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2013年7月 8日 (月)

音楽配信はどこへ向かう? アップル、ソニー、グーグルの先へ…ユーザーオリエンテッドな音楽配信ビジネスとは?/小野島 大(著)

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雑誌『ミュージックマガジン』の連載「配信おじさん」の書籍化。著者の小野島さんは「フィッシュマンズ全書」の著者で、FBフレンドになっていただいてる方です。

この本は、配信が中心となりつつある今の状況におろおろしてる僕みたいな音楽おぢさんが、現状を俯瞰するのには最適のテキストかもしれません(苦笑)。今さら言うまでもないことですが、CDの売り上げは年々減っています。90年代みたいに多彩な音楽のCDがメガセールスを記録するような時代は2度と来ないでしょう。じゃあ、減った分だけ配信に流れていってるかというとそうではないんだよね。音楽を聴く分母そのものがどんどん減っていってるんです。21世紀は音楽が生活の中で占める割合がどんどん低くなってる時代。
そんな中、ネット配信ってのは音楽復興のための命綱になれるはず。それはみんな何となくわかってるんだけど、なかなかそっちに踏み込めない。CDに馴染んできた旧来の音楽ファンは、配信というカタチのないモノを購入する行為がどうにも肌に馴染まないし、業界内でも既得権益を守ろうとする人達がいたり、日本独自の著作権の壁があったりでなかなか思い通りに事が進まない。そんなこんなでもたもたしてるうちに、ますます音楽離れは進んでいく…。この10年ぐらいは、そんな流れがずーっと続いてるんじゃないでしょうか?
だいたい、一口にダウンロードサイトって言ったって、itunesやらmoraやらdiscasやらいろいろあって、どれが良いんだかさっぱりわかんないよね。そうなると、オレみたいなおっさんは気が短いから“あ~っ!”ってなって、AmazonでCD買えばイイや!ってことになっちゃう(苦笑)。で、袋が赤黒の某ショップなんかに行くと、同世代ぐらいの音楽ファンがいっぱいいるから何となく安心しちゃって、ネット配信はとりあえず様子見でいいや…(苦笑)。そんなところで止まってる同世代はきっと多いと思う。

でも、最近僕はもうちょっと配信に関して現状を知っとかなきゃヤバイんじゃないかってことも思い始めてるんです。だって、好む好まざるに関わらず、今後音楽をユーザーに届けるデバイスが配信主体になっていくことは疑いようがないわけでしょ?音楽おぢさんとしては、その中から肯定的な材料を見つけ、自分自身も少しずつ変わっていくしかないと思うんですよ。これまでにコレクションした莫大な量のCDを聴くだけでも人生は楽しく暮らせるかもしれないけど、やっぱり好きなバンドの新譜も聴きたい。だったら、アーティストが心置きなくスタジオアルバムをリリースできる環境を維持していくために、配信も受け入れていかないと。下手すりゃ、音楽音源販売という文化形態自体が絶滅しちゃうかもしれない話ですからね…。
オレ、この本の中で物凄くショックな記述を見つけちゃった。最近のドナルド・フェイゲンの発言なんだけど「今、自分の収入の大半はライブ活動によるもの。スタジオ音源だけでは食っていけない」。あのスティーリー・ダンがですよ。あれほど緻密なスタジオ音源を作るドナルド・フェイゲンがですよ!今、日本でもライブは人が入るけどCDが売れないっていう状況になってますが、アメリカは日本以上に深刻なのかもしれません。

この本に書かれてるのは、音楽のネット配信に関して2008年から2013年の5年間に起きた出来事。僅か5年。でも、この短い間にも状況は激変してんだよね。まずはそれに驚いちゃう。渋谷のHMVがツブれたことや、ナップスターだ、着うただってのも既に懐かしい言葉になってるもんなあ(苦笑)。実際、この落ち着きのなさがデジモノに弱い僕に二の足を踏ませてたところがあります。ハイレゾ音源の配信とか言ったって、それを再生できる機材をそろえなきゃ話にならないし…。ただ、定額制で一曲当たりの単価を下げたサービス形態とかが普及してくれば、新しい音楽との出会いが増えそうで面白くなりそうな予感はします。
後はあれだな。僕自身の意識下にあるモノ信仰を払拭しなければならない。実はコレが一番問題(笑)。僕ら世代にはそういう人が多いと思うけど、音楽をものとして持っていたい気持ちにはなかなか抗えない。CDとかヴァイナルとか“モノ”としてちゃんとカタチがあり、それにはちゃんとジャケットと歌詞カードが付いて、曲のクレジットもきちんと記載されてる。そういうものを所有するのが“音楽を買う”ということだっていう気持ちから抜け出すこと。これができそうでなかなかできない…(苦笑)。

ただ、そういう気持ちも最近変わりつつある。僕は音楽以外に本もたくさん読むんだけど、最近、電子書籍も案外いいなあって感じてるんです。装丁とかを愛でる感覚はないけど、それもすぐに馴れたし、当たり前だけど読後感は変わりません。印刷代がかからないせいか、電子版の方が紙より価格が安いことも多いし、何よりも場所をとらないのがありがたい。考えてみたら良いことづくめのような気がするんですよね。
タネあかしをするとすると、この本も配信のみの出版なんです。音楽と本では違うけど、こういうカタチで電子配信に慣れていってほしいって言う小野島さんの作戦なのかな、これ?(笑)

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コメント

ネット音楽は今はGoogleを軸にしたyoutubeによる配信が凄いと思います。やはりプラットフォーム選ぶようなサービスは長続きしないでしょう。
ただ音楽をモノとして所有する面白さは今のところウンタラデラックスエディションとかが努力している様ですが、私は早いところSACDに全てのカタログを移行為せるのが良いなぁと単純に思います。
ハードの会社がお客様を忘れた商売しているうちは、ダメです。

僕は僧さんとは逆の考えです。海外のように、日本でもプラットフォームを整えた定額制のサービスが普及しないと、これ以上配信人口は増えないと思います。今の若者は、音楽はタダで聴くものだと思ってますからね。
モノとしての音楽についてですが、音質という意味ではSACDも含めてもはやCDは音源技術の発達に追いついてないのでは?数年前にナイン・インチ・ネイルズがハイレゾ音源でマスターテープとほとんど変わりのないデータを配信したことがありました。これからそっちの方にいくのでしょうし、そうなれば音質マニアにも配信の有利さが伝わってくると思います。
こうやって書いていくと、ハードの会社は遅れてますね。これらの音源の民生レベルでの再生機、全然店頭に並びませんもんね。

ハイレゾ再生はそれ程難しくないし、お金も安いし、早く普及して欲しいです。
ビートルズの24bitがやたらiPhoneと相性が良いのに、意外に知られていないのが残念。bitは24でも周波数はCDと同じですから!

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