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2012年12月 3日 (月)

【映画】 黄金を抱いて翔べ / 監督・井筒和幸 原作・高村薫

Ougon

ん~~~。とても残念。これは高村薫の小説が原作なんだけど、その奥深さを半分も表現できていないと思った。
原作はとても長い小説でストーリに絡む人間関係も複雑。まあ、確かにそれを2時間半に落とし込むのは難しかったんだろうとは思うけど、だったら削るところは思い切って削るとかしないと…。おこがましいけど、それをどうやるかってのが監督の手腕なんじゃないだろうか?これはすべてを中途半端にぶち込んじゃったおかげで、終始バタバタした展開になっちゃったように思う。これじゃあ小説を読んでない人には、そもそもなぜ幸田たちがささやかな日常を投げ打ってまで銀行に眠る金塊を強奪しようと思ったのか、さっぱりわかんないだろう。

実は、僕は高村薫の小説が大好きなのだ。
彼女の作品を初めて読んだのは、もう15年ぐらい前だけど「神の火」というやつだった。これはかつて原発技術者でありながらスパイに仕立てたられてしまった男が、足を洗ってささやかな生活を送っていた時に原発襲撃プランを知ってしまい、、幼馴染みと共に諜報戦に巻き込まれてしまうというもの。とにかく、その緻密な構成と人間描写の生々しさに圧倒されてしまい、読み終わった後も三日ぐらい頭から残像が消えなかった。サスペンス小説の体裁をとってはいるけれど、これは純文学の大作にもひけを取らないとマジに思ったぐらいだ。
その後、他の作品にものめりこんだのだが、女史の作品には駄作が一つもない。すべてが代表作と言ってもいいぐらい、どれを読んでも完璧すぎる世界が構築されているのだ。

ただ、緻密で人間関係も細かく設定してあるからこそ、2時間半の制約があるシネマにはなかなか納まりきれない。女史の作品はこれまでにもいくつか映画化されてきたけど、はっきりいってどれも原作の良さを半分も出し切れていない。むしろ、テレビの連続ドラマの方が時間が長い分、丁寧に描かれていたと思う。
ただ、「黄金…」に関しては、あの井筒さんがメガホンをとるっていうんで、だいぶ前から期待してたんだけどなあ…。まあ、女史の小説のスケールのデカさは、鬼才をもってしても抑えきれなかったということなんだろう。

残念ではあったけど、俳優陣は健闘していた。特に、桐谷健太の演じた野田は僕の思う小説のイメージにぴったりだった。彼はこの2,3年ですごく成長していると思う。妻夫木聡もこういうダークな役が無理なくできるようになってきたし。うん、役者人の奮闘ぶりがこの映画の唯一の救いかな…。

きっと、高村女史の作品はこれからも何度となく映画化されていくだろう。いつかは彼女の壮大な世界を完璧に制御できちゃう監督が現れるかな…。そんな日が来るのを僕はじっくりと待ちたい。

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