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2011年7月18日 (月)

ソウル・フラワー・アコースティック・パルチザン『街道筋の着地しないブルース』発売記念地方巡業 / 2011年7月18日(月・祝)渋谷CHELSEA HOTEL

中川敬 アコースティック・ソロ・アルバム 『街道筋の着地しないブルース』発売記念地方巡業 ~アコースティック編~
ソウル・フラワー・アコースティック・パルチザン(中川敬・リクオ・高木克)
◆2011年7月18日(月・祝)渋谷CHELSEA HOTEL
 開場18:00 開演19:00

この日のライブは、渋谷にあるチェルシー・ホテルというライブハウスで行われた。僕にとっては初めての会場だったんだけど、入ろうと思ったとたん、ぎょっとしてしまった。それは入り口のカウンターの上に、鹿の頭の剥製が飾ってあって、入ってくる客をぬぼーっと見下ろしていたからだ。個人的な話なんだけど、僕は動物の剥製、それもこういうケモノを首チョンパしたようなやつが大の苦手。だって、こういうのって絶対そいつが生きてる時の“気”が入ってると思うぞ。目なんか会わせようものなら、何かを訴えかけられているようで、もう気になって気になって…。断言するけど、こんなものを自分の手で作った人間は、絶対ちゃんと成仏できないと思う(苦笑)。
おまけにこのチェルシー・ホテル、内装も仰々しくて、まあ寂れたホテルみたいというか、中世のお城みたいというか、お化け屋敷そのものというか…(苦笑)。おい、中川!なんでこんな場所でライブやるんだよ。悪趣味だぞっ!正直言って、ライブ前からテンション下がりまくりだった(苦笑)。

ところが、いざライブが始まったらそんな気持ちはきれいに吹き飛んでしまったんだなあ…。特に、この日の中盤、彼らが被災地で演奏してきたという民謡や昭和歌謡が始まったあたりでは、バンドのサウンドに会場の場末なムード(笑)がぴたりとハマり、まるでひなびた猟師町のキャバレーで、地元のハコバンのライブを観ているような感じだった。むーん、中川、もしかしてこれがネライだったのか…(笑)。

この日のアコパルのライブは、中川敬のソロアルバム発売に合わせたツアーの最終日ではあったが、それ以上に被災地でのライブを何度か行って、その空気をそのまま東京に持って帰ってきた凱旋公演という色合いが濃かったと僕は感じた。彼らが被災地で演奏したという民謡や昭和の歌謡曲は、僕にとってはSFUやリクオのオリジナルよりも強く印象に残ったぐらいだ。
東北人なら誰でも知ってる(僕なんか音楽の時間にうたった記憶がある)「斎太郎節」や「おいらの舟は300トン」は、如何にもこのユニットの演奏らしくて楽しかった。これらは被災地でも大ウケだったというが、そりゃそうだろうよ。ロン毛のロックロックした兄ちゃんが、三味線片手に“松島の~♪”と唸られた日にゃ、じいちゃんばあちゃん、大喜びに違いない。
中川のボーカルが、また民謡によく合うんだよなあ…。いやあ~たいした歌手です、この人。決して上手くはないかもしれないけれど、尾藤イサオの系譜を引き継ぐ正統派昭和無頼歌謡(そんなジャンルあるのか?)のNo.1ボーカリストじゃないだろうか?
中川と比べると、リクオはちょっと洗練された感じなんだけど、やっぱり昭和歌謡の匂いはたっぷりだ。「夜霧よ今夜もありがとう」は、ウィスキーの水割りの匂いが漂ってくるようだった。やっぱり、昭和40年代生まれというバックボーンは大きい。このあたりは僕もそういう背景を持ってるからよくわかる。なんのかんの言っても、昭和歌謡のカッコつけたやさぐれ感は、今でも憧れ。隠そうにも隠しようがないのだ、こういうのは(笑)。

そして、極めつけはなんと言っても「アンパンマンのマーチ」!これは、避難所で暮らす子どもに向け、中川がセレクトした曲だったらしいが、素晴らしかった。もう、これは是非シングルカットして欲しい!(笑)実際、避難所で演奏する前に、中川の子ども4歳と近所の子どもを集めて公開リハ(笑)をやったらしいが、その時点から大ウケだったそうな。僕も男の子の父親だから、もちろんこの歌は知っていたんだけれど、歌詞を真剣に聴いたのはこれが初めて。じっくり聴くとほんとに良い歌詞なんだ、これ!なんつったって“愛と勇気だけが友だち”なんだからなあ、アンパンマンは!子どものいない若いファンはどう思ったか知らないが、僕はなんだか涙が出そうになってしまった。

そういえば、うちの下の子は、原発事故がどうしようもない状況になりつつあるのをニュースで見たとき、“なんでこういう時にウルトラマンが来ないの?!”って言ったんだよなあ…。上の子は、放射能で汚染された牛肉が出回ったと聞いた時、“バイオなんとか(の技術)で、大丈夫な肉、じゃんじゃん作っちゃえばいいじゃん!”って言ったんだよなあ…。
子どもの無邪気なひと言って、大人がはっとさせられることがいっぱいある。オレ、思ったもん。原発は怪獣みたいなもんだったんだなって…。僕らは、科学だなんだって言いながら、そんな怪獣をやっつけることのできる技術なんて、最初から持ち合わせていなかったのだ。
でも、きっと僕らはやり直せるだろう。被災地でこの歌を聴いて“痙攣したように跳ね回っていた(中川談)”子どもたちは、きっと大きくなったらアンパンマンのように愛と勇気を持って、ふるさとの復興に力を尽くすに違いない。もしかしたら、その中からは最終処理が決まらない放射性廃棄物を駆除できる技術を発明しちゃう未来の科学者だって生れるかもしれないじゃないか!
被災地で「アンパンマンのマーチ」を聴いて笑顔を見せる子ども達の姿には、きっと大人たちも励まされたことだろうこういうことが明日への活力へと繋がるのだと思う。こういうことが歌の力なんだと思う。

もちろん、彼らのオリジナルだって素晴らしかった。「海へゆく」や「寝顔を見せて」、それに「荒れ地にて」なんかは、歌詞が復興へむけて立ち上がる人々の姿に重なって感動してしまった。
高木克っちゃんも存在感ばっちり。今回は、特にスライドギターに格段の冴えを見せ、中川の野太い歌声やリクオの力強いピアノに一層鮮やかな彩を加えていた。インストの「叩いて 擦って よろめいて」のペダルスチールも素晴らしかったなあ…。

リクオは特に新曲が素晴らしかった。“テレビもない、お金もない、ユニクロもない…。自由はある。何して遊ぼう…。”とうたわれる歌(ごめん、タイトル忘れちゃった…)は、大きな悲しみを経験した僕らの心の深いところに、すとんと降りてくる。それから、この日僕がはじめて聴いた曲、震災直後に彼がブログで告白していた“震災直後に歌を忘れていた”状況から、やっぱり音楽しかないと歌い出すまでの心の動きを綴った歌があったのだが、これがかなりぐっときた。ずばり、名曲!。これはこれまでのリクオのレパートリーの中でも、とても大きなものになりそうな予感がする。

きっと、3人は言葉にできないようなヘビーな状況も目の当たりにして来たに違いないだろう。でも、そんな話はいっさいせず、どこまでも前向きになれるような音楽を奏でていたのが素晴らしかったと僕は思う。「満月の夕」ですら、その響きはどこまでも力強かったし、アンコールでリクオの唄った「イマジン」は、忌野清志郎の日本語詞をベースにしながら、更にリクオ流の解釈が加えられて、3.11以降の世界に向けた明確なメッセージを投げかけていたと僕は思った。

2時間40分。目の前の日々はヘビーでも、決してあきらめず、笑いと歌を忘れずに少しずつ前に進もう…。そう思わされた温かいライブだった。
みんながひとつになったり、日本中が頑張っちゃったりするのは、テレビが言うほど簡単なことではないと思う。それでもきっと大丈夫。だって、夢を見ているのは、きっと僕一人じゃないんだから…。

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コメント

お久しぶりです!

“テレビもない、お金もない、ユニクロもない…。自由はある。何して遊ぼう…。”とうたわれる歌・・・

初期のアルバム「時代を変えたい」の中の「すてきなバカンス」ですか?
生で聴いてみたいです!

投稿: | 2011年7月24日 (日) 17時51分

>初期のアルバム「時代を変えたい」の中の「すてきなバカンス」ですか?

そうか!僕、新曲だと思い込んでましたが「すてきなバカンス」でした。初期のアルバムをあまり聞いてないのがバレバレ…(苦笑)。
3.11以降、それ以前に書かれた歌でも、より切迫感を持った歌として強く心を揺さぶってくるような体験をしばしばしています。本当に力を持った歌ってのはそういうものなのでしょうし、歌にこめる本当に大切なメッセージってのは、意外に時代性なんかは関係ないのかも知れませんね。

投稿: Y.HAGA | 2011年7月26日 (火) 13時29分

前のコメントの名前書き忘れてました・・・
改めましてお久しぶりです!
HAGAさんが言う様に本当に大切なメッセージに時代性は関係無いんでしょうね。
でもそのメッセージを「ユニクロもない・・・」なんていう時代性を感じさせる言葉を使って伝えるのが音楽の面白いところなんですかね!

投稿: 美海工房ターツー | 2011年7月27日 (水) 07時10分

◆美海工房ターツーさん
あ、前のコメントはターツーさんでしたか!お久しぶりです(笑)

>本当に大切なメッセージに時代性は関係無いんでしょうね。

それと同時に、リクオさん自身の芯も昔から“ブレてない”ってことなんじゃないでしょうか。この前、浜田省吾のライブに行った時も感じたんですけど、シンプルなメッセージをきちんと伝える歌って、こんな時だからこそ強く響く力があるんですよね。そんな歌を生み出すには、作り手のブレない誠実さが何よりも必要なんじゃないでしょうか?
今年の海さくらでは、また新しいリクオの曲が聴けるんじゃないかなあ?僕はそれを楽しみにしています。

投稿: Y.HAGA | 2011年7月28日 (木) 09時55分

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