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2011年8月21日 (日)

ソウル・フラワー・モノノケ・サミット『もののけ盆ダンスツアー2011~おいらの船は300トン』ゲスト:遠藤ミチロウ、上間綾乃 / 2011年8月21日(日)<東京>Zher the Zoo YOYOGI

今回の盆ダンスツアーは、僕がこれまで体験してきたモノノケ・サミットのライブの中でも、一番印象に残るものだったかもしれない。春から被災地での演奏を数多く行ってきた中川と、出身地が原発事故に直面してしまった遠藤ミチロウの組み合わせ。これは考えようによっては、かなりヘヴィなものになりそうな気もする。だが、僕はきっとそんな風にはならないと確信していた。きっと中川は、ソウル・フラワーらしい前向きな明るさに満ちた空間を作ってくれるだろう。そう思っていたし、事実そういう夜になった。
もしかしたら、震災後に足を運んだライブで、これほど心から笑い、楽しめたのはこれが最初かもしれない。そしてそれは、ライブの楽しさが原発事故のことを一時忘れさせてくれたという意味ではないのだ。ミチロウは原発事故で苦しむ地元の事を淡々と語っていたし、中川も被災地での様子を語りかけた。震災のことや原発事故のことは、ライブ中も一時も頭から離れなかったのだ。にもかかわらず、腹の底から笑い、声を上げて歌えるライブだったのだ。これってけっこうすごいことだと思わないか?亡くなった人を偲び、直面しているヘヴィな状況も乗り越えるために、今、笑い、歌う。オレ、思った。“盆ダンス”いわゆる日本の盆踊りっていうのも、そもそもはこういうものだったのではなかったかと。

オープニングは上間綾乃。この娘は昨年もモノノケ・ツアーに参加していたのだけれど、いかにも沖縄の女子らしい美貌とパンチのある歌声がgood!数曲島唄を歌っただけだったけど、モノノケのオープニングには最高にいい感じ。なんと言っても、おぢさんとしては、こんな若くて可愛い子が最初に出てくるだけでスイッチが入ってしまう(笑)。

しばしの間を置き、遠藤ミチロウが登場。実は、僕はミチロウのライブをモノノケと同じぐらい楽しみにしていた。ミチロウを観るのは、数年前に上野水上音楽堂で行われたイベント以来なのだが、何しろ、今夜は3.11以降はじめて見るミチロウだ。
歳は15も離れているが、僕とミチロウは同郷だ。僕は福島県福島市生まれ。ミチロウはその隣町、二本松の出身。僕の故郷もミチロウの故郷も、今回の原発事故でめちゃめちゃになってしまった。あれから5ヶ月も経つというのに、いまだに福島の人々は放射能に苦しめられている。
ミチロウをずっと見続けている人によれば、震災後のミチロウの発言・行動は、それ以前とは大きく変わったという。このライブの5日前にも、ミチロウは福島市で「プロジェクトFUKUSHIMA!」というイベントを主催し、犬猿の仲といわれていた坂本龍一をも呼び寄せた。
誤解されることを承知で言うと、僕は今回の原発事故に関して自分が抱えこんでしまった痛みは、同じ出所の人間にしかわかりあえないものなのかもしれないと思う。もっと言うと、この痛みは今福島にいる人たちの痛みともまた違う。もしかしたら、ミチロウの感じている痛み、悲しみ、怒りこそ、今の僕が共鳴できるものなのではないかという予感があったのだ。

そのミチロウ、還暦を迎えたとはとても思えない引き締まった肉体にまずは驚かされる。そして、まるで鶏の首を締め上げるようなバキュームヴォイス!まるで自分の喉に剃刀の歯を立てるような叫びに心臓を鷲づかみにされた。
ライブは「お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました」からスタート。生々しく、粗野なコトバが石つぶてのように放たれる。この瞬間から、もう僕の耳は目は、そして脳みそはミチロウに釘付けになってしまった。
たった一人でアコギを抱え、全身黒の衣装で毒々しい言葉が散りばめられた歌を次々に歌ってゆくミチロウ。しかし、歌の合間に語られるMCはとても丁寧で、胸が痛くなるぐらいに清々しい。これは、彼の口調から懐かしい東北訛りが聞き取れることも関係していたのかもしれない。
「プロジェクトFUKUSHIMA!」のために福島に帰った時、実家に寄って放射線量を測ったら、毎時3mシーベルト/hだったこと。昔懐かしい場所に行っても、表面上は何も変わっていないのに、測ってみると高い放射線が検出されてしまうことなどが訥々と語られたのだが、とりわけ僕は“自分は田舎が嫌で飛び出したのだが、こんな事故があってからは故郷のことを思わずにはいられない”という言葉が胸に刺さった。僕も、若い頃は田舎が嫌で嫌で仕方がなかった。そして、町を出て東京で生活の基盤を築いた結末がこの原発事故だ。あの日以来、地元に危険なリスクを担わせてまで、のうのうと暮らしていた自分が酷く汚れた存在に思えてしまう。そういった意味では、“一人ひとりの脳みその中に原発があるんだと思います”というMCの後で歌われた「原発ブルース」は強烈だった。
ライブが進むうち、以前はあまり理解できなかった遠藤ミチロウの歌世界は、実は故郷や親の世代、既成のものに対する愛憎半ばする複雑な気持ちを歌ったものだということにも気が付いた。もしかしたら僕の解釈は間違っているのかもしれないが、少なくとも僕をはじめとする地方出身者の心の奥に潜む複雑な気持ちを、これほど“きちんと”歌っている人を、僕ははじめて見たような気がする。わずか30分程度のステージだったが、遠藤ミチロウのライブは、僕に強烈な印象を残した。

インターナルの後、いよいよモノノケ・サミットの登場だ。「寅さんのテーマ」が会場いっぱいに流れる中、メンバーがステージに登場してくると、一気に華やいだ感じになった。モノノケ・サミットはメンバーが多くてそれぞれがバラエティにとんだ格好で楽器を持っているから、出てくるだけでステージがカラフルになるのがいい。
今回のセットリストは、中川がアコパルで被災地を回った経験が色濃く反映されており、東北の民謡が多かったのが特徴。これは福島生まれの僕にとって、とても親しみを感じた。東北とは言っても「斎太郎節」や「ドンパン節」は、地元の民謡ではない。だけど、やっぱり土台に流れる血はみちのくのリズム。これはいくら都会派を気取っても(別に気取っちゃいませんが(笑))、隠しようがない。ステージの演奏にあわせて手もみで拍子をとると、身も心も軽くなって自然と笑みがこぼれてきてしまう。

そんな東北の民謡に加え、「聞け万国の労働者」や「釜ヶ崎人情」のような労働歌を挟み込んだセットリストは絶妙だった。モノノケのライブではお馴染みの「ああわからない」なんて、今聞くと国の一大事にちっとも肝心なことをやってくれない政府のお偉いさんを歌ってるみたいに聴こえてしまう。これが大昔の歌なんだからなあ。いつの時代も庶民の目は心理を突いているってことか…。

昨年に続いて、上間綾乃も大太鼓でバンドに参加。2曲で歌も聞かせてくれる。この時、綾乃ちゃんは前に出てきてヒデ坊と並んでボーカルをとるんだけど、これがなんともカッコいい。特に「安里屋ユンタ」は、ビート感があって完全にロックだと僕は思ってるんだけど。

「お富さん」もぐっときた。僕がこの歌のすごさに気が付いたのは、数年前に観た「夕凪の街 桜の国」という映画から。原爆投下後の広島を描いた映画で、麻生久美子演じる主人公が「お富さん」をよく口ずさむ。僕は歌の意味がいまだによくわからないんだけど、あの明るいタッチで“死んだはずだよお富さん 生きていたとはお釈迦様でも知らぬ仏の…”と歌われると、“死”というヘヴィな事実を突き抜けようとするたくましさを感じずにはいられない。

被災地の子供たちのために中川が選曲したという「アンパンマンのマーチ」も演奏された。これ、アコパル・ヴァージョン、リクオ&ウルフルケイスケ・ヴァージョンと3パターン聴いたが、僕はモノノケ・ヴァージョンが一番好き。音数が多いから、こういうマーチっぽい感じは良く合う。チンドン囃子の入ったマーチ、なかなかよかです。やなせたかしさんだって聴いたら絶対気に入ると思うなあ(笑)。
最後は気仙沼のおっちゃんたちに“これを演るとはツウだ”と言わせるための選曲という(笑)、必殺の「おいらの船は300トン」でオーラス。

アンコールでは、モノノケ・サミットのツアーTシャツを着たミチロウも加わり、ミチロウの曲を2つ共演。まずは、ボブ・ディランの曲にミチロウが歌詞をつけた「天国の扉」だ。壮絶…。これはかな~りぐっときた。やっぱりミチロウ、凄いや…。サビをコーラスする中川もヒデ坊も、きっとこみ上げてくるものがあったんじゃないかなあ…。そして、原発との別れをこめて歌われた「仰げば尊し」。ミチロウ、気持ちがビシビシ伝わってくる凄いステージを見せてもらったと思う。

いったん引っ込んだ後、すぐにダブルアンコール。最後はモノノケだけで「さよなら港」で楽しい夜は終わった。
なんだか、時間の経つのがあっという間に思えた楽しい宴。終わったあとは祭りの後の寂しさに似た気持ちになったなあ。

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