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2012年12月 3日 (月)

【本】社会を変えるには (講談社現代新書)/小熊英二

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予想どおりと言えば予想どおりなんだけど、暮れも押し迫ったこの時期、日本は選挙モードに突入した。だけどオレ、今回はほとほと困っちゃってんだよね。なんとかしてこの状況を変えてほしい、変えたいと思ってるんだけど、投票したい党、当選して欲しい人がほんとにいない。
毎回選挙のたびに困った、困ったって言ってる気がするけど、今回は本当に切実。これほどの焦燥感は、自分が選挙権を得て以来、はじめてだ。だって、この国はこれほど景気が落ち込んでいる時期に、あれほどの災害と大事故を受けているのですよ。ここで選択を誤ったら、日本はほんとにもう立ち直れなくなっちゃうんじゃないだろうか…。この本を読もうと思ったのも、そんな藁をもつかむ思いからだ。夏ぐらいから話題になってる本だってことは知ってたんで、なんとなく来たる選挙に対するヒントが見つかるかな、と思って…。

結論から言うと、そんなものは見つからなかった。当たり前だ。そもそも、これは“答え”を出そうと書かれた本ではないんだから。ただ、そもそも“社会が変わる”とは、どういう状態を言うのかすら、オレにはわかってなかったんだなあ、ということはよく解った。それだけでも僕にはとても大きな収穫だったと思う。

この本は、今の日本の現状を確認したうえで、戦後の社会運動を振り返り、民主主義や自由主義の歴史まで遡って、どうすれば”社会を変える“ことができるのかを探っていく。
正直言うと、第4章から第6章までの部分は、大学の科目にあった歴史学や哲学、政治思想史なんかを連想させ、読むのにかなり体力を要した。まあ、”社会を変える“という壮大なテーマを一冊の新書にまとめようとするならば、こういう方法をとるしかなかったのだろう。苦労して読み込んだ分、読後にすとん!と落ちる説得力は確かにあったし。

この本を読むと、著者は3.11に起きた原発事故とそれに対する社会の動きに並々ならぬ関心を持っていることがわかる。脱原発デモに関する記述も多く、これが新しい社会の流れを生み出すのではないかと感じてもいるようだ。ちょっとデモの力を過信しているような気もしないではないが、歴史的な流れから脱原発デモを見る視点は“なるほど!”と思わせるものがあった。
原発事故はそれ自体も勿論深刻だけど、同時に戦後の硬直したシステムを白日の下に晒け出したことが、社会に大きなインパクトを与えた。脱原発デモはそのインパクトに対する市民の自然な反応なのだ。経済が20年も停滞し、もともと不満と政治不信が高まっていたからこそ起きたものだと著者はいう。かつての全共闘運動は担い手の学生が就職したら即終焉してしまったが、脱原発デモは、もともと自分の生活に不満を持っていたさまざまな身分の人たちが参加していて、いまや一億総中流意識もとっくに崩壊しているんだから、そう簡単には収まらないだろうと著者はいうのだ。

正直言うと、デモに関しては現場でいくら主張しても、それが実際の政治の現場に反映されなければ何も意味がないのではないかという気持ちも僕にはあった。
それに対して著者はこう主張する。デモや運動は“やること”自体に意味があるのだ。デモに参加するのが、かつてのような”特殊な行為”でなくなれば、それは誰でも自由に声をあげられる社会ができるということとイコールであり、より民主主義の理想に近づいたことになる。そして、運動に参加した人は、声を上げられる社会の到来を実感でき、自分自身が変化していくと…。

結局、著者の言いたいことは、“社会を変える”ためには“自分がまず変わらなければならない”ということなのだ。この本を読んで得た僕なりの答えは、社会を変えるには投票だけじゃない何かが必要なのだということ。うーん、投票に関するヒントが欲しいと思ってたのに、この本はその先を照らしていたんだなあ…(苦笑)。

本を読んでも、何かをしなければという焦燥感は募るばかり。
だが、それでもいいのではないかとも思う。八十年代以降、僕も含め、日本で政治への無関心層がどんどん増えていったのは、経済も雇用も安定していたからだと思う。無関心でいてもなんとか暮らしていけたのだ、少し前までは。そんな状況がどんどん陰りを見せ、徐々に高まっていた政治不信が原発事故で閾値を越えてしまった。僕の今感じている焦燥感は、閾値を超えてしまった不信感で身も心もやられてしまった結果なんだと思う。

選挙が終わった後、日本の景色がどうなっているか。その中で自分は何を考え、どう動いていくか。まだわからないけど、そのヒントはこの本の中に確かにあったような気がする。

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