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2011年12月 9日 (金)

CHABOの恩返し⑧ 浜崎貴司 with 仲井戸“CHABO”麗市 / 2011年12月9日(金)Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE

素晴らしいライブだった。これまで僕の見てきた恩返しライブの中でも、濃密さは間違いなくNo.1。これまでは、ライブが終わると、もう少し長くCHABOを見たいなあ~という気持ちがどうしても生まれてしまい、100%満足して帰路に着いていたわけではなかったのだが、今回はまったくそんな気持ちは起きなかった。これは、この夜のステージが、純粋にジョイントライブとして高い完成度にあったという事だと思う。2人の持ち味が十二分に発揮された、本当に素晴らしいステージだった。

正直言って、僕は開演前はこのライブがこれほどのものになるとは思っていなかったのだ。これはCHABOのステージングの素晴らしさはもちろんだが、浜崎貴司という男が、僕の予想をはるかに超える素晴らしいソングライターだったことが大きい。僕の彼に対する知識は、イカ天出身バンドのボーカリストといった程度。もちろん、OK!!! C'MON CHABO!!! でボーカリストとしての力量はわかっていたつもりだったが、ソロのステージには強い衝撃を受けた。いやあ、この人がこれほど素晴らしいシンガー・ソング・ライターだったとは…。

浜崎の弾き語りには本当に圧倒された。
1曲目は数年前に彼がスランプに陥っていた時、渋谷のスターバックス2階席から眼下のスクランブル交差点を眺め、半日かけて書き上げたというヘヴィ・ブルースだったのだが、これがもう凄かったのだ。アコギをかき鳴らしながら、当時の心境を赤裸々に吐露した重い歌詞を、圧倒的な声量で歌い上げる。のっけから心臓を鷲づかみにされた。
その後も、浜崎はカバーや自曲を次々に歌いこんでいく。カバーではCHABOの「ガルシアの風」や、斉藤和義の「虹が消えるまで」も出た(MCでは“小泉今日子の…”と紹介されていたが)。
浜崎の持ち歌は、はっきり言ってそのほとんどが重く暗い。決して一般受けする歌ではないかもしれないが、僕はその内省的な世界にぐいぐい引き込まれていった。この日セレクトされた曲が、彼のバンド、フライングキッズのレパートリーだったのか、ソロで書いた曲なのかはわからない。だが、そのどれもが僕がフライングキッズに対して抱いていた、シニカルな男目線をファンクビートで歌い込むといったイメージとはまったく違った歌たちだった。もっと赤裸々で生の感情を吐き出した、血を流したような歌…。

特に印象に残ったのは、ラストに唄われた曲だ。タイトルは忘れてしまったが、僕はこの曲にかなり揺さぶられた。何よりも歌詞が素晴らしく、僕は忘れないようにと、その一節を手帳に書き留めたぐらいだ。こういうことは僕には本当に珍しい。

失速する時代に背を向け 我がための真実を追いかけろ
秋の黄金色の小麦のように 君は満たされてく

息が詰まるほど胸を焦がしたら
とどまることを知らない 前しか見ぬ馬鹿であれ

浜崎の歌からは、日々の葛藤に悩み、未来への不安に苦しみながらも、大切な人との大切な瞬間を大事にしていきたいと願う一人の男の姿が浮かんでくる。これは紛れもないブルースだ。久々に邦楽アーティストの曲を聴いてガツン!ときた。なんとなく、古井戸初期のステージはこんな感じだったのではないだろうかと思ってしまったぐらいだ。

さて、CHABO。CHABOのステージも浜崎に負けず劣らず凄かった。
オープニングは麗蘭の去年のツアータイトル曲「Love Love Love」。客席に手拍子を煽りながら陽気に演奏していくが、その歌詞は“世界に、君に、愛は足りているかい?”と問いかけるもの。歌を聴きながら、今の僕らの暮らしを振り返らざるを得なくなる。
そう、この日のCHABOのセットリストは、師走っぽいもの、クリスマスが唄いこまれたものなど、CHABOお得意のシーズンソングも多かったが、ヘヴィだった2011年に対しての想いをこめたものにもなっていたと感じる。しかも、それは奇しくも浜崎貴司のセレクトした曲と違和感のないトーンになっており、もしかしたらこの日の恩返しは、各々のソロステージでの選曲も含めて、全体のトーンを見渡してかなり周到に考えられたものだったのかもしれないと思った。

びっくりしたのは、RCナンバーの「まぼろし」が唄われたことだ。この歌の前に、CHABOは、結果的に恩返しシリーズでは毎回RCの曲を歌ってきたが、それはPLEASURE PLEASUREが清志郎と出会った街、渋谷にあるので自然とそういう気持ちになると話していた。また、最近雑誌の取材で「青い森」のあった辺りに行く機会があり、店はもう無いが当時の雰囲気はまだ微かに残っていて、今にも清志郎が出てきそうだったとも語っていた。
はじめて聴くアコギ・バージョンの「まぼろし」。この曲は、実は収録されたアルバム「BLUE」よりもかなり昔に作られた曲だったことは、ファンの間では有名だが、当時のアレンジもこんなだったのでは?と思わせるような生々しさがあった。

ラスト2曲もなんだかとても象徴的だった。
まずは、ものすごく久しぶりに唄われた「労働歌」。CHABOはまったくギターを弾かず、まるで農民が土を耕すかのように、アコギのボディを拳で叩きアカペラで歌詞をシャウトする。そして最後は「Are You Alright?」。僕は、この2曲は3.11以降のCHABOの想いを現したように思えてならない。「労働歌」は様々な思いをかき消してしまうほどの圧倒的な現実に直面した今年、ミュージシャンとしてどう生きていくべきか、自分の立ち位置をもう一度再確認するようなニュアンスを感じたし、「Are You Alright?」には、この迷える時代に生きる僕たち総てに対しての慈しみだと思った。

ここまでが本編。ここまででも十二分に大きな手応えのあるライブだったのだが、この日は第二部と呼んでもおかしくない長いアンコールがあったことで、その良さがさらに引き立った。
アンコールは、各ソロステージでの重たいタッチとは雰囲気が一変。浜崎にいたっては、ステージに出て来た時の表情からして違っていた。まずは恩返し恒例の「適当ブルース」。これがむちゃくちゃ楽しかった。ギターの絡みはもちろんだが、お互いの即興で付ける歌詞が最高に可笑しくて、CHABOも思わず“恩返し史上、一番変だ!”と苦笑い(笑)。

それから浜崎の持ち歌でファンクナンバーを2曲。これは歌詞も含めていかにもフライングキッズらしい曲。CHABOはアコギでバッキングに徹していたが、2曲目のワウペダルを使ったソロはシビレた。Glad All Overでの名演「ボスしけてるぜ」を髣髴とさせるようなギターだった。

それからなんと、この日は2人の共作も披露された。「僕らのメリークリスマス」と名付けられたその曲は、シンプルな歌詞にクリスマスの様々な場面が歌いこまれる、とても心に残る曲だったな。CHABOは演奏終了後、“来年のクリスマスも、浜ちゃんとこれを歌うのを楽しみにしてる”なんて言ってたけど、そんなに待てないぞ(笑)。なんとかレコーディングできないものかなあ…。ライブだけじゃあ、勿体無いぐらいの名曲なんだから…。

この日の恩返しは10分押しで始まったのだが、終わってみると10時半近い時間。たっぷり3時間近くあったわけで、他の回と比べても長いライブになった。
この2人、恐らくこれだけでは終わらないだろう。ステージでのCHABOの表情を見ていると、彼が歳の離れた浜崎貴司という男をシンガー・ソング・ライターとして心から敬愛しているのがわかる。なんとなく思ったのだが、CHABOは浜崎の歌に自分と似た世界感を感じているのではないだろうか。
僕も、この人の歌がどうにも気になって仕方がない。考えてみたら、浜崎貴司は今年46歳で僕とまったく同じ歳だ。そのせいか、彼の歌の時代に対する目線には、共感できる部分がとても多いと感じる。恩返しシリーズの最大の恩恵は、こうしてCHABOを通して、21世紀にRCチルドレンが繋がっていくきっかけを見つけることができるところなのかもしれない。

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コメント

記事を見て、“やられた~”って感じです。
見逃してしまった!という気持ちです。

『まぼろし』演ったんですね!?
聴きたかったな~。トリビュート・ライヴも
行っていないので、浜崎の魅力も見てみたかった。

すごくいいライヴだった模様が、ストレートに
伝わりました。恐れ入りました…。

投稿: 樹木 | 2011年12月11日 (日) 22時35分

◆樹木さん
たぶん、この2人は今後も機会があれば共演していくと思います。樹木さんも、焦らなくてもきっといつか見られると思いますよ。

『まぼろし』は僕もびっくりしました。もしかしたら、恩返しシリーズでの一番の収穫は、毎回RCナンバーを必ず聞くことができたことかもしれないと僕は今思い始めています。CHABOは、こうやってRCの曲たちを一つひとつ丁寧に封印を解いているのかもしれませんね。

投稿: Y.HAGA | 2011年12月12日 (月) 11時25分

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