« 『ソーシャル化する音楽 「聴取」から「遊び」へ』/円堂都司昭 (著) | トップページ | 仲井戸"CHABO"麗市×石田長生 ひ、ひさしぶりの共演サンキューヨンキュー / 2013年6月9日(日)南青山MANDALA »

2013年6月 9日 (日)

細野晴臣「Heavenly Music」コンサート/2013年6月08日(土)日比谷公会堂

細野晴臣 (Vocals,Guitar,Piano,)、高田漣 (Electric, Acoustic & Steel Guitars,Mandolin,)、伊藤大地 (Drums)、伊賀航(Contrabass, Electric Bass)、コシミハル (Accordion,Piano,)
ゲスト:岸田繁
シークレットゲスト:青葉市子、林立夫

実は日比谷公会堂でライブを見るのは初めて。でも、一歩足を踏み入れた途端、なんで細野さんがここを会場に選んだのかすぐにわかりましたよ、ワタシは。建物全体から昭和の香りが漂ってきて、雰囲気たっぷりなんだもん。まるで今にも蓄音機を通した昭和歌謡の調べが聞こえてきそうな感じ。久々にライブというより“コンサート”に来たという気持ちにさせてくれました。そして、このムードは、今の細野さんのスタンダードナンバーを中心に演奏するライブの雰囲気にもぴったりだったのでした。

この日のライブ、演奏されたのは5月に出たアルバム「Heavenly Music」からの曲が中心。ここ最近細野さんはアルバム毎にボーカル回帰していて、今回取り上げられたのは40年代のカントリーやミュージカル、ブギウギなどのカバー。はっきり言って、新しいことは何もやってません。スタンダードをスタンダードらしく、忠実に演奏しただけです。だけど、これがものすごくぐっときちゃうんだよね~。
たぶん、このバンドはライブアレンジとか、相当綿密にやってるに違いないと思う。シンプルで当たり前の演奏なんだけど、一音一音にまったく無駄がない。特に、SAKEROCKのドラマー伊藤大地くん、巧いなあ~。手数が多いわけでもなんでもないのに、静かなグルーヴでぐいぐいバンドを引っ張っていくのが、見ててすごく小気味良かった。
そして、なんと言っても高田漣!いやあ~いつの間にこんなすごいギタリストになっちゃったの?!スティールギターやマンドリン、エレキと幾つも楽器を使い分け、シンプルな曲調に鮮やかな色合いを加えていたのには驚かされた。漣くんは使ってる楽器はトラディショナルなものばかりだけど、サウンドはすごく今風。スティールギターだって全然カントリー臭くないんだもん。ハワイアンっぽいフレーズすらどことなく宇宙的に聴こえるし…。うーんなんつったら良いんでしょうね、この人の魅力。明らかにアンビエントを通過してきてる伝統ギター奏者。こんな人は世界中見渡してもあまりいないと思うんですが。
もしかすると、一歩間違えばノスタルジック一辺倒になってしまいそうなサウンドなのに、決してそうならなかったのは、この二人がいたからかもしれない。

えーと、主役の話がまだでしたね(笑)。細野さんはほとんどの曲でボーカルを披露してくれたんだけど、やっぱりイイ声だなあ~。あの低音の歌声とアコースティックなバンドサウンドは良く合う。アルバムでもそうだったんだけど、ライブでも主役なのにヴォーカルが前面に出てこないで、バンドサウンドに溶け込むような感じなんだよね。失礼なことを承知で言っちゃうと、これはもう、おじいちゃんの歌ですな(笑)。アメリカの田舎町のおじいちゃんが、干草の上に寝転びながら鼻歌を歌うような、そんな味のあるボーカル。ライブ中盤では、何曲か青葉市子とのデュエットもあったんだけど、これなんかもうおじいちゃんと孫の共演(笑)。でも、青葉市子って子もスゴイよね。ぽわーっとしてるんだけど、細野さん相手に全然物怖じしてなかったもんなあ。やっぱ、新しい世代の音楽家なんですね…。
1曲目・2曲目ではピアノを演奏。細野さんのピアノってのもボーカルと同じでなかなか味があるんですよ。それを引き立てる、裸電球みたいな照明の演出も素晴らしかった。

時間は1時間30分と短かったけど、素晴らしく充実したコンサートだった。オレ、こんなに一音一音かみ締めるみたいにして音楽を慈しんだのって、久々かもしれない…。
ところで、アルバムとライブのタイトルになってた「Heavenly Music」ってどんな意味なんだろう?天上の音楽ぐらいの意味?細野さんたちの世代っていうのは、欧米の古き良き音楽を日本流に解釈し、今に通じる素晴らしい日本のポップスを作ってきた人たち。今の細野さんは、そこからまた原点に立ち返って先代の音楽をリスペクトしながら歌ってるんだと思う。今はあまり良い時代じゃないかもしれないけど、こうして音楽の原点で僕らを温かい気持ちにさせてくれる、職人のような人たちも確実にいてくれる…。そういうのって、何物にも変え難い日本の財産なんだなあ、なんてことも柄にもなく思いましたね。

セットリスト
01. I'm Going In A Field
02. インストゥルメンタル
03. Gradated Grey
04. My Bank Account Is Gone
05. Close To You
06. The Song Is Ended
07. Something Stupid(+青葉市子)
08. 悲しみのラッキースター(+青葉市子)
09. 日本の人(+青葉市子)
10. When I Paint My Masterpiece(+岸田繁)
11. 風をあつめて(岸田繁ソロ)
12. グッドモーニング(岸田繁ソロ)
13. ラムはお好き? part 2(+林立夫)
14. 香港ブルース(+林立夫)
15. Body Snatchers(+林立夫)
16. Tutti Frutti(+林立夫)
17. The House Of Blue Lights(+林立夫)
アンコール
18. Radio Activity
19. Pom Pom 蒸気(+青葉市子+岸田繁+林立夫)

« 『ソーシャル化する音楽 「聴取」から「遊び」へ』/円堂都司昭 (著) | トップページ | 仲井戸"CHABO"麗市×石田長生 ひ、ひさしぶりの共演サンキューヨンキュー / 2013年6月9日(日)南青山MANDALA »

音楽」カテゴリの記事

コメント

「Gradated Grey(灰色の段階)」をやったんですね。
YMOの中でも特に好きな曲です。

ちなみにアルバムタイトルに込めた意味はミュージック・
マガジンのインタビューで答えていました。
「かってあった50年代の音楽は現在は無くなってる。
 騒々しいエネルギッシュなあの時代の音楽は現在では
 もうこの世に無い゛あの世の音楽゛」

これ読んで何となく最近のカントリー風にゆるい作品も
細野さんなりの「実験」の様な気がしました。
80年代テクノ、90年代アンビエント、エスニック。
細野さんのやる音楽は他の誰も出来ないような音楽ですから。

新作のタイトルも「Heavenly Music」ですから、確かに単なるスタンダードのカバーではなく、“此処ではない何処か”の音楽を奏でているような気もします。実際、このライブも日比谷公会堂という時間が止まったような会場でやったせいもあり、一瞬今が何年なのかわからなくなる錯覚に囚われました。
この類の音楽って、日本だけじゃなくアメリカでも後退してますからね。それをあえて日本人の細野さんがやっるってのもアイロニーだし…。ただ、こうしていざ正統的な演奏でバーンとやられると、やっぱり深い感動を呼ぶ音楽だと思いますねー。

Up-to-date information: bag Can Have A Significant role In Virtually Any Organization

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック

« 『ソーシャル化する音楽 「聴取」から「遊び」へ』/円堂都司昭 (著) | トップページ | 仲井戸"CHABO"麗市×石田長生 ひ、ひさしぶりの共演サンキューヨンキュー / 2013年6月9日(日)南青山MANDALA »

フォト
2023年2月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28        
無料ブログはココログ