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2012年3月 7日 (水)

【映画】ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

Monosugo

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い EXTREMELY LOUD AND INCREDIBLY CLOSE 2012/アメリカ
監督:スティーヴン・ダルドリー
原作:ジョナサン・サフラン・フォア

沁みたなあ…。この映画は、9.11後のある家族の姿を描いたものではあるんだけど、僕は巨大な悲劇に出会ってしまった人たちの喪失と再生の物語だと受け止めた。
主人公は一人の少年。9.11同時多発テロで大好きだった父親を亡くした少年オスカーは、悲劇の日から1年経って父の部屋から、“鍵”を見つける。そして彼は、鍵とそれが入っていた封筒に記されていた「BLACK」の文字に、いなくなってしまった父からのメッセージが託されていると考え、ニューヨークの街中を彷徨って“BLACK”という名前を持った人たちを一人ひとり訪ねる気の遠くなるような作業を続けていくのだ。

最初オスカーは、頭は切れるんだけど人との接触を拒む、ちょっとひねくれた少年として描かれていた。僕も最初は“可愛くねえガキだなあ…”なんて、あんまり感情移入できずにいたんだけど(苦笑)、映画が進むにつれ、父親と繋がる糸を手繰ろうと必死な姿にだんだん胸を打たれていった。
周りの人々の彼に対するさりげない愛情も素晴らしい。亡くなった父親はトム・ハンクスが演じていたんだけど、彼が生前オスカーにいろいろな謎解きを仕掛けていたのも、オスカーの人と付き合いたがらない性格を治そうとしていたからだということがだんだんわかってくる。
そして、言葉を話せない間借人のおじいちゃんが鍵を巡る冒険に付き合ってくれるようになった辺りから、オスカーは少しずつ変わり始めていくのだ。台詞を一切しゃべらない役を演じたマックス・フォン・シドーの演技のなんと素晴らしかったことか。訥々として、ちょっと悲しくて…。なんか、亡くなった自分の祖父を思い出したなあ。

映画は最後の最後にどんでん返しが待っていた。鍵の真相も、オスカーや観客の多くが望んでいたものとは違うものだったかも。人によっては、この結末をどうにもやりきれないと思うだろう。でも、僕はこれはハッピーエンドだと思いたいのだ。鍵の謎がどうであれ、オスカーはこの冒険を通して、かつて父親が願っていたような男の子への一歩を踏み出したに違いないのだから…。

この映画を通し、僕は9.11という悲劇がニューヨーカーに如何に深い悲しみをもたらしたのかを改めて知ったような気がした。鍵の謎を解くためにオスカーが会った人たちは、それぞれがそれぞれの場所で傷付いていた。そして、彼らはオスカーの訪問で、明らかに癒されていたのではないだろうか。
思い返せば、9.11が起きた時、遠く離れた日本ではテロリストへのアメリカ人の怒りが誇張された形で伝わったり、極端にパトリオットな方向に突っ走る人々の姿が報道されたりした。でも、大方の市井の人たちの胸のうちは、そんな荒ぶった感じではなかったと思うのだ。母親を演じるサンドラ・ブロックが、何故父親が理不尽な死を迎えなければならなかったのかと泣き喚く息子に向かって、“どうしようもなかったことなのよ…”と諭す場面があったが、人が圧倒的な悲しみに出会ってそれを乗り越えようとする時、当事者にとっては、怒りよりもまずなんとか心の平静を取り戻そうとするものなのかもしれないと思う。

もうひとつ、ここで描かれた親の子に対する愛の形にも深く心を動かされた。
うん、子を持つ人ならこの結末には感動せずにはいられないと思う。母親を演じるサンドラ・ブロックの演技は沁みたなあ…。いやあ~彼女、いつの間にこんな慈愛に満ちた演技のできる女優さんになったんだろう。本当に素晴らしかった。そして、ここではじめてこの映画の変わった邦題の意味にも気付かされることになるのである。
そして、トム・ハンクスの演じたオスカーの父親。2人の男の子の父親である僕に言わせれば、悲劇の死を迎えはしたけれど、死んだ後もこれだけ息子に愛されるなんて、彼はある意味幸せだと思う。まあ、それは生前ほんとうに息子を気にかけ、息子との貴重な時間をたくさん持っていたからなんだけどね。僕もこんな風に大きな器で子どもに接したいとは思っているんだけど、なかなかなあ…(苦笑)。

この映画、日本人にとっては、どうしたって3.11後の自分たちの姿を重ねないわけにはいかないだろう。冒頭にも書いたけど、僕もこの映画を9.11とは限定せず、巨大な悲劇に出会ってしまった人たちの喪失と再生の物語として受け止めた。
オスカーが願っていたものとは違う鍵の真実に出会っても成長の礎を見つけられたように、彼の冒険を通して母親も悲しみを乗り越えて息子との新しい一歩が踏み出せたように、オスカーの小さな冒険が多くの人たちの気持ちを癒したように、人はどんなに傷付いてももう一度やり直すことができるのだ。僕らは何度でも何度でも生まれ変われる。そんなことをこの映画は教えてくれてるんだと思う。

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