HOBO CONNECTION 2012 at 渋谷 / 2012年5月8日(火) 渋谷・CLUB QUATTRO
【HOBO CONNECTION 2012 at 渋谷】渋谷・CLUB QUATTRO
出演:リクオ/バンバンバザール/友部正人/山口洋(HEATWAVE)/三宅伸治/羊毛とおはな/朝倉真司(per.)/キヨサク(MONGOL800)
開場18:00 開演19:00
ホーボー・ミュージックっていう概念は、この日集まった音楽ファンの間では、もう完全に認識されたように思う。
この日、ステージに立ったのは、決してメジャーとは言い難い人達だったかもしれない。でも、メディアへの露出とかチャートの順位なんかとは関係なく、日本中を旅して各地の音楽ファンを楽しませているミュージシャンは大勢いる。この日集まったのは、そんな現場至上主義を貫いている人たちばかりだった。そもそも、いい音楽の前にはメジャーとかマイナーとかは関係ないのだ。ジャンルですら必要ない。あるのはただGOOD MUSICのみだ。それもとびきりぐっとくるヤツ…。
リクオは、そんな音楽を全部ひっくるめてホーボー・ミュージックと呼んだ。彼はそのキャリアを積むにつれ、自分もまた永遠に旅を続けるホーボーな音楽人であることを自覚するようになったのだろう。そして、ホーボー・コネクションというイベントをとおし、彼はそんなホーボー・ミュージシャンたちや、彼らの音楽を愛する人たちを自らが触媒となって繋ごうと考えたんだろうな。
僕は、このライブを見ていて、“円熟”なんてことをちょっと考えた。円熟なんて言葉はロック的じゃないし、もしかしたらリクオもあんまり心地好く思わないかもしれない。でも、僕はリクオを見ていて“いい歳のとり方をしているなあ~”なんてちょっと思ったのだ。
僕とリクオはほぼ同世代。お互い40代代半ばという年齢に差し掛かった。いくら若いつもりでいても、世間は誰もが僕らを中堅として見ている。僕らはもはや嫌でも中堅としての自分を考えないわけにはいかなくなった。僕とリクオでは就いている仕事は全然違う。けど、中堅としての自分をどう捉えていくか、自分の仕事を(纏めるわけじゃないけど)ある程度のキャリアを携えた者としてどう捉えていくか、なんてことを考えてしまうという点では同じだと思うのだ。上の世代と若者との間を繋ぐ。伝統と新しいものとの間を繋ぐ。自分の仕事と社会とを繋ぐ…。まだできることは小さいけど、若いときには考えることすらできなかったことが、なんとなく見え始めた。そんな意識があればこそ、リクオはミュージシャンとして人と人とを“繋ぐ”ことを始めたんじゃないかなあ~と僕は思ったのだ。
このイベントでリクオはまず過去と未来を繋いだ。
この日はホーボー・ミュージックをやり続けてきた偉大な先人として友部正人が登場。そして、友部さんからバトンを受け取ったリクオ世代のミュージシャンからは、バンバンバザール、山口洋、三宅伸治、朝倉真司が、これからバトンを渡す世代として、羊毛とおはな、キヨサクが出た。
このイベントの素敵なところは、それぞれの出演者が自分たちだけでプレイするだけじゃなく、他のミュージシャンとセッションする場面が必ず用意されていたことだと思う。彼らがただ同じ場を共有するだけでも意味はあると思うけど、お互いに音を交えることでその繋がりはより明確になる。
客席で見ていた僕にとっても、たとえば羊毛とおはなやキヨサクは初見の人たちだけど、まぎれもなくホーボー・ミュージックの系譜に属する人たちなんだってことがはっきりとわかった。
キヨサクはレゲエタッチで歌った、サッチモの「What a Wonderful World」が素晴らしかったなあ~。なんつうか、その根付きぶりに圧倒されてしまった。キヨサク、もしかしたら君の身体にはジャマイカの血が流れてるんじゃないのか?(笑)。そのぐらい根付いていたのだ、彼は。僕ら世代だとここまでレゲエが染み込んでいる人はなかなかいない。そういった意味では、彼は新しい世代のホーボー・ミュージシャンなのだと思う。
もう一つ、リクオはこっちの世界とあっちの世界も繋いだ。
三宅伸ちゃんの歌には、今はいなくなってしまったあの人の影が常に寄り添っている。彼はこの悲しみを一生引き受けていくことを覚悟しているのだろう。この日演奏された「生きよう」にはぐっときた。清志郎がいなくなって、3.11を経験した僕は、心の何処かで“生かされてしまった”という感覚を持ってしまっている。それでも僕らは生きなければならないのだ。自分だけじゃなく、誰かのためにも…。そんなことを思った。この曲を絶対一緒にやりたいと言ってステージに上がった山口洋の心意気にもぐっときた。
リクオとは「胸が痛いよ」での共演もあった。この日のリクオのボーカルはいつも以上にエモーショナルだったと思う。伸ちゃんの泣きのギターに煽られてかなり感情が昂ぶったのかも。思えば、先月の下北沢ではギターパンダとこの曲をやったっけ…。今はいない人への近しかった人ならではの鎮魂…。でも、主がいなくても歌は生き続けるのだ。
バンバンバザールの歌には高田渡さんの影があるし、この日は西岡恭蔵さんも遊びに来ていたような気がする。こうやって、時空を超えて音楽は鳴り続けるのだ。
友部正人さんの存在感は素晴らしかった。なんと美しい一徹ぶりだろう…。僕にとって、友部さんを見るのは久しぶりなんだけど、あの声は本当に唯一無二だなあ…。あの声だけですぅーっと胸に音楽が降りてくる。なんか、友部さんの歌を聴いてると、僕は童話を読んでいるような気持ちになってしまうのだ。何度も共演している三宅伸ちゃんとの「はじめ僕は独りだった」、リクオとの共作「カルバドスの林檎」には、まるで宮沢賢治のようなロマンを感じる。
そして、嬉しくなってしまうのは、友部さんが未だいい意味での“軽さ”を持ち続けていること。飛び跳ねながら「たたえる歌」を歌う友部さんの姿は、冗談抜きに伸ちゃんやリクオより若々しく見えたぐらい。こんなふうに歳を経られたらいいなあ、なんて僕は思う。友部さん、いまだにフルマラソン走ってて、僕より全然速いんだからねえ…(苦笑)。
最後の最後、全員で歌われた友部さんバージョンの「アイ・シャル・ビー・リリースト」の美しさったらなかった。観客も自然と歌詞を口ずさみ、素晴らしい雰囲気の中で幕を閉じた3時間半。
平日の7時から渋谷でライブってのは、なかなか勤め人には厳しい時間帯だけど、それだけにこの日クアトロに集まったのは、本当に音楽が大好きな大人ばかりだったはず。そんな人たちも、一人残らず満足できた夜だったんじゃないかなあ…。
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