【映画】レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー
オレ、この映画、これまでいったい何回観てるんだろう…。
「レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー」は、ローリング・ストーンズが81年に行った全米ツアーのライブを収録した映画だ。日本では83年に全国の映画館で公開され、当時はストーンズのライブを日本で見るのは夢のまた夢と言われていたこともあって、連日多くのロックファンが劇場に駆けつけた。
僕がこの映画の映像をはじめて観たのは、小林克也がVJをやっていた音楽番組だった。そこである週にストーンズが特集され、現地取材の様子とともに、映画のダイジェスト映像が流れたのである。ボロボロのTシャツを身にまとったキース・リチャーズが、咥え煙草で「ダイスをころがせ」のイントロを弾くシーンは、僕のその後の人生を変えた(笑)。わずか5秒ぐらいのカットなんだけど、そこにはロックンロール・バンドのカッコよさの全てが凝縮されていた。
高校生だった僕は、ビデオに録ったこの映像を何度も何度も見返した。そして、このわずかな映像から、実際のストーンズのライブがどんななのかを想像したもんだった。
地元の映画館で、実際に映画本編を見たのは、そのだいぶ後。躍動するストーンズは、僕の想像を遥かに上回るカッコよさだった。感激したなあ…。
東京に出てきてからは、映画が深夜放送で放映されたのをVHSテープに録画し、ノイズだらけになるまで見倒した。今では媒体がDVDになったけど、相変わらず年に何度かは必ず観たくなる。
そんな映画が、28年ぶりに劇場公開されることになった。久々にデカイ画面とデカイ音で、大好きな映像が見られるのだ。これは行くしかないだろう!
僕は新宿武蔵野館で映画を観た。結論から言うと、画面がデカくなったからといって、特別新しい発見があったわけではなかったし、映画館で聴く音も、思ったほど良かったわけではなかった。やっぱり当時の機材では、これが限界なんだろう。
それより、僕は映画の細部をいちいち憶えている自分自身に笑ってしまった(苦笑)。ミック・ジャガーが「レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー」を歌ってる時、一瞬白目をむきそうになるところとか(笑)、「リトルT&A」を唄う時、キースがギターを弾く腕を後ろに跳ね上げる時の肘の角度とか、どうでもいいような細かいところまで、ほんとによく憶えていたのだ。きっと、少年時代からあまりに何回も観ているので、脳内再生できるぐらいに映像が焼き付いちゃっているのだと思う。
だけど、それでも飽きないんだ、この映画…。展開がわかっていても、オープニングのとてつもないカッコよさにはドキドキしてしまうし、ジミヘンの「星条旗よ永遠なれ」が鳴り響く中、派手に花火が打ちあがるエンディングでは、本当にストーンズのライブを観た後のような満足感が押し寄せてくる。
改めて思う。誰がなんと言おうと、「レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー」は最高によくできた音楽映画なのだ。ローリング・ストーンズ自身も最高に油の乗っていた時代。つまり、この映画は最高の素材が最高の状態の時に、最高の機材とスタッフを使って撮った映画なのだ。悪いわけないじゃないか(笑)!
映画の公開から約10年後、ローリング・ストーンズは遂に日本の地を踏んだ。東京ドームで10日間行われたライブには、僕も3回足を運んだ。
ただ、夢にまで見たストーンズのライブに大興奮したのは確かなんだけど、「レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー」での若いストーンズが身体に沁み込んでいた僕にとっては、90年代のストーンズは風貌もサウンドも変に小奇麗になっちゃって、洗練されすぎたようにも感じたんだよなあ…。
その後、ストーンズは徐々に往年のルーズさを取り戻し、今もカッコ良さをキープしている。だけど、やっぱりバンドとしてのピークは、この映画に収められた81年頃までだったのではないだろうか?21世紀のストーンズも良いのだけれど、バンドとしては90年以降別モノになってしまったような感覚が僕にはある。
「レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー」は、世界最高のロックンロール・バンド、ローリング・ストーンズが最も輝いていた瞬間を記録した、奇跡のような1時間半なのである。21世紀の子どもたちが、これを見てその後の人生が変わったとしたって、僕は全然不思議だとは思わない。
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ごぶさたしてます。
私も以前、81年のライヴが聞きたくて、ブートを買いに行きました。
新しいヤツが何アイテムか出てて、曲目と、ライン録音にひかれて
1つ選んで買ったのですが、これがいびつな音像で(笑)。
手放そうかと思ったのですが、いびつさを我慢して聞くと、良いんですよ、演奏が。
普段なら、個人的には飛ばしがちな「ミス・ユー」も、ホーンが良いのでつい聞いてしまいます。
私も、この映画の音をCDRに録音して聞こうかな、と思ってます。
投稿: アラン・ボブ | 2011年7月22日 (金) 20:48
確かHAGAさんとは同い年だったと思うけど、俺ら世代にとってこの映画はあまりにもデカいですよね。
俺もいろんなシーンの細かい、どうでもいいトコを鮮明に憶えてます(笑)
投稿: LA MOSCA | 2011年7月22日 (金) 22:19
当時高校生の私もノックアウトされました。
確かこの頃ストーンズ来日の噂があったような気もしますね。
笑ったのが「オールナイトフジ」で夜中の2時ぐらいにこの映画から1曲テレビで放映されてたんですよね。
で、銀座で鳥越マリ司会で「試写会」も行ったりしました。
そこで繰り広げられたパフォーマンスはぶっ飛びましたね。
映画は新宿ピカデリーが一番デカイという情報だったので、オールナイトの日に新宿で夕方から明け方まで、ずっと楽しみました。
みんな酒飲んでもうコンサート状態だったのを覚えてます。
自分はチャーリー・ワッツの躍動感抜群のドラミングがともかく最高でしたね。メンバー紹介でキース・リチャーズにこづかれたりして、にやっと笑うシーンとか、後スチュの側からのシーンでスチュがブギウギピアノをかっこよく弾きまくってるでしょう。アレが好きだったです。横にイアン・マクレガンも居るしメンバー的には一番好きだなぁ。ともかく私にとって心の中に深く染み渡ってる映画です。
投稿: 僧 | 2011年7月22日 (金) 22:45
高校生の頃、友達と映画館で観ました
動くストーンズ
まだ、入れ替えなどがなかった時代
終演まで延々と観てた思い出があります
A列車での開演前のワクワク感
タバコに火を点けるビル
キースの捨てたタバコを拾うロニーなどなど
なんてったって。この頃のバンマスはキースです!
HAGAさんとでしたら、一晩中語り合えそうです(笑)
投稿: ひであき | 2011年7月23日 (土) 00:06
◆アラン・ボブさん
僕は81年のブート、2枚持ってます。ビニギャンから出てた「Satisfaction Garanted」ってやつと、TSPの「Hampton '81」。2つともだいぶ前に買ったもので今出回ってるのかどうか知りませんが、2つともいいブートですよ。幾つかオフィシャルな音源とカブる曲もあったりして、音も演奏も最高だと思ってます。
おっしゃるとおり、この時期は演奏、いいんですよねえ…。「レット・イット・ブリード」なんか、間奏をむちゃくちゃ引っ張るじゃないですか。あのルーズ加減、最高に好きです!でっかいスタジアムで、夏の日差しに打たれてビールを飲みながらあの演奏を聴いたりできたら、もう死んでもいいとすら思います(笑)。
投稿: Y.HAGA | 2011年7月23日 (土) 11:25
◆LA MOSCAさん
>俺ら世代にとってこの映画はあまりにもデカいですよね。
デカい、デカい!一バンドがスタジアムに満杯のお客さんを集めて、がーっとやる!ロックってカッコええなあ~!それが高校生だった僕の素直な感想でした。
穴蔵のようなライブハウスでやるロックもいいですけど、こういうでっかい会場でやるロックの爽快さは最高ですよね!
投稿: Y.HAGA | 2011年7月23日 (土) 11:25
◆僧さん
>自分はチャーリー・ワッツの躍動感抜群のドラミングがともかく最高でしたね。
そうですね。メンバー紹介でキースがこづくシーンは僕も大好きです!あの後、くわえ煙草のキースがなんともいい顔で笑うんですよね。
スチュも「Let's Spend The Night Together」とか、むちゃくちゃ弾きまくってるのにびっくりした記憶があります。「Little T&A」だって!ライブ盤のStill Lifeだと、あんまりピアノの音、聴こえないですよね。実際のライブ会場ではどうだったのか気になります。
僕ねえ、HAMPTONの演奏も好きなんですよ。全米のケーブルテレビで放映された映像がブートで出回りましたが、もっと綺麗な映像にしてオフィシャルで出してもらえないものでしょうか…。
投稿: Y.HAGA | 2011年7月23日 (土) 11:26
◆ひであきさん
>タバコに火を点けるビル
>キースの捨てたタバコを拾うロニーなどなど
はいはい、いいシーンですよね!ビル・ワイマンはなかなか火が点かなくて、演奏始まっちゃっうじゃないですか。“おいおい、大丈夫か~!”って思ってると、何事もなかったようにす~っと弾きだす。あれがたまりません(笑)。キースとロニーの絡みは、もう兄弟のようですよね。この頃のステージは、ミックとキースの間にちょっと緊張感が走ってて、それもなかなかスリルがあります。
いやあ~、やっぱりこの映画、みんな心に残ってるんですね。これだけ素早く皆さんからレスをいただけてびっくりしました。
投稿: Y.HAGA | 2011年7月23日 (土) 11:26
そうだよね~
あの頃が現役最強ロックバンドとしての最後の勇姿じゃないでしょうか。今は完全に生きる伝説と化して全てを超越しちゃってる感じだけど、まだ40手前だったのに若手からはジジイ扱いされブタだのゴミだの言われつつ、最新アルバムからも半分くらいやってたはず。
だからこそ、あのタイミングで「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」を、あのテンポでやられた日にゃ、上の世代が羨ましかったと
・・・
まあ、そんな私も今では現役とは言えない状態ですが、いちばん最近買ったCDはソウル・フラワー・ユニオンの「死ぬまで生きろ!」です。あっ違ったブロンディだ(いまいち?)
投稿: よこしま | 2011年7月25日 (月) 00:42
◆よこしまさん
>まだ40手前だったのに若手からはジジイ扱いされブタだのゴミだの言われつつ、最新アルバムからも半分くらいやってたはず。
そうそう。小林克也の番組でのストーンズ特集でも、“ストーンズのライブには行く?”って質問されたヘアカット100のニック・ヘイワードが、“うちの親が行くよ”って行ってたのを憶えてます。
でも、いまやニック・ヘイワードなんて名前、全然聞かなくなっちゃいましたからねえ…。かたや、ストーンズは今だ現役。うーん、バケモノです、やっぱ(笑)。
投稿: Y.HAGA | 2011年7月26日 (火) 13:36