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2011年5月25日 (水)

黒い怒り

オレは今怒っている。怒りで震えている。

自分はこれまで、原発事故に関してはなるべくフラットに情報を咀嚼し、根拠のない情報を基にした感情的な書き込みはしないように心掛けてきた。こんな時、政府や東電を批判する立場に立つのはある意味簡単なことだが、自分の書き込みが風評被害に加担するようなことになってはならないと思ったし、今は誰かを批判するより、とにかく原発事故が収束するよう、政府や東電を信じるしかないと思ってきたからだ。
そんな態度は今日で止めだ!もう我慢できない。政府と東電は明らかに情報を隠蔽している。しかも、そんな情報操作で危険にさらされているのは、両親や幼なじみの多く住む、僕の故郷・福島なのだ。

僕がこう思うようになったのは、5月15日(日)の夜に放送されたある番組がきっかけだった。NHKで深夜放送された「ETV特集/ネットワークでつくる放射能汚染地図~福島原発事故から2か月~」。これは、今まで報道されてきた政府や東電の発表を根底から覆す衝撃の内容だった。
番組は放射線衛生学者の木村真三さんが、文部科学省の測定とは別に、独自で福島県内の放射線量を細かく調査する様子を追ったドキュメンタリーだったのだが、僕が何よりも驚いたのは、テレビでよく見る原発からの距離を同心円で示した危険地域、いわゆる「5キロ圏内」「10キロ圏内」「20キロ圏内」「30キロ圏内」から外れた場所でも、ケタ外れに高い汚染度を記録する場所があるという事実だった。

番組の後半、木村さんは僕の生まれ故郷・福島市に入って行った。ある地区に差し掛かった時、ガイガーカウンターの針が引きつったようにピーンと振り切れる。そこは「福島市立渡利中学校」前だった。木村さんが車を降りて正門前で汚染度を測ると、なんと現在のチェルノブイリ原発から3キロ地点と同じレベルという、とんでもなく高い放射線量を記録したのである。チェルノブイリは、今でも30キロ圏内までは立ち入りが禁じられている。まして、原発から3キロ地点なんてとても人が住める場所じゃない。そんな場所に、普通に子供たちが通っていたのだ!

なんでこんなことになっているのか。それは福島市が原発から60キロの地点にある「30キロ圏外」だからだ。
放射能汚染は同じ地域でも地形や風向きで濃度が変わり、政府が言うような同心円状になるわけがないということを、これまでも多くの学者が言ってきた。それが、この番組によって証明されてしまったことになる。放射能が溜まり易い「ホットスポット」が、福島にはまだら状に存在するのだ。もしかしたら、僕の両親が住む町にも…。
だが、政府は今に至っても原発から30キロ圏内だけを避難区域に指定し、そこから離れた地域については何の対策もとっていない。

本当に政府は何も知らないのだろうか?
そうではない。それを証明するようなこんな事実も番組では公表されていた。

3月15日、文部科学省は福島県浪江町赤宇木の汚染度が通常の5500倍だったことを官邸に伝える。しかし、枝野官房長官は「直ちに健康に害のあるレベルではない」と発表し、住民を避難させなかったのである。後に政府は町に計測データを報告するのだが、それは地名が全部伏せられたものであり、浪江町の人たちが本当に知りたい“自分の住まいのある場所での汚染度”が全くわからないものだったというのだ。地名を伏せた理由は“パニックを起こさないため”。

…。何かが間違ってないか?
木村さんの測定結果を聞いて、赤字木の人たちはびっくりして自主非難を決めたというが、この取材がなければ、この人たちは自分達がどれだけ危険な状態にあるかさえ知らなかったのだ。結果として、彼らの安全を守ったのは、国民の命を守るべき政府ではなく、一民間の学者だったことになる。これは本末転倒だろう。僕らの国の政府とは、この程度のものだったのだ。
前述の「福島市立渡利中学校」の先生も生徒も、自分の学校が高濃度に汚染されたホットスポットだとは知らずにいた。そして、悲しいことに彼らは不安な気持ちに苛まれながら今も学校に通っている。それは、政府が学校の校庭の放射線量の上限値を“年間20ミリシーベルト”としているからだ。

僕の書いていることは、どっか遠くの町で起こっていることだとお思いだろうか?
福島は生まれ故郷だから、僕が過剰に反応しているとお思いだろうか?
違う。これは決して遠い町で起こっていることではない。僕のブログを読んでくださってる方の中には、CHABOのファンの方も多いと思う。CHABOが昨年のツアーでライブを行った「風と木」には、首都圏から足を運んだ人も多かったと思う。あのお店があるのが正に渡利地区なのだ。そして「福島市立渡利中学校」は「風と木」のすぐ傍なのである。あの会場に行く時に、誰もがあの校庭を見たはずなのだ。人ごとではない。僕らが忘れがたき夜を過ごしたあの町が、今、放射能という目に見えない悪魔に苦しめられているのだ。

だんだんわかってきた。政府の言う「安全だ」とか「問題ない」は全く根拠がない。文部科学省の出す放射線データも、できるだけ低い数値が出るように操作しているとしか思えない。
今でも首都圏の放射線量は、地上から何メートルも高い空間線量だけを計測して“問題ない”と言っている。だけど、今回の事故は、3月15日前後に大量の放射能が拡散されたことが既にわかっている。あれから2か月以上経った今、大気中の放射性物質はほとんどが地表に落ちていると考えるのが自然だろう。だったら、なぜ首都圏の土壌調査をしない?放射能は1回発生したらそう簡単には無くならない。大気だけ測って値が下がっていると見せかけるのは“詐欺”ではないのか?

なんかもう、ほんとうにわからないことだらけ。何故隠す?なぜ本当のことを教えてくれない?
マスコミだって腰抜けだらけ。煽るだけ煽っておいて、本当に知りたいことは報道してくれていない。たとえば、一昨日の参議院行政監視委員会で小出裕章さんが何を話したかなんて、誰もが知りたいことだろうに、ネット以外ではほとんど目にすることができない。

その委員会で、小出さんは愕然とするようなデータを公表していた。3月15日の台東区(うちの近くだ)での放射線データ…。これを見て僕は心臓が止まるかと思った。
どうやら、台東区周辺はこの一日で一般人に定められた年間放射線の限界を超えてしまったらしい。恐ろしい話だが、あえて冷静に書けば、隣接する文京区の学校に通う僕の子ども達は、この日の経った数時間で、何十年後かにセシウムの内部被曝による癌発症のリスクと、白血病の晩発障害のリスクを同時に抱え込んでしまったことになる。
確実に言えるのは、政府がこの日の正確な放射線データと風向きの情報を公表し、屋外活動の自粛などを勧告していれば、被曝はかなり抑えられただろうということ。
どうしてくれるんだ?菅直人!僕はこの事実を一生恨み続けるぞ…。もし、愛する2人の子どもが病気になるようなことがあれば、オレはもう自分で自分の行動をコントロールできなくなるかもしれない…。

「ETV特集/ネットワークでつくる放射能汚染地図~福島原発事故から2か月~」は、視聴者からかなりの反響があったらしく、28日(土)15時から再々放送があるらしい。興味のある人はぜひ見てほしいと思う。

7月始め、僕は3日間福島に行くことになった。
渡利にも絶対行く。どんなに放射線が強かろうと行く!もう45年も生きてきているのだ。いまさらちょっとぐらい放射能を浴びたって屁でもない。そんなことより、僕は死にかけている故郷の町にもう一度帰り、「風と木」でランチを食べたい。そんなことをして何になるっていう人もいるかもしれないが、僕にとってそれは、放射能から逃げることなんかより、よっぽど大事なことのように思える。

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コメント

ETV特集は本当に優れた番組だったと思います。ディレクターの七沢潔さんはチェルノブイリ関連の本も出されていたと思うんですけど、地震の初期段階に「ただ事ではない」と思ったはずです。

行政監視委員会の小出氏の数値は、最初は1000倍程だったものがそれぞれの放射線物質の分析で約2倍に格上げになったようですね。

4月29日の明治大学での講演では、3月15日の数値は18日の京大ゼミより高い値で発表されていました。

ともかく行政が機能していないという事を強烈に印象付けられましたよ。

◆僧さん
NHKも、ニュースや解説委員のコメントなどにはかなり自主規制がかかったいるのを感じます。その中で、ETV特集はギリギリの線での告発だったんだと思いますね。

以前、僧さんがくださったコメントに、僕は「特定の人物の意見に組するべきではないと考えています」などとレスをしました。
偉そうなことを言ってゴメンなさい。僕、今は小出さんの言ってることぐらいしか信用できなくなっています。冷静に情報を咀嚼しようとしても、東電や政府のリリース自体に信憑性がないんだから話になりません。

毅然として受け止めなければいけないのは、“僕たちは既に被爆をしているんだ”という事実ですよね。であれば、その影響を最小限に食い止めるように個々人が努力しなければならないわけで、そのための客観的なデータを国が国民に示すのは当然のことだと思うのです。

ボクもこの番組、昨日の再放送で見ました。
見た後、わけのわからない怒りに襲われました。
なぜ政府と東電は福島県民の皆さんに必要な情報を提供をしない?
木村さんがやった調査は本来政府がすべきことでは?
何故避難区域を原発からの距離で決める?色んな場所で調査して
結果に基づき避難方法を決めて指示するべきでは?

何度も色んな「なぜ?」が頭の中に渦巻き止りませんでした。
なぜ必要な手間を惜しむのだろう?普通に調査して結果に基づき
必要な対策を取ればイイこと。なぜそれをしないのか?
頑張っても出来ない、失敗したならまだ分かる。でも明らかに
必要なことをしない。しようとしてない。
政府と東電はどうしたいのか?国民と諸外国を欺いて何を
守りたいのか?逃げずにチャンと答えてほしい。

台東区で放射能の数値が高いならボクの住む荒川区でも高いでしょう。
ボクはひばくは別に怖くないけど、こんな政府のために家族が
危険な目に合うのは納得できない。
もし、嫁と猫に何かあったらタダじゃ済ませない。そう思います。

HAGAさん、ごぶさたしてます。ごぶさたはしてますが、いつも携帯から、HAGAさんのこと…CHABOのこと…思いをはせてます。今日は書かないけど、CHABOのたくましい姿を、ココから知ることができます。感謝です。

ETV特集…HAGAさんが教えてくれなければ、知らないままでした。再々放送をチェックしました。政府や、行政も、動いてる人…たくさんいらっしゃると思います。でも、この番組を見ると…なんで、放射能の実態を調査するために、家族や国民を救うために、お役所を辞めなきゃならないのか…政局をにらんで誕生会してる場合じゃないだろ…そんな憤りを覚えます。

番組の最後、基準値をはるかに超えた避難所を離れるため、実家に残してきた犬と猫にエサをやりに帰るシーンがありました。エサをやり終え、走り出す車に、走り追いかける犬のシーン…胸が締め付けられました…鶏舎で命を絶った鶏…生活そのものを破壊された人達…言葉にならないな…

放射能か…中国から飛んでくる黄砂みたいに、色でもついてれば、わかるんだろうけど…見えない分…怖いよね…

ここ、盛岡にいると、放射能のことを考えるより、沿岸部で被災した人達のことを考えてしまいます。地元紙では、リアルな現実…それでも、オブラートに包んであるんだろう現実が、毎日、飛び込んできます。6月も、沿岸部の瓦礫撤去のボランティアに参加してきます。そんなことぐらいしか、できないんだけどね。

いつか、再会をできる日を楽しみに!

◆ながわさん
でしょう?やっぱり怒りたくなるでしょう?
原発事故が起こってから僕は、政府や東電の後手後手の対応に苛々しながらも、必死になって現状を打破するべく頑張ってくれてるだろうと思っていましたし、大方の国民もそう思っていたと思います。そんな気持ちがこの番組で一発でぶっ飛んでしまいました。

政府は何が怖いんでしょう?膨大な賠償金?現実的にあまりにも多い被曝者を何処にも避難させられないから?
現実問題としてとてつもない問題があることはよくわかっています。でも、だからといって事故を小さく見せようとして事実を隠蔽するのは明らかに間違っていますよね。

酷いと思う。この国の民主主義はこの程度のものだったのかと…。
僕は子どもたちに、将来いざと言うことがあれば、国を頼らず外国で暮らしたり仕事をすることも考えなさい。そんな生き方ができるような能力を身に着けなさいと言っています。悲しいことだけど、政府が信用できないならそうするしかありませんからね…。

◆RE2Oさん
おお、お久しぶりです!僕も、被災地の映像を見ながら、時々RE2Oさんはどうしているだろう…って思ったりしていますよ。

なんかもう、最近の政治家の言動には心底あきれ果てました。この期に及んで足の引っ張り合いやら内部抗争やらやってる場合じゃないでしょうに…。現場で頑張ってて、結果的には正しい処置をした福島第一原発吉田所長を、報告があったか無かったかで一時は責任取らせることまで話し合われたっていうのを聞いて、“何処まで馬鹿なんだ、あんたらは!”って怒鳴りたくなりましたよ、オレ(苦笑)。

被災地においては家族同然に暮らしてきた家畜やペットとの別れも辛いでしょうね…。避難所にはペットを持ち込めないだろうし、今回の震災は動物達にも大きな不幸だったと思います。
それから、今は人間の暮らしそのものが大変だから、なかなかそっちまで気が廻らないけど、今回の震災は自然破壊の意味でも大変だと思うんですよね。渡り鳥の重要な中継点だった宮城の蒲生干潟なんて、ほぼ壊滅状態で、再生不能だっていうんです。尾瀬も、あの土地は7割が東電の持ち物でその整備には東電のお金が出てたんですよね。今後そういうのはどうなっちゃうんでしょうか…。

“国敗れて山河あり”なんて言葉がありますが、これじゃまるで“国が敗れて山河もない”って有様ですよね…。

前回の書き込みから、ご無沙汰しております。

3GのLIVE、行かれていたんですね。
(あの会場のどこかでお会いしていたかもしれませんね)

明日から3日間、再び故郷福島へ行ってきます。

福島のためにできること、
わずかなことかもしれませんが、いろいろやってきたいと思います。

前回の書き込みから、ご無沙汰しております。

◆MAKIさん
今頃は福島かな…。
僕はなかなか地元に帰れませんが、寄付や物資を送ることなど、僕なりの方法で地道に故郷の役に立てることをやっていきたいと思います。きっとこれは長期戦になるでしょう。細く長く支援していきたいものですね。

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