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2012年3月25日 (日)

【HOBO CONNECTION 2012 at下北沢】 / 3月25日(日)下北沢ラ.カーニャ

【HOBO CONNECTION 2012 at下北沢】
3月25日(日)下北沢ラ.カーニャ
出演:リクオ/福島康之(バンバンバザール)/六角精児/広沢タダシ/三代目魚武濱田成夫
開場18:30 開演19:00

HOBO CONNECTION 2012は、2010年に行われたイベント「Hobo Connection」の第2弾だ。Hobo Connectionはリクオのデビュー20周年を記念し、大阪、東京、福岡、名古屋で37人のミュージシャンとコラボ演奏を行うものだったのだが、これが今年CD+DVDでリリースされることになった。それに併せてHOBO CONNECTIONの2012年版が行われることになったのだ。
この日はその2日目。7時ちょっとすぎに始まったライブは、終わったのが10時半近く。間の休憩時間を抜いてもたっぷり3時間。でも、まったく飽きなかったなあ…。居心地のいいラ.カーニャの空気に包まれ、いい音楽をお腹いっぱい味わった満足感で身も心もいっぱいになった。

この日、リクオと共演したホーボー・ミュージシャンは、アナウンスされていた4人に加え、バンバンバザールのベース・黒川修、チェロの橋本修が飛び入り。ステージには上がらなかったけど、客席にはウルフルケイスケの姿もあった。出演者には、これまで僕がライブ体験した人もそうでない人もいたけれど、ライブを楽しむのにそんなことは関係なかった。日本における“ホーボー・ミュージック”の数々を、まるで組曲みたいに楽しめた夜だった。

三代目魚武濱田成夫を観るのは何度目だろう?MCで“朗読する時は朗読だけ。歌う時は唄うだけ”って言ってたけど、今日の彼は完全に歌モード。リクオの持ち歌「グレイハウンドバス」にはじまり、まるでトム・ウエイツみたいなダミ声を聞かせてくれた。オレ、この人に対しては、見方が以前とはだいぶ変わったなあ…。はっきり言って、前は彼のやってることがまったくわかんなかった(苦笑)。でも、今ならわかるぞ。彼の吐くコトバの裏にあるぶっきらぼうな優しさが…。この夜は、リクオのピアノにのって叫ぶように唄う彼の真っ直ぐさに、なんだかじーんとしてしまった。

広沢タダシはたぶん初見。すごく素敵なシンガーソングライターだ。ギターの弾き語りスタイルだとフォーク系かと思いきや、ちょっとブラジリアンなテイストでとてもリズミック。色彩感のあるギタリストだなあ…。

六角精児は驚き。この人、「相棒」の鑑識係をやってる例の俳優さんだ。なんでも、高校時代からラ.カーニャに通いつめていた音楽少年だったそうな。緊張気味だったというけれど、歌声を聴いてびっくり。高田渡の声・唄い方にそっくりだ!六角さん、そうとう渡さんを聴き込んだんだろうなあ…。

バンバンバザールの2人はさすが。自分たちの曲をやる時も、共演者のバックに入る時も、ほんとうにこれ以上ないぐらい歌に寄り添った演奏を聞かせてくれる。この夜の「君とコーヒー」は素敵だった。間奏で「梅田からナンバまで」をはじめとする先輩たちの名曲を散りばめ、さりげなく自分たちの立っている場所を教えてくれる。巧い!
それから、思いがけなくCHABOのカバー「ティーンエイジャー」がはじまった時はぐっときてしまった。まさか今夜これが聞けるとは…。しかも今日はリクオのピアノ付きだ。こういうのに46の男は弱いのだ…(苦笑)。

橋本歩ちゃんも相変わらず。バンバンと一緒の演奏では、まるでラグタイム・バンドでのフィドル奏者のようだった。実は彼女、ライブ前からリクオたちと客席にいたんだけど、大きな黒ぶちメガネをかけてたんで(コンタクトレンズを忘れたって言ってた(笑))、最初は全然彼女だとは気がつかなかったんだ。

この日のイベントにはたくさんの出演者がいたけれど、最初に書いたとおり、演奏された曲を誰が歌ったとか、自分がその人のファンかどうかなんてまったく関係なく楽しめるものだった。
早くから会場を待っていた人の話では、だいぶ長くリハーサルをやっていたというが、たぶんリクオと各出演者との間では、そんなに綿密な打ち合わせはなかったんじゃないのかなあ?百戦錬磨のつわものばかりのステージでは、細かい決まりごとや事前の段取りがないほうが、かえってのびのびふるまえるものなのかもしれない。加えて数々のミュージシャンが出演したラ.カーニャのなんともいえない居心地のよさ。そういったものがすべてに良い方向に向いていたと思う。ミュージシャン・観客が一体となり、最高に居心地のいいライブ空間が作り出されていた。
こんな場に身を置いているとつくづく思う。音楽はジャンルじゃないと…。結局は人なんだよな。その人らしさ、その人の持つ人間臭さがにじみ出た音楽に僕らは惹かれるんだと思う。

そして、リクオというミュージシャンには、そういう人たちを惹きつける魅力が確かにある。最近のリクオを見ていてつくづく思うのは、いい意味での円熟ぶりだ。もしかしたら、ミュージシャンにとっては、“円熟”という言葉を使われるのはあまり嬉しくないのかもしれないけど、今のリクオには、やっぱり円熟というコトバを使いたくなってしまうのだ。
HOBO CONNECTIONにあたって、リクオはキャリアを積み重ねる中で自分に求められるものが少しずつ変化してきているのを感じていると言っていた。そして、イベントの中での自分は「橋渡し」あるいは「媒体」としての役割を意識しているとも…。これは最近のリクオのライブを見ていて、僕自身もなんとなく感じていたことだった。もともとリクオは他者との共演が多いミュージシャンではあるのだが、以前のそれとは明らかに違うスタンスがHobo Connectionや最近の「海さくら」なんかからは感じられる。
ひと言で言っちゃうと、今のリクオがやっているコラボは“単なる共演”ではないのだ。その場にいない人たちの歌まで聞こえてきて、僕たちのはるかな旅路が浮き上がってくるライブ。この夜、僕たちは西岡恭蔵、高田渡、友部正人、有山じゅんじ、下田逸郎たちの姿を見た。リクオ自身がホーボー・ミュージシャンと呼ぶ人たちの系譜だ。僕らの生まれるずっと前から歌われてきたホーボー・ミュージックの道程に自分もいるということを、彼は誰よりも深く強く自覚しているんだと思う。

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