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2010年12月23日 (木)

【映画】酔いがさめたら、うちに帰ろう

Yoi
アルコール依存症っていうのはなかなか難しい病気だと思う。だって、大多数の世間の人は“アル中になるなんて自業自得だ”と思って依存症患者に同情なんかしないでしょ?(苦笑)
この映画は、漫画家・西原理恵子とその旦那の鴨志田譲氏の家族にあった実際の話が元になっている。戦場カメラマンだった鴨志田さんは重度のアルコール依存症に苦しみ、病院に入院して治療に努める。しかし、症状の改善が見られ始めた頃に、末期の膵臓癌が見つかってしまうのだ。彼は病院を出て家族の元に戻るが、闘病かなわず帰らぬ人となった。西原さんは鴨志田さんのDVに耐えられず、いったんは離婚するのだが、別居時も子供と共にずっと鴨ちゃんを見守り、癌発症後は再婚してもう一度家族としての時間を過ごした。

実は、僕はこの映画をアルコール依存症と関わった家族の話だとは受け取りたくない。そりゃあ、医者の立場だったら“アルコール依存症は病気なんだから温かく見守ってあげてくださいね”なんて言うだろう。でも、実際に家族の一人がこんなだったら、周りの苦労は想像を絶すると思う。子供の成長にも影響してくるし、下手したら命の危機にさらされる事件だって起こりかねないだろう。
サイバラさんが壊れてしまった鴨ちゃんを最後まで見捨てなかったのは、鴨ちゃん自身にアル中時のダメっぷりを補って余りあるほどの人間的魅力がもともとあったからではないだろうか。であるならば、これは限りある時間の中を誇り高く生きた家族の再生の物語なんだと理解したい。

主演は浅野忠信と永作博美。もともと大好きな役者さん二人なのだが、この作品でも素晴らしい演技を見せていた。
永作博美、この神々しさはいったい何なのだ!なんだか、彼女は結婚して更にその母性に凄みが増したような気がする。ずっと抑えた演技をしてきた彼女が、夫の最期が近いことを悟って、玉葱を切りながら堰を切ったように涙を流すシーンは、どんなベテラン女優でも出せないような圧倒的な説得力があった。
浅野さんは相変わらずのダメダメっぷりが素敵(笑)。松たか子と共演した「ヴィヨンの妻」での太宰治もダメダメだったが、今回もアレを上回るダメっぷりで満足、満足(笑)。強いていえば、本物のアル中はあんなに健康的な顔色してませんけどね…。ま、浅野さんはリアルでは一滴もお酒を飲まないらしいので、そんなこと言ってもしょうがないんですけど。

それにしても、ダメダメ旦那としっかり女房、今年はじめに観た「今度は愛妻家」もそうだったけど、オレはこういうシチュエーションにほんと弱いなあ(苦笑)。
415gfaydtzl 「酔いがさめたら、うちに帰ろう」。この映画のタイトルは、鴨ちゃんが生前に残した著書名そのままなんだけど、酒呑みの切ない気持ちをこれほど適確に表している言葉はないと思う。
恥を忍んで告白すると、僕だって誰に聴いたって立派なダメ亭主だ(苦笑)。アル中ではないけれど、お酒の失敗だって数知れず。人は嬉しくて酒を飲むだけじゃない。何かから逃げたくて酒を飲むことだって多いのだ。僕だって虚しさを肴にグラスを傾ける夜を幾つもやり過ごしている。そして、ふと我に帰った時、自分には帰るうちがあることを思い出し、その幸せを噛み締めることになる。

話はどんどん脱線する(笑)。今話題の(笑)市川海老蔵が、記者会見で、暴力を振るわれていた時は“とにかく家に帰らなければ…と、それだけを考えていた”って言っていたじゃないですか。酒呑みの直感なんだけど、オレ、あれは本当のことを言っていると思うんですよ。酒を飲んで何かをしでかしてしまった時、酒飲みがまず考えることは“家に帰らなければ…”ですから。
彼が相手に逆襲したかどうかはわかりませんよ。でも“帰りたい”と思った人が自ら渦中に飛び込んで大立ち回りするようなことはないと思うんだよね、普通。確かにあいつはいけ好かない奴ではある(苦笑)。でも、その代償はもう存分に払ったんじゃないのかなあ?うーん、どうもオレは酒呑みの失敗には甘い…(苦笑)。

閉話休題。どういった境遇であれ、人はいずれ死ぬ。だったら、限られた時間でどれだけ楽しい思い出を作れるか、それが重要なのではないか。たとえ、その人の生きた時間の9割が糞ったれであったとしても、残りの1割が光り輝くものであれば、その思い出は残された者の心の中でずっと生き続ける。そう思うと、ダメダメ亭主の僕でも、なんだか救われるものを感じるなあ(笑)。

エンディング、きらきらと輝く波打ち際で戯れる家族のシーンに被さり、突然、忌野清志郎が歌う「誇り高く生きよう」が流れてきた。これ、事前情報を仕入れてなかったので、いきなりの不意打ち。くぅー!やられた!畜生、泣いちまったぜ…。

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コメント

いつも素敵な記事をありがとうございます。
俺も永作さん、大好きです!(笑)
この映画も観てみますね。
来年もよろしくお願いします。
良いお年を。

投稿: LA MOSCA | 2010年12月31日 (金) 22時45分

明けましておめでとうございます。
我が家のトイレにも入れ替わり西原本が置いてあります。
でも鴨ちゃんの話は私は知りませんでしたね。

永作博美さんの西原役はずっぱまりって感じですね。

昨日実家に少し帰宅したのですが、親父も寄って何故家に帰りたがるのか不思議だと話しておりました。やっぱり帰巣本能なのだと思います。
うちのかみさんに「鴨ちゃんの映画観に行く?」って聞いたら、無理との返事。残念。

投稿: | 2011年1月 2日 (日) 04時53分

◆LA MOSCAさん
永作さんは歳を経てますます魅力的になってますよね。
今回の映画での永作、母性が滲み出ててどきっとしました。

投稿: Y.HAGA | 2011年1月12日 (水) 08時18分

◆僧さん
>昨日実家に少し帰宅したのですが、親父も寄って何故家に帰りたがるのか不思議だと話しておりました。

やっぱりみんなそうなんですね。酒飲みの帰巣本能、大いに納得です。
ちょっと酔っ払って羽目を外しすぎた夜なんか、自己嫌悪と後悔に包まれながら愛しい我が家を思い浮かべる…。うーん、これも酒飲みの哀愁かも(笑)。“まったく男は…”なんて女性人の冷ややかな視線を浴びそうですが…(苦笑)。

投稿: Y.HAGA | 2011年1月12日 (水) 08時24分

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» 酔いがさめたら、うちに帰ろう。  監督/東 陽一 [西京極 紫の館]
【出演】  浅野忠信  永作博美 【ストーリー】 戦場カメラマンとして世界中を駆け回ってきた塚原安行は、人気漫画家の園田由紀と結婚し子どもにも恵まれるが、彼のアルコール依存症が原因で離婚。やがてアルコール病棟へ入院した安行は、そこで出...... [続きを読む]

受信: 2010年12月23日 (木) 12時18分

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