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2012年3月21日 (水)

ブラック・アンド・ホワイト・アメリカ / レニー・クラヴィッツ

Bw これは去年の秋に出たアルバムなんだけど、いまだに良く聴いている。レニー・クラヴィッツはデビューした時から大好きなんだけど、これは全キャリアの中でも3本の指に入る傑作なんじゃないだろうか?

レニー・クラヴィッツは1964年生まれだから、歳は僕と1つしか違わない。だからというわけでもないんだけど、この人の音楽嗜好にはとても共感できるものを感じるのだ。ひと言で言っちゃうと、この人は“黒人のロックおたく”(笑)。1stアルバムをはじめて聴いた時は、メロディーといいサウンドといい、まるで「ジョンの魂」みたいだと思ったことを憶えている。デジタル全盛だった90年代において、そのオールドなサウンドは驚きだった。その後、いろんなバンドがわざとローファイな音で録ったアルバムを出すようになったけど、そのきっかけとしてレニーの1stアルバムの影響はとても大きいように思う。あれで、“あ、デジタルな時代でもこんなことやっちゃっていいんだ!”と誰もが気付いたんじゃないのかなあ?
余談だけど、斉藤和義がアルバムで一人多重録音をやりはじめた時も、初期のレニーのアルバムは良いお手本になったに違いない。

それと、僕がこの人を見てて面白いと思うのは、ブラック・ミュージックとの距離のとり方だ。まあ、彼自身が黒人だから、どんな音楽をやろうとブラック・ミュージックっちゃあブラック・ミュージックなんだけど、そのスタンスは、一昔前の黒人ミュージシャンとは明らかに違うと感じる。
たとえば、レニーを21世紀のジミ・ヘンドリックスと言う人がいるけれど、ジミヘンと比べればレニーの音はかなり白っぽいと僕は思う。特にブルース的なタッチはほとんど感じられない。それは彼が青春時代を送った80年代は、ジミヘンが活躍した時代と比べれば、黒人の社会的地位がかなり向上したからなんじゃないだろうか?黒人社会と白人社会が完全に分断されていた時代は、ラジオでかかる音楽も黒人専用局と白人専用曲では違っていたというが、レニーの頃はそんな偏見はなくなっていたはず。たぶんレニーの世代の黒人の若者は、ジェームス・ブラウンみたいな自分のルーツ・ミュージックと、レッド・ツェッペリンやエアロスミスみたいな白人の奏でるロックを同時並行で聴いて育ったんだと思う。
そういう音楽の聴き方は、環境の違いこそあれ、極東で洋楽に目覚めていた僕らの聴き方と、偶然にもなんとなく似ているように思う。レニー・クラヴィッツの3枚目のアルバムあたりまでの異常な聴き易さは、このあたりに理由があるんじゃないかなあ、と僕は思っている。

ただ、3枚目までがあまりにも凄すぎて、正直言って最近のレニーはちょっとイマイチだと感じていたことも確かだ。よくよく聞くといい曲もあるんだけど、アルバム一枚通すとやたら暗かったり散漫だったり…。器用な人だから、そこそこのモノは作り続けているんだけど、デビュー時を知っている者としては、な~んか地味になっちゃったなあってのが最近の印象だった。

ところが、これはどうだ!アルバムタイトルからして、自分の立ち位置をもう一度確認するような覚悟を感じるし、収められた曲もそこそこどころか、がっぷり四つに組んでエイヤ!と力ワザでこしらえたようなモノばかりだ。最近のPVを見ると髪まで短くしちゃってて、レニー、まるでアスリートみたいになっちゃってるぞ(笑)。なんか、気合の入り方がここ2,3作とは全然違う。このアルバムからレコード会社を移籍したらしいけど、環境を変えたのが良かったのかなあ?

とにかく、このアルバムは曲がいい。今までもいい曲はいっぱいあったけど、よくよく考えてみると、この人の曲はレッド・ツェッペリンを髣髴させるようなリフが印象的なハードロックか、フィラデルフィアソウルを今風にブレンドしたR&Bかに分断されてるようなタッチがあった。それが、このアルバムでは一曲の中に両方の要素が巧く溶け合い、レニーにしかできない独特のものになっていると思う。
サウンドヘのこだわりも相変わらず。ヴィンテージなサウンドをデジタルに響かせるワザの使い手として、この人の右に出る者はいないだろう。ギターソロなんかロックファンなら絶対聞き流せない、こだわりの仕上がりになっていて、さすがロックおたくのやることは違うぜ!(笑)
とにかく、これは捨て曲無しの最強アルバム。全部通して聴くと、また最初から聴き直したくなるアルバムなんて、21世紀に入ってからはなかなかないと思う。

なんとレニーさん、4月には14年ぶりに来日公演までやってしまうのだ!Youtubeで検索したら最近のレニーのライブが出てきた。ライブの音は、アルバムとはまた違ったハイパーなサウンド。特に、今回のツアーから加わった女性ベーシストはタダ者ではない!
会場は東京ドームシティホール。あんな小さな会場でこんなド迫力サウンドが聴けるなんて、もう楽しみで楽しみでしょうがない!早く来い来い、レニーちゃん!(笑)

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コメント

こんばんわ。
レニーの初来日。NHKホールに行きました。
いまかいまかと開演を待っていると、出てきたのは、
なんと清志郎!!
「はじめて聞いたとき、ぶっとんだぜぇ!」なんて言って、
レニーを呼び込みました。

懐かしい、思い出です。

◆Rakuさん
そうそう、清志郎はだいぶ早い時期からレニーを押してましたよね。何を隠そう、僕も“清志郎がそんなにイイっていうなら聴いてみよう”と思ってハマったクチです(苦笑)。
そういえば、レニーと同じぐらいの時期に出てきた人で、テレンス・トレント・ダービーっていましたよね?レニーとイメージが重なるし、同じぐらい好きだったんだけど、最近全然噂を聞きません。どうしちゃったのかなあ?

テレンス・トレント・ダービー……いましたね、確かに。
ボクはあまり惹かれなかったので、フォローもしてませんでしたが。
確かに、どうしちゃったんでしょう?

でも、意外なところで出会うこともあるかもしれませんね。
前にディランを見に行ったとき、
ギターがチャーリー・セクストンで驚いたみたいに(苦笑)。

◆Rakuさん
うん、チャーリー・セクストンがディランのバックにいたのは僕もかなり驚きました。昔は日本でも「チャリ坊」なんて言われたり(笑)、氷室京介のアルバムでギター弾いたりして、かなり人気あったんですよね。それがあんな渋いギター弾いてるんだもんなあ…。ああいう歳のとり方はカッコいいと思います!

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