くことはほとんどない。でも、そんなちっぽけな嗜好なんてぶっ飛ばしてしまうほどのエネルギーが彼らの音楽にはあるのだ。
オレはこの映画を見ていて、音楽ってこれまで自分が考えていたよりずっとシンプルなものだったのかもしれないと思った。結局、メロやリズムなんて関係ないのだ。大事なことは音楽がどれだけプレイヤーに根付いているか。生活に近いか。そういうことなんじゃないか…。
彼らには、どうしても歌いたくて、伝えたいことがあった。バンドでどっかにぶっ飛びたかった。極悪な生活からぶっ飛ぶためには歌うしかなかった。そりゃあ歌うだろう。必死で歌うだろうさ。そこにこめる情熱たるや、どっかで聴いた音楽を耳コピで真似る僕らとは端から志が違うんだと思う。この音楽の高揚感、溢れんばかりの情熱はそんなバックボーンがあるからこそに違いない。

僕にとって悔しいのは、つい最近彼らが日本を訪れて来日公演を行ったのを知らなかったこと。ああ、もう少し早くこのバンドの存在を知っていたなら…。やっぱり、自分の好きなジャンルばかりじゃなく、360度アンテナを張ってなきゃダメだなあ。日比谷野音で彼らのご機嫌なビートに身を委ねることができていたら、どんなに幸せだったことだろう。
ともあれ、映画からも彼らのエネルギーは十分に受け取った。このところ、ヘヴィな出来事に心沈む日々を送っていたんだけどれど、一発で元気になっちゃったなあ(笑)。こんなの見せられちゃ、落ち込んでなんかいる場合じゃない。“生きてるだけで丸もうけ”なんて気分になっちまったぜ(笑)。

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コメント

ちょうど明日、吉祥寺バウスシアターに見に行こうと思っていました!
今までバウスシアターでの音楽系(?)の映画は、個人的にはずれがないので楽しみです。(先月やっていたイラン映画『ペルシャ猫を誰も知らない』なんかも、ロックファンには絶対お勧めです)

NHKのニュース番組の動画で、ちょっとだけ日比谷などの様子が見られました。
http://cgi2.nhk.or.jp/nw9/recommen2010/index.cgi
これはライヴに“参加”したくなりますね。

こんにちは♪
SFUの中川さんが激押し(笑 していたので、野音のライブ見てきました。
私もワールドミュージックにはほとんど興味なかったので、
楽しめるかちょっと心配だったのですが、そんな心配は全く不要でした
人間の「生きる」という本能を揺さぶる、素晴らしいステージでした。野音が一つの生命体みたいになってた…。
某ロックミュージシャンではないですが、私も涙流しながら踊ってました

ライブの数日後に映画を見に行ったのですが、これも感動。
恵まれ過ぎてる自分の悩みなんて、本当にちっぽけだなぁ…と、まるで富士山登頂を達成し、下界をみおろしたような(したことないけど)気持ちになりました。

またいつか来日してくれるといいですねぇ……
しかし、ロジェはきっと大スターになるのではないかと、ひそかに思っております。

◆フィル・カスルさん
バウス、僕も良く行きます。大好きな映画館です!あそこは音楽系の映画を爆音でやりますし、他の作品も最高のセレクトですよね。NHKのニュース動画は全く知りませんでした。これ、素晴しいですね!ますます日比谷に行けなかったのを後悔しています。

◆naoさん
>私も涙流しながら踊ってました

素晴しい!本当に感動した時って、人間そんな風になるものですよね。
ほんと、近いうちにまた来日してくれないでしょうか…。万難を排して観に行くんですけど。

>ロジェはきっと大スターになるのではないかと、ひそかに思っております。

映画だと、子供だったロジェがたくましい若者に育っていく様も見て取れますよね。彼の背筋のシャンと伸びたしなやかな体躯に意志の強さを感じます。

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