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2012年8月 2日 (木)

【映画】へルタースケルター

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「ヘルタースケルター」は、写真家・蜷川実花が映画監督を務めて2本目の作品となる。これは公開されたら絶対映画館で観ようと思っていた。1作目の「さくらん」でもそうだったように、映画全体で写真と同じようなドギツイ色合いが溢れるであろうことは間違いない。それはDVDになってから、うちのチンケなディスプレイで見たってダメだと思ったのだ。プラス沢尻エリカが“脱ぐ”ので、それを大画面で観たかった気持ちもちょっとあった(笑)。

僕が観たのは新宿ピカデリー。なんとなく、この映画は新宿とか渋谷とか池袋とか、そういう猥雑な町の綺麗めなハコで観るのが相応しいような気がして…。
まず驚いたのは、行ったのが公開からけっこう日が経った平日の夜だったにもかかわらず、けっこうな数のお客さんが入っていたこと。しかも圧倒的に20代前半ぐらいの若い女の子が多かったのだ。なんとなく僕は、90年代の岡崎京子を読んでいたような層が観に行ってんのかな、と思っていたんで、ティーンの女の子たちが大挙して映画館に押し寄せているという事実は驚きだった。彼女らが原作を読んでいるとはとても思えず、これは間違いなく、この映画で芸能界への復活を賭けている沢尻エリカ見たさなんだろう。なんだかんだ言われながらも、これだけの観客を動員してしまうエリカ様って、やっぱ凄いんですねえ…。今頃そんなこと言ってるワタシも馬鹿みたいですが(苦笑)。

賛否両論あるみたいだけど、僕としてはこの映画、とても面白かった。蜷川実花の人口着色料的なトーンにも、役者陣の演技にも、エリカ様のヌードにも十分に満足。「見たいものを見せてあげる」、まさに映画コピーそのまんまの作りだ。
ただ、これは岡崎京子の原作漫画とは別モノと考えたいなあ、オレは。だいぶ前に読んだから細かいところは忘れてしまったけど、原作の記憶と照らし合わせると、映画は若干オリジナルと違っていると感じたところも少なくなかった。

一番違うと思ったのは、主人公りりこの壊れ方だ。原作だとこのくだりはもっと怖く、もっと哀しく、もっと凄まじかった。だけど、沢尻エリカ演じるりりこには、それがあまり感じられなかった。誰もがそう思って観ただろうと思うけど、僕も最初は映画の主人公・りりこと現実の沢尻エリカとを同一視して観ていた。美しくあることが大衆の耳目を集める唯一の手段だと信じ、ひたすら整形手術を重ねていくりりこと、誰もが美人だと認めているのに、私生活の破綻ぶりやら記者会見でのキレっぷりやら、スキャンダラスな側面ばかりメディアから書き立てられるエリカ様とには、多くの共通項がある。だからこそ、監督は沢尻エリカを主役に抜擢したんだろうし、本人もそれを良くわかって撮影に入ったはずだ。
ところが、僕は最終的には現実のエリカ様がりりこに勝っちゃったような気がするのだ。沢尻エリカは僕が思っていたよりずっと巧い女優だった。でも、巧すぎるが故にどんなに堕ちようともなんとなく余裕みたいなものが漂ってしまう。濡れ場を演じててもな~んか全然エロくない…。うーん、なんで?おっぱいもお尻も全開なのに…(苦笑)。沢尻エリカってなんかビッチっぽいイメージがあるけど、実際はそんなにセックスなんか好きじゃないんじゃないか…。そんなことまで考えてしまった。エリカ様は美しく、間違いなくスクリーン映えする女優。その現実の存在感の強さが、りりこの危うさに勝っちゃってるのだ。

沢尻エリカってのは、ほんとに不思議な存在だと改めて思った。伝え聞く噂からは、なんて傲慢な女なんだろうと思ってしまうけど、大きなスクリーンに出るとものすごく美しくて打ちのめされてしまう。でも、あんまり美しいから、どんなに壊れていっても全然崩れた感じにならない。僕なんか、途中から自分のS的部分に目覚めさせられ、心の中で“もっと壊れろ、もっと崩れろ!”と念じていたぐらい(苦笑)。でも、泣くと本当に可愛くて可哀想になっちゃって、気が付くといつの間にかりりこの味方になってしまっている。で、後でまんまと気が付くのだ。原作と違ってようとなんだろうと、エリカ様の演技はすごかったと。結局、りりこ役はエリカ様以外には考えられなかったなあと…。あれ?オレ、ひょっとして蜷川さんの術中にまんまとハマってる?(苦笑)

エリカ様と他のキャストとの主要な絡みがあるのは、マネージャー役の寺島しのぶと社長役の桃井かおり、それと、検事役の大森南朋の3人か。
寺島しのぶと桃井かおりはもう流石としか言いようがない。寺島はいつもよりずっと地味な役回りで、大女優が何もこんな役引き受けなくたっていいんじゃないの?と思って観てたんだけど、最後の最後に大逆転。水原希子演じる次世代モデルに対して見せるラスト近くの表情、あれは彼女にしかできないなあ。恐れ入りやした。
桃井かおりはいつもの桃井かおりなんだけど、そのハマり方が半端じゃなかった。思い出したんだけど、この人、若い頃にCMで「世の中バカが多くて疲れません?」って言ってバッシングされてなかったっけ?(あれはコピーライターが書いたセリフで、桃井かおりがそう思ってたわけじゃないだろうに…)あの一件って、考えてみたらエリカ様の「別に…」事件と似てなくもない。この時期に桃井かおりと出会ったことは、沢尻エリカにとってもすごく良かったんじゃないかと僕は思うなあ。

大森南朋に関しては大いに違和感を持った。なんだ、この薄っぺらさ(苦笑)。こんなポエムみたいことを言う検事がいるかっつうの!タイガー・リリーなんて台詞が飛び出した時点で吹き出しそうになっちゃったよ、悪いけど(笑)。まあ、これは別に役者のせいではないんだけどね。漫画だとああいう台詞があっても違和感ないけど、それを映画に移植しちゃうと途端に陳腐になる典型だな、これは。
実は、検事の描き方そのものも原作との相違を感じた点の一つなのだ。漫画だと、なぜ彼が整形外科を執拗に追いかけているのかがわかるような描き方をしてあったと記憶してるんだけど、映画ではそれは全くなかった。もうちょっと何とかして欲しかったなあ、この役柄だけは。

まあ、いろいろ言ったけど、これが映画として面白いのは間違いない。原作と合ってようとなかろうと、そもそもそれ自体90年代半ばに描かれたもので、2013年の今に実写化するなら、ある程度変えなきゃいけなかった点もあったんだろう。
というより、やっぱりこれはエリカ様だけ観てればいい映画なのでは?(笑)恐らく、蜷川実花もそう思って撮ったんだろうし、彼女はそれに十分応えられるだけの逸材だ。僕は沢尻エリカがこれから女優としてどんなキャリアを積んでいって、やがて「ヘルタースケルター」が、彼女の中でどんな位置づけになっていくのか、とても興味がある。少なくとも、こういうキャラの女優は日本には彼女以外存在しない。それだけは確かだ。

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