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2011年12月 3日 (土)

【映画】忌野清志郎 ナニワ・サリバン・ショー 感度サイコー!!!

Photoオレ、実を言うと、ナニワ・サリバン・ショーが実際に行われた当時は、これがそれほどのもんだとは思ってなかったのだ。
もともと僕は、おふざけモードの清志郎にはそんなに入れ込んでなかったし、そもそもこの頃は、清志郎の活動そのものにクエスチョンマークを抱いていた時期だった。ナニワ・サリバン・ショーに関しても、後にCSで放送されたやつを見はしたけれど、まーた清志郎が変なこと始めてるなあ、ぐらいにしか感じず、実際に大阪まで足を運ぼうとは思わなかったのである。
しかし、こうして改めて映画を見てみると、このイベントの素晴らしさ、こういうことをやろうとした清志郎の気持ちが強く伝わってきて、今更ながらに行かなかった事を大きく後悔してしまう。

ライブの映像を見ていて一番印象的だったのは、清志郎の素晴らしさは言わずもがなだが、出演したミュージシャンたちも、みな本当に嬉しそうな表情を浮かべていたことだ。布袋寅泰とか浅井健一とか、普段の自分のライブだったら絶対にこういうモードにはならないような人たちまで、まるで子供のように楽しそうな笑顔を浮かべてステージに立っている。ジャンルや年代にかかわらず、すべてのミュージシャンをこんな風にしてしまう清志郎の器の大きさを改めて感じた。

それから、こういう企画をクリエイターに想起させてしまう忌野清志郎という男の存在感にも改めて感服。アルバム「KING」に「玩具」って曲が入ってたけど、忌野清志郎というネームを触媒にしていろんな企画が持ちかけられ、それを当の本人が一番面白がってやってしまうという清志郎の真骨頂を垣間見たような気がする。
そう、ナニワ・サリバン・ショーは大阪のイベンターやFM802のプロデューサーが発案したイベントなんだけど、はじめに清志郎ありきだからこそ出てきた企画だと思うのだ。こういうイベントのコンダクターとして、清志郎以上にハマる人は他に考えられない。今、こんな企画を担えるようなミュージシャンがいるだろうか?CHABO?浪花モードはCHABOにはちょっとキツイでしょう。ヤザワ?えー!全然タイプじゃないでしょう!ヒロト?うーん、R&R村ならともかく、これだけジャンルの広いミュージシャンとの共演はちょっと…。トータス松本?うーん、彼があと20年キャリアを積んだら、もしかしたら…。
こういう映像を見てしまうと、改めて忌野清志郎という旗頭を失った日本の音楽界の喪失感を感じてしまう。

最初、僕はこの映画の話しを聞いたとき、何でいまさら映画なんだよ?って思った。正直言うと、商業的な匂いを感じてちょっと嫌な気持ちになった。映画なんか作るなら、ナニワ・サリバン・ショーそのものをそっくり映像作品にしちゃえば良いじゃん。主役がいないのに勝手にいじくってんじゃねえよ!って思ってた。
でも、映画を見てこれはこれで大いにアリだと思ったな。むしろ、こういうコテコテな映像を付けた事により、ナニワ・サリバン・ショーの狙ってたノリが、ますます引き出されることになったんじゃないかなあ…。挿入されたミュージシャン達の演技も最高に楽しいものばかり。石やんとせっちゃんの蕎麦屋とか、似合い過ぎてるLeyonaのホステスぶり(笑)とか、もう最高!
いやあ~やられた!映画のスタッフ陣、よくわかってるなあ…。なんだかアメリカで作られた音楽レビュー作品を見ているような楽しさがあった。こういう愛のある企画はイイ。すごくイイと思う。

胸に迫ったのは、やっぱり清志郎と矢野顕子との絡み。僕はこの2人は精神的な恋人同士だと勝手に思っている。
ものすごく勝手な妄想をしちゃうと、矢野顕子は坂本龍一と出会う前に清志郎と出会っているべきだったのだ。もしそういうことになっていたら、2人のその後は大きく違っていたはず。でも、そういうことにはならないのもまた人生。どんなに金や名声を掴んでも手に入れられないものがあり、本当に大切な人に出会った時には何かが遅い。そういうことってあるでしょう、誰もが?(ちょっと問題発言かな…(苦笑))
だから、2人のステージは、時を経て初恋の相手だった同級生と再会した時のように初々しく、少し切ない。矢野顕子は、ライブ映像だけでなく、挿入された映画での演技も多かったんだけど、そこからは彼女が胸の奥に抱えている喪失感が滲み出ているような気がしたのは僕だけだろうか?

さて、CHABOはこの映画にどう関わっていたか。これはあえて書かないでおく。これから見る人に、先入観を持たずに見て欲しいから…。
でも、これだけは書かせて欲しい。CHABOのパートには製作側の愛をひしひしと感じた。これは演技ではなく、ほとんどCHABOの素だ。そして、CHABOの独白から繋がる「Oh! RADIO」には、この曲がやっと落ち着くところに落ち着いたような気持ちになった。

楽しい映画だった。うん、楽しい映画だったとあえて言いたい。
この映画の主役がもうここにはいないという現実は辛いし、そういうことをひしひしと感じてしまう瞬間もあるにはあるんだけれど、矢野顕子もCHABOも、そういうことは胸の奥にしまいみ、あえて楽しいナニワ・サリバン的な世界を表現したんだと思う。
ならば、僕らもそうやって生きていこうではないか。清志郎がいない喪失感は消えることはないが、それでも僕らの人生は続いていくのだ。だったら、上を向いて歩いていくだけ。涙がこぼれないように…。

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コメント

昨日に続いて連投です(w)。昨日のエアロに続いて今日はこの映画を見てきました、福岡で…。今年の6月に東京から山口に転勤になり、なかなかライブも映画も今までのようには行けてませんが、山口県では上映がないけど、これだけは絶対みなけりゃならないので、ちょうどエアロの福岡公演に併せて(エアロのセットリストは超ラッキーでしたが)
私は2004年のサリバンショー行きました。ちょうどWANTEDツアーの後で追っかけてた時期でした。しかしショーのあまりの長さにちょっと??と思って2006年は行かなかったんですよ。今から思えば2006だけは絶対行っておくべきだったなと後悔してます。チャボにアッコちゃん・・。実家が大阪なのでなんとでも出来たのに。なんて改めて映画を見て思いました。

◆MY R&Bさん
今思えば、このイベントライブは大阪だからこそ成り立った企画だったように思います。一度でも良かったから、やっぱり見ておくべきでした。
パンフでせっちゃんも言っていたように、清志郎は日本のロックの雛形を“発明”したんだってことがこの映画を見てるとよくわかりますよね。

この映画のことを知った時、かなり懐疑的にとらえてたんですが
HAGAさんの記事読んで、ものすごい観たくなりました。
あの日以降、出てくるモノに点が辛いHAGAさんがここまで言うんだから、きっと素晴らしいんだと思うから(笑)
でもウチの方、上映ないしDVDになるまで我慢かなぁ。

◆LA MOSCAさん
オレねえ、この映画はナニワ・サリバン・ショーの貴重な記録っていう側面もあるにはあるんだけど、残された者のこれからの生き方みたいなものを示唆してくれてるような気がしたんですよね。
ゲスト出演したミュージシャン達が、楽しそうにナニワ・サリバン的世界を演じるのを見て、こういうことが清志郎からもらったものを引き継いでいくってことなのかもしれないなあ、って気が付いたんです。
はっきり言って、最初に僕が思ってたような、ただライブをそのまま映画化したものではそういうことは思わなかったんじゃないかなあ…。

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