近頃おいらはツェッペリン
今年の夏はレッド・ツェッペリンに異常にハマっちゃってる。何が楽しくて、クソ暑い季節にこんな暑さ倍増するような音楽を聴いてんのかと自分でも思うんだけど、ハマっちゃったものはしょうがないよなあ(苦笑)。
そもそも、僕はロックに目覚めた中坊時代まで遡っても、ツェッペリンにはそれほど夢中になった時期はないのだ。もちろん、一ロックファンとして彼らの代表曲は一応知ってるし、73年のライブ盤なんかは高校時代かなりの頻度で聴いていた。だけど、長い間僕の中でのツェッペリンの位置づけは、ローリング・ストーンズやビートルズなんかよりもワンランク下だったんだよなあ~。
ロック思春期の頃、僕がツェッペリンに対して抱いていた印象は“とにもかくにも大袈裟なバンド”(笑)。まず、曲が長いじゃん(笑)。ストーンズなら3分で済ませるところを、ツェッペリンは15分もかけて演奏する。その大袈裟さが当時はとてもかったるく思えた。おまけに音は馬鹿でかいし、ボーカルは女みたいな金切声(苦笑)。R&R的スィング感にも乏しいし、やたら長いギターソロをとるのもパンクやニューウェイヴ全盛の耳には違和感があった。ルックスも髪が長くてなんだか中世のインチキ貴族みたいだ(笑)。やることなすことなんでこんなに大袈裟なんだろうと当時は思っていた。でも僕だけじゃなく、80年代当時のロックファンはだいたいそんな感じだったんじゃないかと思う。はっきり言うと、80年代にレッド・ツェッペリンを聴くことはアナクロだったのだ。
そんな世間の評価が変わってきたのは、90年代に入ってフー・ファイターズとかレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンとか、当時の若手バンドがツェッペリンに対してのリスペクトを口にし始めてから。それをきっかけに世界規模でツェッペリンの再評価が起き、過去の音源や映像集のリリースによって、日本でも再びツェッペリン人気が盛り上がってきた。
僕自身もツェッペリンの見方が変わり始めたのは、この時期からだ。きっかけは「レッド・ツェッペリンDVD」。これは再評価が高まった時期に満を持して出されたお宝映像満載のセット。特に初期のライブをまるまる収録したパートはもの凄い。これを観ると、ジョン・ボーナムというドラマーがいかにとんでもない奴だったかが良くわかる。もう、ライブが始まる前に軽くセットをダダダダン!って叩くだけで空気が変わっちゃうのだ。で、いざ曲が始まると、4人のメンバーが殴り合うように音をぶつけ合い、バンド全体がぐんぐんテンションを高めていって、突然ばたっ!と終る。もう、唖然。とんでもないものを観てしまったという感じだ。もはや、曲がどうとかアレンジがどうとかいうレベルじゃない。4人のミュージシャンが、今できる最高のことを全力でやっている感じがビンビンに伝わってくる。この本気度、ガチなミュージシャンシップが本当に素晴らしい。これだけ集中度の高い演奏をするバンドは、2012年の今でも今古今東西問わずあまりいないと僕は思う。
で、今年の夏は改めてこれまで聴いてなかったツェッペリンのアルバムを買ってみた。そしたら、スタジオでも凄いことやってんだよね、彼ら!これまで僕は、レッド・ツェッペリンっていうバンドは、クリエイターというよりもどちらかというとプレイヤー的な色の濃いミュージシャンの集合体だと思っていた。だけど、アルバムをじっくり聴くと、実はスタジオでもいろいろ試行錯誤しながら彼らなりの音楽を極めようとしていたことが良くわかる。
レッドツェッペリンの残したスタジオアルバムは、全部で9枚。それぞれに毛色が違うんだけど、そのどれもがレッド・ツェッペリンがやっているとすぐにわかるような仕上がりになっているのだ。このバンドがブルースと英国トラッドをベースにしていることはすぐにわかるんだけど、手がけている音楽はファンクやらレゲエやら意外に幅広い。でもツェッペリンに関しては、実はどんなジャンルを演っているかはあまり関係ないような気がするんだよな、オレは。
耳をつんざくほどのデカくて歪んだ音。変拍子の多様。止まったり始めたりを繰り返しながら続いていく独特のビート。パワー全開で押しまくるボーカル。凝った音色のギタートーン。一見、ピッチがずれてるんじゃないかと思わせるようなヘンなメロディー。どんなジャンルをやっても、ツェッペリンの曲はこれらのどれかにだいたい当てはまる。なんつうか、レッド・ツェッペリンの音楽には強烈な記名性があるのだ。
アルバムを聴いてるうち、僕はツェッペリンとストーンズの最大の違いに気が付いた。
僕らは後追い世代だから、ロックのスーパーグループっていう範疇で、ストーンズ、ビートルズ、ツェッペリン、ピンクフロイドなんかを一絡げにして語りがちなんだけど、実はレッド・ツェッペリンはストーンズやビートルズなんかよりもかなり後からでてきたバンドなんだよね。60年代初期から活躍するストーンズやフーがロックの第一世代だとすると、68年デビューのツェッペリンやキングクリムゾンなんかはその次の世代にはっきり色分けされる。この時期はロックが目に見えてぐんぐん成長していった時代だから、8年の月日はかなりデカいと僕は思うよ。
そのせいか、ツェッペリンのブルースに対するアプローチはストーンズなんかとは明らかに違う。ブルースをいかにオリジナルに忠実に再現できるかを追及しているストーンズに対し、ツェッペリンはブルースを自分流に組み立て直し、如何にロックとして成立させられるかを考えながら演奏しているような感じがするのだ。
常軌を逸したデカい音も、やたら大袈裟なギターソロも、結局は「ツェッペリン印のロック」というスタンプを押すために必要なフレイバーだったのだと僕は思う。後にツェッペリンは「ハードロックの元祖」と呼ばれるようになるけど、当人達はそんなことあんまし思ってなかったと思うんだよね。4人のロック料理人たちが、集めてきた食材を存分に下ごしらえし、いっぺんに鍋にぶち込んで煮込んだらこんなのが出来ちゃいました~みたいな感じだったんじゃないのかねえ…(笑)。
言い方を変えると、レッド・ツェッペリンは70年代に初期のストーンズやフーと同じやり方をしたって、誰も注目してくれないということに早い段階から気が付いていたんじゃないだろうか。とにかく“新しい音”をやらなきゃ、と。活動期間は短かったけど、その間は次世代ロックバンドとして、常に新しいロックを作って先に進まなきゃ!と自分たちにプレッシャーをかけ続けていたんじゃないかと思う。その結果が、あの「ツェッペリン印の変態ロック」だったのだ。そう、ロック的な目で見ると、ツェッペリンの音はとても変態性が高い(笑)。だからクセになるんだけどね。
うーん、やっぱツェッペリンに関してはなかなか語り尽くせないなあ。
実はもっと書きたいことが山ほどある。この続きは近いうちに…。
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ハガさんが、ツェッペリンに対して語ってくれて嬉しいっす。
ストーンズ大好きで、ZEPPのコピーバンドしてたオイラにとっても
ZEPPのブルースに対するアプローチは、この素材をいかに俺達の味に
料理するかだと思います。初期の「ユーショックミー」とか、特に
後期の「死にかけて」なんかは、よくまぁ、ここまでコッテリに仕上げたな!と感動します。
最近、ニール・ヤングクレイジーホースが、ルーツのカバーアルバムを出しましたが、ああいう枯れた味わいとは、また違ったギトギトのカバーで面白いですよね。
投稿: おぎょ | 2012年9月 8日 (土) 00:21
ツェッペリンというと80年ごろのRCライブのチャボのオープニングMCを思い出します。
「こんばんわ!レッドツェッペリンです、久々の来日です」なんてやってましたっけ。
それはさておき、ワタシは結構リアルタイムで聴いていて、ストーンズよりも先にハマってましたね。(76-80年ごろ)80年前後にツェッペリン、RCに多大な影響を受けると、40代後半の今はエレカシだけが頼りです(w)
投稿: My R&B | 2012年9月 8日 (土) 22:43
◆おぎょさん
いやあ~ツェッペリンに関しては、オレ、この歳になってようやく良さがわかってきました(苦笑)。
誤解を恐れずに言えば、ZEPPってかなりの変態バンドだと思うんですよ(笑)。変態な曲を大音量でガーッとやっちゃう、野獣っぷりがたまりません。レッド・ツェッペリンは大音量で聴かないと、その良さはなかなかわからないですね。
投稿: Y.HAGA | 2012年9月11日 (火) 11:36
◆My R&Bさん
>「こんばんわ!レッドツェッペリンです、久々の来日です」なんてやってましたっけ。
これ、今でも時々やってますよ、CHABO(笑)。あと、渋谷陽一の話をした後に「オマエはレッド・ツェッペリンだけ聴いてろっ!」って怒っちゃうのもありました(笑)。
エレカシは確かにZEPPっぽいかも。奥田民夫とかもそうかな?
投稿: Y.HAGA | 2012年9月11日 (火) 11:39