【映画】ゲット・ラウド ジ・エッジ、ジミー・ペイジ、ジャック・ホワイト×ライフ×ギター
これは、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジ、U2のジ・エッジ、元ザ・ホワイト・ストライプスのジャック・ホワイトという3人のエレクトリックギターの名手が集まって、ギターについて語り合ったり、夢のセッションを行う様子を記録したドキュメンタリー映画だ。
僕はツェッペリン、U2ともに大好きなバンドなのだが、この映画はあくまでもバンドのギタリストとしての部分をフューチャーしたもの。なので、見る前まではギターの弾けない僕には楽しめないかも…なんてこともちょっと思ってたんだよね。だけど、始まったらそんな心配は全くの杞憂だったなあ。映画館の大音量スピーカーから流れる歪んだエレクトリックギターのサウンドと、3人のギターに託す情熱に、あっという間にスクリーンに引き込まれてしまった。
断言するけど、これは決してマニアックなギターフリークのためだけのものではない。エレクトリックギターの音が好きならば、すべての音楽ファンが楽しめる映画だと思う。
僕が思うに、この映画がかくも面白いものになったのは、この3人の人選が絶妙だったことが大きいと思う。
世の中には星の数ほどギタリストがいるでしょう?この映画だって、たとえばジミー・ペイジの代わりにジェフ・ベックを、エッジの代わりにポール・ウエラーを、ジャック・ホワイトの代わりにジョン・フルシアンテをあてたってネームバリュー的には何の見劣りもしない。でも、それでは決してこういう面白さは出なかったと思うんだよなあ…。
見ていて誰もが気付くことだと思うが、この3人、ギターに関するアプローチの仕方はそれぞれかなり違っているのだ。
特にエッジとジャック・ホワイトは対極と言ってもいい。最新のテクノロジーを使って多彩な音色を表現するエッジに対し、ジャックは最小限の機材しか使わない。ギター自体チープなものばかりで、それは時として時代に逆行しているかのようにさえ映る。これは、それぞれの世代の置かれた音楽環境の違いによる影響が大きいのではないだろうか?エッジがデビューしたのは、テクノロジーが格段に進歩した80年代。ジャックが出てきた90年代は、さまざまな音楽ジャンルが出尽くしてしまい、ミュージシャンは意識して自分の嗜好する音を探さなければならない時代だった。ジャックが嗜好したのは70年代以前のロックやブルースだったわけで、そこには過度なエフェクトは必要ないっていうことなのだろう。
そういう意味では、この映画でいちばん尖がっていたのはジャック・ホワイトだったようにも思う。冒頭で「3人が会ったら、殴りあいの喧嘩になるかもしれない」とジャックが言っていたのは、恐らくエッジを意識しての発言だったのではないか。
ところが、3人は意外なほどすんなり纏まっていく。進行役はジミー・ペイジ。見た目は同世代のジェフ・ベックやエリック・クラプトンと比べてもかなり老け込んじゃったけど、ギタリストとしての好奇心は全然衰えていない。素晴らしい!
彼は他の2人よりもかなり上の世代にあたり、言ってみればロックギタリストの草分けになった人物だ。何もなかった時代にエレキギターの可能性を黙々と追求してきた。エフェクトがどうのという次元の話ではなく、やることなすこと全てがロックギターの定番になっていった時代を通ってきているわけだから、エッジのやり方も、ジャックのルーツ回帰的な志向も、ジミーにとっては先入観なしにすんなり理解できるのだと思う。
それにしてもジミー・ペイジ、この映画の製作に当たっては、かなり本気だったんじゃないかなあ?知られざるエピソード、見たこともない写真や映像が次々に出てくるのだが、こんなのはジミーの提供なくしてはありえないはずだ。そんなジミーの熱に引き込まれ、2人も知らず知らずに会話に熱中していったように僕には見えた。
もう一つ改めて思ったこと。それは、ジミー・ペイジという人は、あの時代にしては珍しいぐらいサウンドの追求に情熱を注いでいたギタリストだったということだ。これも他の2人と同じ土壌で話ができる要因だったんだろう。
もし、映画に登場するのがジミー・ペイジではなく、ベックやクラプトンだったらどうだろう?たぶん、サウンドよりも技巧的な話に終始してしまうのではないだろうか。もしかしたら“結局のところ、ギターはアコースティックでどれだけ弾けるかだ…”なんて話に着地してしまったりして。それじゃあ映画になんないし、ジャック・ホワイトは呆れ返っちゃうと思うぜ(苦笑)。
それぞれのバンドのファンにとって、感涙もののシーンもたくさん出てくる。
ジミー・ペイジに関しては、なんと言っても4thアルバムをレコーディングしたヘッドリィ・グランジだろう。ニコニコしながら「思い出が甦るねえ…」なんて言ってくれるジミーがなんともニクイ(笑)。レヴィー・ブレイクのドラムサウンドを録音したホールも公開された。天井の高い回廊の自然なエコーを利用したらしいのだが、映画館の大音量で聞くスネアのサウンドは本当に気持ちよかった。
エッジに関しては、彼のギターテックによるエフェクター解説が興味深かった。それから、デビュー前にバンドが練習をしていた大学構内を訪ねるシーンはぐっときたなあ…。彼らほどのスーパーバンドになっても、あの時代を大切にしているということが良くわかった。
ジャック・ホワイトは、自分の子供の頃のギターへのアプローチを芝居仕立てで演じる場面が素晴らしかった。実は、僕はこの人に関してあまり詳しくなかったのだが、今の時代には珍しいほどのピュアなギタリストだということが十分に理解できた。
ロック好きにとっては、本当に面白い2時間だ。僕はツェッペリンとU2の素晴らしさを再認識した。ジャック・ホワイトに関しても今後の活動がとても気になる。やっぱりいつの時代もエレクトリックギターはロックの要だなあ!
あ、肝心のセッションシーンを全く書いてないや…。でも、これはこれから見る人のためにあえて書かないほうが良いかもしれない。一つだけ言っておくと、一番最後のセッション曲は僕的にはかなり意外な選曲。これはエンドロールとカブってしまうんだけど、絶対席を立たないで最後まで聴いていてほしいと思う。
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最近の音楽映画に疎くて、この映画は知りませんでした。
面白そうですねー!
私は一応一通り楽器やりますが、やっぱり一番好きな楽器はエレクトリックギターですね。
弾いていると、自分の聴いてきた音楽をどの様に解釈しているかがわかるんですよね。
アバウトにしか聴いていない曲はちゃんと弾けないし、凄く好きなアーティストの音は思わず細かなところまでコピーしたくなります。
ジミー・ペイジはヘタウマという評価ですけど、ギターを使ったプロデューサーという趣を感じます。
投稿: 僧 | 2011年9月20日 (火) 21:46
◆僧さん
>弾いていると、自分の聴いてきた音楽をどの様に解釈しているかがわかるんですよね。
これ、楽器ができる方は皆さんそうおっしゃいますよね。中途半端でギター挫折した僕には、それができないのが悲しい…。やっぱり、ミュージシャン目線とリスナー目線では音楽のツボり方が違うことがあるのを感じます。
>ジミー・ペイジはヘタウマという評価ですけど、ギターを使ったプロデューサーという趣を感じます。
いわゆる3大ギタリストの中では、昔からジミー・ペイジって他の2人より下に見られてますよね(苦笑)。確かにバカテクを披露するタイプの人ではないですが、数々のセッション歴が証明するように基本的な技術はあるし、テルミンやボーイングなんかも、決して奇をてらったわけではないと思うんですよね。曲の中でギターの音を如何に生かすかを常に考えている人なんじゃないかと僕は思ってます。そういう意味では、まさに僧さんのおっしゃる「ギターを使ったプロデューサー」ですね!
投稿: Y.HAGA | 2011年9月21日 (水) 11:31
ジミーペイジの中には、「明確な答え」というか、色彩、絵画のようなものがあるように感じます。
それを、なんとかGUITARで再現しようとしているのではないかと。
(幻惑されて)のソロなんか、もう自分で迷宮に入っていって、迷っているイメージですね。
ジャック・ホワイトは好きなギタリストです。
ストライプスのアルバムは、全部いい感じのチープな音が満載です。
妹のドラムがいいんだ!!すげえヘタクソでww
投稿: おぎょ | 2011年9月22日 (木) 23:43
◆おぎょさん
>ジミーペイジの中には、「明確な答え」というか、色彩、絵画のようなものがあるように感じます。
なるほど!そうかもしれません。思うんですけど、この人はクラプトンみたいな人とはタイプが違うギタリストなのかもしれませんね。フレーズ、サウンド、音響…。ギターにできること総てで頭の中にある空気感を再現しようとしているのではないかと思います。そういう意味では、エッジと似てるのかも、意外と。
ホワイトストライプスは、ラストになったライブアルバムを持ってます。なんつうかスゴイですよね、チープで(笑)。
でも、この映画を観てあれは明らかに狙ってやってることがわかりますね。バンド、解散しちゃいましたけど、ジャック君、今後どんな方向でやるんでしょうか?興味深いです。
投稿: Y.HAGA | 2011年9月26日 (月) 12:05
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