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2012年9月21日 (金)

【本】戦後史の正体 / 孫崎 享 (著)

S今、巷で話題の本です。アマゾンのレビュー数も多いし、この手の本としては異例ともいえる売り上げを記録しているそうな。

こういう本を読むときにまず僕が気にするのは、著者がどんな経歴の人で、書かれている内容にどれぐらい信憑性があるのかということだ。だいたいの場合、バックボーンに思想的な偏りがある人は、やや筆が走りすぎる傾向があり、結果として著者自身の憶測が入り込みやすいように思う。その点では、この本の著者・孫崎享氏は元外務省国際情報局の局長で、在イラク・在イラン大使も務めたことがあるという人物。つまり、外交上の機密文書を直接読める立場にあった人が書いたものということになり、信憑性はかなり高いと僕は思った。

本の内容は、終戦後すぐの時代から日本の歴代内閣を振り返り、その間の国際関係上の主な出来事を、日本とアメリカとの関係を軸に見直していくというものだ。吉田茂の頃から、最近の民主党が政権党に就いた内閣までつぶさにその足跡を辿ってあるから、なかなか読み応えのあるぶ厚い本なんだけど、高校生にも分かるように書いたという文章はとても読み易く、寝る間も惜しんで夢中で読み込んでしまった。

今の高校生はどうかわからないが、僕らの時代の日本史の授業は、戦後史にはほとんど触れずに終わってしまった。だから、」戦後政治の流れについて、僕はこの歳になってもよくわかっていない部分が多いにことを自覚している。それが、日本の戦後史を読み説くキーワードとして、著者のいう「対米従属」か「自主独立」かという視点を取り入れると、頭の中でバラバラになっていた政党の変遷や外交・軍事、それに産業振興に関する諸々の出来事の意味合いが、とてもクリアに理解できていくのを感じた。

本を読むと印象ががらっと変わる首相も多い。僕的には、岸信介や田中角栄、それに鳩山由紀夫なんかの見方がかなり変わってしまった。一番驚いたのは、渋谷陽一にそっくりな(笑)、岸信介。この人は安保改定闘争時の首相だった印象があるせいか、ずっとアメリカ従属の人だったと信じ込んでいたんだけど、実は戦後敗戦国として結ばされた条約の対米従属的な色合いを払拭しようと、かなり力を重ねていたらしい。
まあ、歴史ってのは、最低でも100年経たないとほんとのことは見えてこないって言いますからね。日本の場合は、戦争に負け、アメリカの統治下から戦後が始まったわけで、真実を知ることイコール自虐的近代史になる怖さもあり、余計に真実を見ようとしてこなかった部分もあったんじゃないだろうか。なんとなく、こういうことを真剣に調べていくのはタブーになっちゃってるような空気があったのを感じる。

だが、そういったムードが、このところちょっと変わってきたように僕は感じるのだ。他ならぬ自分自身がそうですから…。
個人的な契機は、やはり3.11だった。故郷を襲った原発事故から受けたショックは大きく、同時に自分がこの方面に関して、いかに無知であったかに気が付いて愕然とした。そして、遅ればせながらも電力業界や原子力発電に関するさまざまな本をむさぼるように読み漁ったのだ。その結果、ぼんやり思ったのは、そもそもこんな狭い国土に常軌を逸した数の原発が出来てしまったのは、結局、戦後の政治や産業復興のやり方に問題があったんじゃないかということだったのだ。
きっと、僕以外にもそんな人が多いんだと思う。それがこの本の驚異的な販売数に結びついたのではないだろうか。

正直言って、こういう本をブログで紹介するのはどうなのかっていう気持ちもないではない。だが、同時に3.11以降の世界で生きる時、もはやこういうことから目を逸らすことはできないように思うのだ。僕は音楽を聴いて生きている。音楽がなければ生きていけない。これからも、そんな自分であり続けたい。そんな暮らしを続けていくためには、こんな時代なんだから、生臭い政治や社会のあり方にも関心を持たざるを得ないのではないか。僕の思いは、結局はそういうところに収束されていってしまうのだ。

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