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2011年11月10日 (木)

オレは日比谷に行かない

今週末に行われる「日比谷ライブ&マルシェ 2011」に、各方面から疑問が噴出している。
これは“東日本の野菜を買おう。ライブで復興を応援しよう。”という趣旨のもとに行われるイベントで、13日(日)に行われるライブには、泉谷しげるが主体となり、CHABOやLeyona、エレファントカシマシなど、僕も大好きな多くのミュージシャンが参加することになった。

だが、この東日本の野菜を買おう・食おうという呼びかけを、僕はどうしても素直に受け取ることができないのだ。泉谷は、このイベントで販売される野菜は、厳密に検査を行って0ベクレルのものにすると言っている。そんなの当然の話じゃないか。今の科学ではここまでだったら安全という放射線の明確な基準を出せない以上、人に食べることを奨励するのなら、0のものを出すのは当たり前の話。わざわざ言うまでもない最低条件じゃないか。

問題なのは、このイベントで食べることを奨励している東北の農産物、今、町のスーパーに流通しているこれらの野菜は、必ずしも0ベクレルではないことなのだ。これは国が暫定基準値として500ベクレル未満までの農作物の流通を許してしまっているからである。言っておくが、500という値は国が原発事故後に大きく引き上げた暫定基準値。あくまでも“暫定”であり、子どもや若者が長期間食べることには相当のリスクがあると言われている。今、巷には子ども達を内部被曝から守ろうと必死で毎日を生きている人たちが大勢いるのに、能天気に“東日本の野菜を買おう”と呼びかけられる神経をまず僕は疑う。

斉藤和義のエントリーにも書いたとおり、人には人の考え方があるから、こんなことがあったって別にミュージシャンとしての彼らを嫌いになったりはしない。だけど、みんなあまりにも問題意識が低すぎないか?もうちょっと考えて行動して欲しいと思うよ、オレは。
CHABOなんか、この前のライブで能天気に“ぜひみんな来てよ!”なんて客に呼びかけてんだもん(苦笑)。そんな軽々しく言えることかよ!はっきり言ってものすごくがっかりした。オレ、ライブ途中に席を立って帰ろうかと思ったぐらいだ。なんだかライブレポを書く気まで失せてしまっている。
CHABOさん、ほんとに今の東北の現状、わかってますか?自分の発した言葉の意味、わかってますか?オレ、はっきり言って呆れてますよ、ほんと。

前にも書いたとおり、僕は夏に地元福島に帰った時、両親が原発事故後に作った野菜を食べてしまった。だが、それは年老いた両親と傷ついた故郷を前に、確信犯的に行なわざるを得なかった行為だ。わかるか?あの時のオレの気持ちが。思い出すと今でも胸が苦しくなる。そんなリスクを多くの人が背負う必要はない。それは“復興”の捉え方が間違ってると僕は思う。

今本当に訴えるべきことは、安全性が保障できない野菜を食べることではない。そんなことより、勝手に引き上げられた放射線基準値を一刻も早く原発事故以前に戻し、不幸にもそれを上回る汚染された作物しか作れなくなった農家には責任をもって保障金を出すよう、徹底的に東電と国を突き上げるべきではないのか。泉谷にはそういうイベントをやって欲しかった。そういう趣旨なら諸手を挙げて賛成したんだけど…。
ただ“東日本の野菜を食おう”では、国が勝手に引き上げた胡散臭い“暫定”基準値を容認してしまうことになってしまう。それは僕個人は絶対に納得することができない。たとえ泉谷やCHABOやLeyonaが賛同していてもだ。

泉谷とCHABOの共演はとても見たい。だけど、こんな気持ちではとてもライブを楽しむことはできない。
オレは積極的な自分の意思として日比谷には行かない。

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コメント

うーむ。
私もこのライブのこと聞いたときは、正直どうなんだろうと思いましたが。。

ご存知かもですが、一応、日比谷ライブ&マルシェについて、泉谷しげる本人がブログで応答したものを貼っておきます。

http://j.mp/sQo0HH

わかってるとは思いました。

こんばんは。汚染問題はまだ序盤戦だと思います。
食べて応援というのは全く科学的でないし、本質を伴っていないです。
因みに0ベクレルというのも私は有り得ない話だと思っておりますが。何故なら既に核実験やらチェルノブイリで、日本全土の作物に0ベクレルは有り得ないからです。
暫定基準値というのもトリックですね。空間被曝量は距離の2乗に反比例という事からも、内部被爆が如何に恐ろしいかを考えさせられます。
福島でボランティアした際の空間線量は久ノ浜で1μSv/hだったのですから、年間に換算すれば、単純計算で空間線量だけで8760μSvの被曝となります。とても危険なところに居住していることを知らせるのが大切では無いでしょうか?しかも其処で収穫された作物が如何に危ないものであるかも・・・。少なくとも子供には絶対与えられない食物です。

◆ゆかちんさん
正直言って、今回のイベントの取っ掛かりは泉谷さんの気持ちが先走って現実を直視していなかった感は否めません。しかし、直前になってのブログやツイッターを読んでると、彼自身が放射能汚染の実態の詳細を知るにいたって様々に葛藤していることが伝わってきました。
その葛藤ぶりには泉谷さんの誠実さを感じます。
ですから、僕はこのイベント後の泉谷さんのコメントに注目していますし、今後の行動にも期待したいです。ここで学んだことを無にしないで欲しいです。

◆僧さん
農作物の汚染は、何処のモノが何ベクレルかという詳細な調査結果がまったくと言っていいほど表に出てきません。僕はそれが何よりも不気味です。
反面、下記にご紹介するブログのように、放射線が大量に放出された時期以降に植えられた作物からは意外にもセシウムはあまり検出されないという地域もあるようです(これはセシウムがよほど土壌と強く結びついている、つまり除染が簡単なことではないということの証明にもなってしまうのですが)。

http://ameblo.jp/noukanomuko/entry-11024185606.html

国は東北全体を細かいメッシュで区切って、農作物を徹底的に放射線測定をやり、こういう実態をちゃんと示すべきだと思うんですよね。
食べて応援ではなく、そういうことをやれ!と国を突き上げることこそが今求められていると僕は思います。

ただ、このイベントのプラスの側面として、多くの人がこの問題の難しさを知るきっかけにはなったと思います。泉谷さんにはこれで終わりにはして欲しくないです。ぜひ、この失敗(とあえて言いますが)を教訓に次につなげて欲しいと思います。

今回のイベントについて知ったとき、正直私も疑問に思いました。
阪神淡路大震災の後も、被災地のことを思ってくださった方々が、いろんな支援をしてくださったり、たくさんのイベントが行われましたが…
浜田氏が地元のFMに出演した際に、そんなイベントに関して「彼、彼女らの無邪気な善意」と表現し…、さらに「僕はどうしてもそんな気分になれなくて」とも話されていました。
“気持ち”はあっても、何を、どうするのか、その気持ちをどんなふうに行動に移すのか…本当に難しいと思います。
浜田氏の神戸でのライブの利益が寄付されたと、先日新聞に載りましたが…
南相馬市の幼稚園や保育所の除染費用に充てられるそうです。ツアーサイトに、その事が詳しく書かれています。
現地に何度も足を運び、活動をされているJ.S.F.と相談して、寄付先と使用目的を決められたようです。


延期になっている宮城公演を残している今現在、浜田氏はこう語っています。

「ステージの上では感情的にならずに歌うこと、
演奏することに集中するように心がけました。
哀しみや苦しみに同化し、共有することは出来ません。
空々しい慰めの言葉を安易に口にすることも出来ません。
ひたむきに演奏し、歌うことしか我々には出来ません。
その時間と空間が少しでも温かいものであればと願っています。
延期になっている宮城のコンサートが実現したら、
スタッフ、ミュージシャン一同 ベストを尽くして、
温かい時間と空間をつくりたいと思っています。」


自分の仕事は何なのか。
自分に出来ることは何なのか。
何かしたい、役に立ちたい、という気持ちと…
何が出来るのか、自分に出来るのはどの範囲なのか…そんな思いとの間で葛藤してるように感じます。

選び…間違え…また選び……それぞれがそんなふうに進んでいくしかないように思います。
自分が選んだことが正しいのか…自分に問う余裕だけは失わずに…。

◆REICOさん
うーん、原発事故で風評被害にあった東北を“助ける”ってみんな言いますが、実は僕達だって被災者だってことをみんな本当にわかってるんでしょうか?僕は事故はまだ全然収束なんかしてないと思ってるし、その際たるものが汚染された作物の流通問題だと思うんですよ。これを水際で食い止めなければ、冗談抜きに本当に日本中が被爆者だらけになってしまうと思うんです、僕。

今回の原発事故に関しては、当事者意識が人によって大きく違うところが難しいとつくづく思います。福島市に行くとスーパーには“被災者支援のための募金箱”が置いてありますから。おいおい、被災者は誰なんだって(笑)。でも、それは世界から見れば東京だってそう見られてるかもしれませんよ。

オレも日比谷には行かなかった。
もう、こういうイベントはうんざり!だ。
着実にワンマンをこなしているミュージシャンなり、アーティストに
賛同します。

僕は小・中と群馬の前橋というところで暮らしていました。
その前橋で、中学の同級生と山下達郎のパフォーマンスをその日は
観ました。

HAGAさんも以前記事にしていましたが、ローカルで観るライヴもいいなって思いました。情緒があり、またホールの“鳴り”っていうものを
知り尽くしているヤマタツのこだわりと、今の想いというものがヒシと
伝わりました。

どちらかと言えば、メロディー重視のアーティストですが、今回のツアーは詞(ことば)に拘りたいと言っていました。
内向的に見えるけど、そこに力を込めてこそ、山下達郎なりの今の日本を、この国を、、そしてこの国で暮らす人々へ思いっきりぶつけていた
気がしました。

もちろんテレキャスターでのあの独特な緩やかなストロークも健在でしたけどね!とても気持ちのいいパフォーマンスでした。

◆樹木さん
泉谷さんの気持ちはよくわかるし、福島出身者として東北を気にかけてくれるのは嬉しいんですけど、今回の原発事故は、単純に同情したり熱い気持ちで押し切るだけではチャリティーとして成り立たない難しさを感じます。やる方も見る方も相応の知識がないと、方向性を誤ってしまう危うさをひしひしと感じます。
それと、あのライブに行った人の感想をブログで見ると、音楽に関する話ばかりで、東北を支援するという趣旨についての記述はあまり見当たらなかったりするんですよね。あの日日比谷に行った人たちは、純粋にロックオーケストラが見たかっただけだったのかも。テーマは後付だったのかなあ…。

チャリティーライブなんてそんなもの、っていわれればそれまでですが、なんか今、僕はとても白けた気分です。日本のロックなんていたって、実態はこんなものなのかと…。

チャリティーライブ・・そんなモンなんですよ。

それは演奏するミュージシャンもそうだし聴く方もそう。
例えば今年6月のヒートウェイヴのライブ、山口洋が熱い
メッセージを叫んだ後にライブハウスの床の上は観客が
捨てたチラシやゴミだらけ。
フィッシュマンズがネットでチャリティライブを流して直ぐ
その後ネット上では不正投稿が続出。
数年前行った環境保護のライブでは司会が環境の話始めたら
観客は席を立ってトイレに行ったり休憩を始めました。

勘違いしたチャリティライブこれからも続くでしょう。
趣旨も理解せず好きなミュージシャン目当てに参加するファンも
きっと居るでしょう。
でも、例えば今回の泉谷のライブを切っ掛けに被災地について
真剣に考えたり勉強を始める人も居るかも知れない。
もし1人、2人そういう人が出たなら今回のライブもムダでは
無かったと思います。

正解が何か?なんか分かりません。放射能の問題は確かに
慎重に扱うべきですが間違っても何もしないよりは何か
した方が良いと思います。間違えたなら直せば良いんですから。

あ、でも批判や選択は当然大事ですよ。HAGAさんがこういう
トピック立てて皆で色々意見交換できるんですから。
そうやって色々話して良くして行けば善いんじゃないでしょうか?

◆ながわさん
うーん、チャリティーライブと銘打っても音楽イベントである以上、そのメンツ目当てで客が集まるのは当たり前といえば当たり前か…。
でも、僕はたとえそれが音楽のイベントだろうと、それが社会に何らかの問い掛けをしているものであればそこに反応していきたいと思っています。たとえ自分の好きなミュージシャンであっても、言ってることが間違ってると思ったらそれに疑問を投げかけたい。だって、僕は僕の人生を生きているのであって、ミュージシャンの人生をなぞっているわけではないですからね。
このイベントに関しては、泉谷の立場、CHABOの立場、Leyonaの立場、見に行ったファンの立場、(僕を含む)行かなかったファンの立場といろんな考え方があったと思います。そのことを僕はまだ考え続けています。僕の中ではこのイベント、まだ全然終わっていません。総括できていませんから。できれば、行った人の音楽レポでないその人自身の考え方を聴きたいです。なんだったら直接話を聞いてみたいとすら思います。これは日本の音楽史に残る重要な事件、日本のロックが社会に過去最大限にコミットした事件だったと僕は僕は思っていますので。

HAGAさんは…
チャリティーだとか支援とか…そういうものよりも…被害をこれ以上広げないためにできる事や、少しでも早く収束に向かう方法…そういったものが大事で、
また問題意識の低さや…安易に参加する集団意識への
不安や危機感を感じてるんだなぁ…
そんなことを感じました。

カメラマンの内藤さんは、かなりシビアにとらえてらっしゃって…ご自身のツイッターやブログでも日々発言しています。内藤さんも広島出身で、身内の方々はたくさん被爆されています。
私の父も入市被爆しているので…今回の福島のことは…私にとっても重大な事件であり、どうしても見過ごすことは出来ないことであり、日々考えています。
迅速さと慎重さが必要なことなので…とても難しいと感じていますが…自分に出来ることを、ひとつずつやっています。
先日、私が協力したことの延長線のことが書かれたブログを見つけました。
もしよければ覗いてみて下さいね。南相馬市よつば保育園の副園長さんのブログです。

ヨシユキ副園長 よつば青雲ブログ

◆REICOさん
そうですね。僕は今回の原発事故は気合一発でのチャリティーや善意のゴリ押しみたいな支援ではダメだと思うのです。通常の震災による被災地支援ならそれでもいいと思いますが、今の相手は目に見えない放射能という悪魔であり、国が明らかに情報操作を行なっているとしか思えない現実がある以上、よっぽど慎重に事を進めていかないととんでもないことになりかねないと思うんですね。
そういうことは、3.11以降問題意識を持って情報収集すれば誰でも見えてくるはずだし、本来ロックファンってのはそういう鋭いアンテナを持っている人種であったはずだとも思うのです。“たかが”ミュージシャンのファンだというぐらいで思考停止に陥ってしまったり、安易な方向で参加へと雪崩れ込んでしまうのは、とても危険な兆候だと思います。

ご紹介のブログ、拝見いたしました。
素晴らしい!南相馬に直接行ったんですね、彼は。しかもお忍びで…。わけのわからないチャリーティーイベントより、こういう草の根の活動の方がよっぽど美しく、被災地を励ますと僕は思います。

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