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2013年7月

2013年7月26日 (金)

【映画】「サウンド・シティ‐リアル・トゥ・リール」

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フーファイのデイヴ・グロールが作った映画「サウンド・シティ‐リアル・トゥ・リール」、ようやく観ました。
一言でいうと、これはデイヴが全力でアナログ万歳!ローファイ万歳!バンド万歳!って叫んでる映画だな(笑)。宅録野郎には響かないかもしれないけど、僕みたいなロックおやぢにはけっこう効きました。

オレ、これ観て、ああ自分は幸運な世代だったんだなあ~ってつくづく思いました。それは、僕らはレコードの溝に刻まれたアナログな音のマジックを経験することに何とか間に合ったからです。今はコンピュータ一台でどんな音でも出来てしまう時代。そんなデジタル化のあおりを受けて、アメリカでもアナログなスタジオは軒並みツブれてる状態らしいんです。
この映画の舞台、LAの「サウンド・シティ」も例外ではなく、ニール・ヤングの「アフター・ザ・ゴールドラッシュ」やフリートウッド・マックの1stなど多くの名盤が製作された伝説の場所であるにも関わらず、2011年に止むなく閉鎖。それを知った熱血漢デイヴは、自分が出資してスタジオを買い取っちゃいました。そして、ここと縁のあるミュージシャンたちを集め、大セッション大会を敢行。その様子を収めたのがこの映画ってわけです。

ニール・ヤング、トム・ペティ、リック・スプリングフィールド、スティービー・ニックス、リンジー・バッキンガム、トレント・レズナー、リック・ニールセン…。豪華なミュージシャンが次々に出てきてセッションを繰り広げ、「サウンド・シティ」での思い出を語ります。これだけでロックファンにはたまりません。プロデューサーのリック・ルーヴィンなんかも登場。この人、レッチリとかプロデュースしてるから、バリバリにロックした人だと思ってたんだけど、実際は仙人みたいな風貌で物静かに話す人物だったので拍子抜け(苦笑)。

これ見てると、当たり前の話かもしれないけど、僕が欲してるのは「音楽データ」なんかじゃなくて、人の手を介した「音楽」なんだな~って気が付きました。極端なことを言ってしまえば、レコーディングの現場においては、ミュージシャン同士で音を交わしたり、プロデューサーと音楽上のコミュニケーションを繰り返すことだけではなく、そのスタジオに漂う空気感とか、受け付けのおねーちゃんと合間に交わす言葉とかだって音楽の大事な要素になってるんだよね。独りで部屋に籠って作るんではなく、スタジオで大勢の人が関わり合いながら時間をかけて音楽を作る…。そのことが、数値には表れないけど大切な「何か」をテープに残すんだと思う。その得体のしれない「何か」こそ、良い音楽のキモなんではないかと、今さらながらに思うのであります。

デイヴ・グロールの心意気にもリスペクト。この人にとって「サウンド・シティ」ってのは、ニルヴァーナ時代に「ネヴァー・マインド」を録音した大切な場所なんだよね。それにしたって、わざわざ買い取ったりはしないでしょう、普通。彼もアナログの機材の良さとスタジオでのマジックを信じ続けているミュージシャンなんでしょうね。世代を超えた大物たちがたくさん集まったのも、彼の真摯なミュージシャンシップに共鳴したからなんだろう。なにしろ、ポール・マッカートニーまで来ちゃったぐらいだから(今気が付いたんだけど、ポールってサウンド・シティと関係あるのかなあ?(苦笑))。
曲は骨組みをデイヴが作ってきて、それをスタジオセッションで膨らませていったみたい。このセッション風景も面白い。ナイン・インチ・ネイルズとかレイジ・アゲインスト・マシーンのメンバーなんかとは、世代が近いから手が合うのはわかるけど、リック・スプリングフィールドなんかとも意外なぐらいしっくりいっちゃうのだ。もともとリックってセンスのいいロックギターを弾く人だから、デイヴと手合せすることで彼のハードロッキンな部分がうまく引き出されたんだと思います。ポール・マッカートニーも、フーファイっぽい曲を自分の色を加えてうまく作りこんでいく過程が記録されてて、さすが。うーん、コレはサントラも買わんといかんな。

何か月か前に、山口洋や渡辺圭一もブログでベタ褒めしてましたが、とにかく、この映画は今の40代ぐらいの音楽ファンなら絶対ぐっとくるはず。もちろん、今の配信音源に馴れた若い子たちも是非!

2013年7月 8日 (月)

音楽配信はどこへ向かう? アップル、ソニー、グーグルの先へ…ユーザーオリエンテッドな音楽配信ビジネスとは?/小野島 大(著)

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雑誌『ミュージックマガジン』の連載「配信おじさん」の書籍化。著者の小野島さんは「フィッシュマンズ全書」の著者で、FBフレンドになっていただいてる方です。

この本は、配信が中心となりつつある今の状況におろおろしてる僕みたいな音楽おぢさんが、現状を俯瞰するのには最適のテキストかもしれません(苦笑)。今さら言うまでもないことですが、CDの売り上げは年々減っています。90年代みたいに多彩な音楽のCDがメガセールスを記録するような時代は2度と来ないでしょう。じゃあ、減った分だけ配信に流れていってるかというとそうではないんだよね。音楽を聴く分母そのものがどんどん減っていってるんです。21世紀は音楽が生活の中で占める割合がどんどん低くなってる時代。
そんな中、ネット配信ってのは音楽復興のための命綱になれるはず。それはみんな何となくわかってるんだけど、なかなかそっちに踏み込めない。CDに馴染んできた旧来の音楽ファンは、配信というカタチのないモノを購入する行為がどうにも肌に馴染まないし、業界内でも既得権益を守ろうとする人達がいたり、日本独自の著作権の壁があったりでなかなか思い通りに事が進まない。そんなこんなでもたもたしてるうちに、ますます音楽離れは進んでいく…。この10年ぐらいは、そんな流れがずーっと続いてるんじゃないでしょうか?
だいたい、一口にダウンロードサイトって言ったって、itunesやらmoraやらdiscasやらいろいろあって、どれが良いんだかさっぱりわかんないよね。そうなると、オレみたいなおっさんは気が短いから“あ~っ!”ってなって、AmazonでCD買えばイイや!ってことになっちゃう(苦笑)。で、袋が赤黒の某ショップなんかに行くと、同世代ぐらいの音楽ファンがいっぱいいるから何となく安心しちゃって、ネット配信はとりあえず様子見でいいや…(苦笑)。そんなところで止まってる同世代はきっと多いと思う。

でも、最近僕はもうちょっと配信に関して現状を知っとかなきゃヤバイんじゃないかってことも思い始めてるんです。だって、好む好まざるに関わらず、今後音楽をユーザーに届けるデバイスが配信主体になっていくことは疑いようがないわけでしょ?音楽おぢさんとしては、その中から肯定的な材料を見つけ、自分自身も少しずつ変わっていくしかないと思うんですよ。これまでにコレクションした莫大な量のCDを聴くだけでも人生は楽しく暮らせるかもしれないけど、やっぱり好きなバンドの新譜も聴きたい。だったら、アーティストが心置きなくスタジオアルバムをリリースできる環境を維持していくために、配信も受け入れていかないと。下手すりゃ、音楽音源販売という文化形態自体が絶滅しちゃうかもしれない話ですからね…。
オレ、この本の中で物凄くショックな記述を見つけちゃった。最近のドナルド・フェイゲンの発言なんだけど「今、自分の収入の大半はライブ活動によるもの。スタジオ音源だけでは食っていけない」。あのスティーリー・ダンがですよ。あれほど緻密なスタジオ音源を作るドナルド・フェイゲンがですよ!今、日本でもライブは人が入るけどCDが売れないっていう状況になってますが、アメリカは日本以上に深刻なのかもしれません。

この本に書かれてるのは、音楽のネット配信に関して2008年から2013年の5年間に起きた出来事。僅か5年。でも、この短い間にも状況は激変してんだよね。まずはそれに驚いちゃう。渋谷のHMVがツブれたことや、ナップスターだ、着うただってのも既に懐かしい言葉になってるもんなあ(苦笑)。実際、この落ち着きのなさがデジモノに弱い僕に二の足を踏ませてたところがあります。ハイレゾ音源の配信とか言ったって、それを再生できる機材をそろえなきゃ話にならないし…。ただ、定額制で一曲当たりの単価を下げたサービス形態とかが普及してくれば、新しい音楽との出会いが増えそうで面白くなりそうな予感はします。
後はあれだな。僕自身の意識下にあるモノ信仰を払拭しなければならない。実はコレが一番問題(笑)。僕ら世代にはそういう人が多いと思うけど、音楽をものとして持っていたい気持ちにはなかなか抗えない。CDとかヴァイナルとか“モノ”としてちゃんとカタチがあり、それにはちゃんとジャケットと歌詞カードが付いて、曲のクレジットもきちんと記載されてる。そういうものを所有するのが“音楽を買う”ということだっていう気持ちから抜け出すこと。これができそうでなかなかできない…(苦笑)。

ただ、そういう気持ちも最近変わりつつある。僕は音楽以外に本もたくさん読むんだけど、最近、電子書籍も案外いいなあって感じてるんです。装丁とかを愛でる感覚はないけど、それもすぐに馴れたし、当たり前だけど読後感は変わりません。印刷代がかからないせいか、電子版の方が紙より価格が安いことも多いし、何よりも場所をとらないのがありがたい。考えてみたら良いことづくめのような気がするんですよね。
タネあかしをするとすると、この本も配信のみの出版なんです。音楽と本では違うけど、こういうカタチで電子配信に慣れていってほしいって言う小野島さんの作戦なのかな、これ?(笑)

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