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2011年9月 4日 (日)

【映画】ジョン・レノン,ニューヨーク

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ジョン・レノンに関しては、これまでにもたくさんのドキュメンタリー映画が作られている。だから、正直言うと見る前は今さらジョンの映画もないだろうっていう醒めた気持ちがあったことも事実。ここ10年ぐらいで未発表音源もたくさん出たから、いい加減新鮮なネタも切れてるだろうと思っていたし…。
とんでもなかった!この「ジョン・レノン,ニューヨーク」は、僕にとってこれまで作られたどのドキュメンタリーよりも、ぐっとくるものだった。それは、一言で言うと“かっこ悪くて情けないジョン・レノン”を、これまでのどの作品よりも多く取り上げていたからだと思う。

映画には、オノ・ヨーコをはじめとしたいろんな関係者が出てくるんだけど、中でも写真家のボブ・グルーエンの存在が大きいと思う。彼がこの映画で初公開したという、ジョンがヨーコに土下座して許しを求めている写真、これはある意味映画の核になっていたんじゃないだろうか?これまでは、こういう“カッコ悪い”ジョンの姿はあまり世の中に出てこなかったように思う。でも、熱心なファンならわかっているはず。本当のジョンは、愛と平和を訴える聖人君主なんかじゃないのだ。執念深くて女々しくて、寂しがり屋で情けないダメ男。はっきりいえばカッコ悪い部分もたくさんある男なのですよ。だけど、ジョン・レノンはそのカッコ悪いところも何の躊躇もなく音楽で曝け出してきた。そこに悩み多き世界の若者達は惹かれていったんです。そして、カッコ悪いことは実はとてもカッコいいことだと多くの人が気付いた…。なーんて言うと、まるで早川義夫さんのアルバムみたいだけど(笑)、とにかく、この映画では、そのカッコ悪くてとてつもなくカッコいいジョンの姿が、これまでのどの映像作品よりもきちんと描かれていると感じた。

ここに描かれたジョンは、ニューヨークに住んでた1971年から80年までの姿に限定されている。これもいい。これまでだと必ず出てきてうんざりさせられた甘ったるい「愛と平和の使者ジョン・レノン」みたいな色合いは薄く、ニューヨークの町と人を愛し、ヨーコとの生活をひたすらに守ろうとした不器用な一人の男の姿が、ジョンの生前の映像、未発表音源、関係者の証言などを通して丁寧に描かれていく。

ちょっと驚いたのは、最近のメイ・パンが出てきたことかな…。この人は「失われた週末」時代、ジョンの愛人だった女性だ。確か、80年代にかつてデヴィッド・ボウイのアルバムのプロデューサーだったトニー・ヴィスコンティーと結婚しているはず。ジョンの傍にいた頃は、少女の面影を残す屈託のなさと不思議な艶っぽさがあり、さすがジョンを魅了した女性だと、思春期の僕も心惹かれたりしたもんだったけど、今はすっかり肉付きのいいおばちゃんになっていた。ああ、時の流れは残酷なのね…(苦笑)。聞くところによると、メイ・パンは数年前に出された「失われた週末」時代の写真集をきっかけに、またヨーコと縁りを戻したらしい(ま、愛人ってのもヨーコ公認だったんだから当たり前かな…)。
この時代のジョンが毎晩飲んだくれていたことは有名だ。でも、実はいろんな友人が訪ねてきたりしてて、けっこう有意義な時間を過ごしてもいたらしい。たぶん、ヨーコを苦手としていた古くからの友人は、二人が別居したことでかえってジョンに近づき易くなったんだと思う。最近世に出た、ジョンとポールがプールサイドでくつろいでる写真もメイ・パンが所有していたものだという。たぶん、この人はジョン・レノンの知られざるエピソードをまだまだたくさん知ってそうな気がするなあ…。

200901291434341_3 「失われた週末」時代の頃のジョンとポールの仲は完全に修復してたっていうから、もし80年代もジョンが生きていたら、ビートルズは再結成していたかもしれないと僕は思うよ。いや、マジで…。
その他にも、アール・スリック(80年代にジョンが復活した時、ギターでサポートした人)や、クラウス・ヴォアマン、ジム・ケルトナー、それにエレファンツ・メモリーのメンバーなんかの懐かしい人たちが続々出てきて、全く飽きることがなかった。
ジョンとヨーコが復縁するきっかけを作ったエルトン・ジョンも登場。MSGでジョンと共演した当時の自分の衣装を「まるでレディ・ガガだね」って言ってるのには笑っちゃったけど(笑)、エルトンの話の端々からは、ジョンがいなくなって30年以上経った今でも、彼のいない喪失感が消えていないことが感じられ、胸が詰まったなあ…。

正直言って、このところの僕は、ジョン・レノンのことをじっくり思ったりする時間を持つことはなかったのだが、この映画で改めてその魅力と音楽の素晴しさに感じ入ってしまった。もうね、映画が終わってもしばらく席を立てないぐらいに感動してしまいましたよ…。

改めて思った。ジョン・レノンのジョン・レノンたるゆえんは、自分がいいと思ったら世間の言うことや過去の栄光とかを考えず、とにかくすぐにやってしまうところ。それこそが、彼がロックの祖と言われ、パンクの連中からも尊敬された理由だと思う。だが、時としてそれは大きな代償となって返ってきた。ジョンがアメリカで暮らした数年間は、そんなことの繰り返しだったのだ。
世界一のバンドを潰してまでも愛する女性と一緒に居ることを選んだことから始まって、自分の信じた反戦を叫び続けたら、FBIから目を付けられて国外退去をくらいそうになる。そして、ニクソンが再選されたことに失望し、泥酔したあげくにヨーコを裏切るような行為を…。ヨーコと別れて家を出て、まるで不良少年に戻ったような飲んだくれの日々を送り、紆余曲折の末、再びヨーコと暮らし始めたら、今度は予想だにしなかった子供の誕生。喜んだジョンは何の未練もなく多く音楽を止めて主夫に…。そして、子供から「パパはビートルズだったの?」といわれたことをきっかけにまたもや音楽の世界に戻ってくる…。こんな波乱万丈の人生ってちょっとないでしょう?

この映画、東京では恵比寿ガーデンプレイス内にある東京写真美術館で上映されているのだが、この映画館は実に音響が良い。とても気に入りました。ホールのような木製の椅子に腰掛け、ハイクオリティでジョン・レノンの音楽に浸るのは、とても気持ち良い体験だった。おそらく、この映画はいずれDVDやブルーレイで市販されるだろうが、できれば音響のいい映画館でじっくりと向き合った方がいいと思う。きっと感動が倍になる。特に、東京にお住まいの方なら、迷わず写真美術館まで足を運ぶことをお勧めしたい。

予断ですが、映画の公式パンフには、仲井戸“CHABO”麗市とGOING UNDER GROUNDの松本素生との対談が収録されている。10月にはGOING UNDER GROUND vs 仲井戸麗市BANDっていうライブが開催されるが、なるほど~こういう接点があったんですねえ…。

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コメント

僕も見ました。ジョンが生きていれば、今もニューヨークに住んでいただろうか?と考えました。あの時代背景を見ると、NYという場所が平和という意味を変えていたのじゃないかな?って思いました。
後に、その影響を浴びることとなる(浴びたのかどうか?は解りませんが…)日本のバブルの到来(80年代)。
そこで、ジョンは時を止めてしまいましたけどね…。

それにしても、気持ち良く観られました。
HAGAさんの言う通り、音響良くてびっくりしました。
それでも、ビートルズの映画だったらどうかな~?
ジョンのあの時代の映画だったからこそ、この場所(スペース)にマッチしたのかなって感じてます。
何はともあれ、良かったです!僕も感動しました。

そのあと、僕は東京JAZZ2011見に行ってしまいました。(笑)。
JAZZも今はいろんなテイストがあって意外と面白かったです。
そこで、3G発見!僕の真後ろで観てました。
早川岳晴、梅津和時まで...。そうそうたる面々が連なってました。
なんかあるのでしょうか???。

◆樹木さん
>ジョンが生きていれば、今もニューヨークに住んでいただろうか?と考えました。

そうですね、今だったらジョンはNYに住んでいなかったと僕は思います。もしかしたら、日本に住んでいたかも…。そして、ネイチャリスト的な方向にどんどん進んでいったような気がしますね。

>そのあと、僕は東京JAZZ2011見に行ってしまいました。

え、JAZZフェスで3Gですか!なんでしょう?今後の展開が気になりますね。これは樹木さん、貴重な場に出くわしたのかもしれませんよ!(笑)

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