麗と蘭 <祝!結成20周年! アコースティカルライブ「THANK YOU Everybody」> / 2011年6月1日(水)南青山MANDARA
麗と蘭 <祝!結成20周年! アコースティカルライブ「THANK YOU Everybody」>
2011年6月1日(水)南青山MANDARA
開場18:00 開演19:00 \6,700
久々の麗蘭ライブ。これは当初4月に行われる予定だったのだが、3.11東日本大震災の影響でこの日に延期になったもの。日程がずれたために来られなかった人たちがけっこういたようで、チケットがソールドアウトだったにもかかわらず、いつものMANDARAより客席はかなり余裕があった。もしかしたら、僕が行ったCHABO関連のライブでこんなにゆったりライブを観るのは初めてかもしれないぞ(苦笑)。でも、それで盛り上がりが欠けるなんてことはもちろん全然なく、麗と蘭久々の揃い踏みに、客席からは曲が終わるたびに歓声があがっていた。
個人的には、昨年暮れの麗蘭のツアーは一度も観られなかったので、昨夏に吉祥寺で行われたイベント以来の麗蘭ライブってことになる。いや、待て。これは正確には“麗と蘭”だから、2008年の横浜まで遡らなければいけないのか…。麗と蘭、なんと3年ぶり!うーん、そう考えると、ほんと人生って早いや…(苦笑)。
でも、もっと驚いてしまうのは麗蘭が今年結成20周年を迎えるってこと。20年!そんなになるのか…。一夜限りだと思われたこのユニットも、気が付いたらRCサクセション、ストリート・スライダーズの活動時期よりも長くなってしまった。確かに今の麗蘭には、初期のライブのようなどう転がっていくかわからないような刹那感はなくなってきているかもしれない。でも21世紀の麗蘭には、それ以上に音楽を愛して止まない、人を慈しむような温かさがにじみ出ている。
この日、意外だったのは登場する時のSEで、おなじみの“波路はるかに”の前に“麗蘭のテーマ”が流れたことだ。MANDARAの瀟洒な店内にマンドリンの哀愁を帯びた音色が流れると、目の前にモノトーンの京都の街角の映像が浮かぶ錯覚にとらわれてしまう。きっと、僕意外にもそんな気持ちになった人が多かったんじゃないかなあ…。これは、麗蘭初のビデオ作品「Welcome Home!!」のオープニングに流れていた曲だからね。このビデオに強い思い入れを持つファンは今でも多いし、その中でも、このモノトーン映像は、とりわけ強い印象を残しているからだ。
きっと2人はネラっていたと思う。この日のライブは序盤で初期の曲が多く演奏されたのだが、初っ端で“麗蘭のテーマ”が流れたおかげで、自然と観客の耳も初期モードになったような気がするのだ。「ミッドナイト・ブギ」、「待ちわびるサンセット」、「顔」、「シャスターデイジィー」…。うーん、やっぱイイわぁ~1stアルバムの頃の曲は…。
公平の12弦アコースティックギターを久々に聴けたのも嬉しかった。「待ちわびるサンセット」のイントロ、公平のザクッとした12弦のカッティングにCHABOの綺麗なアコギが絡む瞬間がたまらない。この音色…。やっぱり大好きだ!この日は「シャスターデイジィー」も演奏され、サイケデリックな香り漂う初期麗蘭の魅力が近年になく引き出されていたと感じた。
この日、初期の曲が近年になく“麗蘭っぽい”と感じたのは、もしかするとこのライブが“麗蘭”ではなく“麗と蘭”だったことも大きかったのかもしれない。ドラム、ベースが入ったロックモード全開の麗蘭ももちろん魅力的だが、アコギ2本だと音数が少ないから、結果的に2人はより音色やフレーズに凝ったプレイを展開するようになっていると思う。それが初期の麗蘭に顕著だった、バンドと言うよりも2人の異質な(でもないけど)ギタリストの絡み合いというシチュエーションに近くなっているのかもしれないと思うのだ。
そういえば、2000年代初頭の麗蘭では、CHABOがあまりギターを持ち替えず、エレキを弾く時以外は大部分をチェット・アトキンス・モデルで通していたことがあったっけ。アコギでもエレキでもない、エレアコサウンドの追求と言う意味で、それはそれとして理解はしていたけど、正直言うとちょっと物足りないと思う時もないわけではなかったんだよね、自分は。“麗と蘭”を通過してからのCHABOは、頻繁にギターを変え、より音色にこだわったサウンドを聴かせるようになったと思う。
こんなことをCHABOが聞いたら、きっと怒るだろうけど(苦笑)、これは、2008年に使用楽器を盗まれるという不幸な事件に見舞われたことで、結果的にチェット・アトキンス以外のギターを使わざるを得なくなった副産物だと思うんだよね。あの事件が結果的にCHABOのギターの可能性をより切り拓いた…。“災い転じて福となす”じゃないけどね(苦笑)。
ただ、序盤こそ1stアルバムの曲がいくつか演奏されはしたが、中盤以降は2000年以降のアルバムからの選曲が多くなり、全体としてはバンドの20年がとてもバランスよく選曲されたライブだった。
ブルース・フィーリングたっぷりの「運」や「Blue Blue」。ロックスピリッツ溢れる「SOSが鳴ってる」や「あこがれのSouthern Man」。アコギの美しいインスト「EDEN」。このバンドの幅広い音楽性を示す(注・CHABOのMCそのままです(笑))ボサノバの「おいしい水」…。2時間半の時間でいろんなタイプの楽曲が演奏され、全く観客を飽きさせない。4時近く演奏してた時期もあった麗蘭だけど、個人的にはこのぐらいにぎゅっと凝縮したセットの方が良いように思うなあ。
そして、何よりも強調しておきたいのは、2011年6月現在の“麗と蘭”は、温かさにあふれていたということだ。この温かさと慈しみ、それこそが今この時に“麗と蘭”が伝えたいことなのではないか。
最近のライブレポを書くといつもこんなことばっかり書いてしまうが、3.11を通過した今、やっぱり演る方も観る方も、自分たちの現在地を確認するような音楽への接し方になってしまうのはしょうがないと思うのだ。
3.11を超え、麗蘭はより強く音楽に回帰した。救いの神、それはミュージック…。麗蘭が20年通して掲げてきたメッセージは、より色濃く、より優しく僕らの耳に届くようになった。それは、20年前の麗蘭と比べ、少しだけ優しくもっと大きくなったように思う。人はそれを“円熟”というんだろう…。
ぐっとテンポを落とし、より雄大に、よりドラマチックに、より噛み締めるように演奏された「Get Back」を聴いて、僕はそんなことを思った。
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