JAPAN BLUES & SOUL CARNIVAL 2010 ~25周年記念スペシャル~
日程/出演 5月30日(日) 開場14:45/開演15:30
出演:ソロモン・バーク/コーリー・ハリス/blues.the-butcher-590213/SHEENA & ROKKETS
司会:ゴトウゆうぞう/カメリヤ マキ
会場 日比谷野外音楽堂 ※雨天決行
料金 ¥8,000(税込・全席指定)
ジャパン・ブルース&ソウル・カーニバルは今年で開催25周年だそうだ。このイベントには海外の大物ブルースマンがよくやってくるので、自分も何やかやで10回近く足を運んでいる。ドクター・ジョンやゲイトマウス・ブラウンを初めて観たのもこのカーニバルだったし、オーティス・ラッシュやピーター・グリーンもそうだ。
25周年記念となる今年は、なんと伝説のソウルシンガー、ソロモン・バークが来る事になった。知ってる?、ソロモン・バーク。60年代から活躍していて、ミック・ジャガーにも大きな影響を与えた伝説のソウルマンだ。キング・ソロモンの一番有名な曲って言ったら、やっぱしローリング・ストーンズがカバーした「Everybody Needs Somebody to Love」だろう。若き日のミックやキースがブルースやR&Bに傾倒していたのは、初期のアルバムがカバー曲ばかりだったことからも良くわかるけど、この曲はセカンドアルバムの1曲目に堂々ぶち込まれていた。それから40年近く経った2002年のライブで、ストーンズは遂にソロモン・バークをゲストに迎えてこの曲を演奏する。単純なオレなんか、この一件だけでも未だにソウルを忘れていないストーンズの魂を感じて熱くなっちゃうんだけどね…。
日本に目を向けても、麗蘭の「今夜R&Bを…」で例のリスペクト・ミュージシャンをリスペクトするパートでこの人の名前がしっかり叫ばれているし、いつだったか忌野清志郎もソロモン・バークのことを熱く語っていたことがあった。
つまり、この人はロックやソウルのルーツであり、ロックファンならとても足を向けて寝られない重要人物なんです。ストーンズやRCサクセションはソロモン・バークの孫みたいなもんだと思って間違いない(笑)。今年70歳のキング、年齢から考えてもこれが最初で最後の来日となる可能性が高いと思う。これは女房を質に入れてでも観なければ!と思ってたんだよな(笑)
複数の出演者が登場するこのイベント、大トリのソロモン・バークが登場してきたのは17:50ぐらいだった。
御大がステージに現われる前、まずはバンドの面々がセッティングするんだけど、これがまたスゴかったんだ。何がスゴイって、その人数(笑)。えーと、ホーンセクションが5人にキーボードとギターが2人づつ。ベース、ドラムに、バイオリンのお姉ちゃん2人。バックアップ・ボーカルが男女3人。総勢16人の大所帯!いやあ~ジェームス・ブラウンのバンドだって、こんなにいっぱい来なかったぞっ。
そして最後にステージに現れたのは、金ピカの巨大な王座。ここにキングが鎮座ましますんだろう。こんなものをアメリカから持ち込んじゃうこと自体がスゴイよなあ…(笑)。
バンドが演奏を始める中、介添え人に付き添われて紫にラメの入った衣装に身を包んだソロモン・バークがステージに姿を現した。今年70の御大は、ものすごい巨漢で貫禄たっぷり。あまりにもでっかくなって自分で体重を支えられなくなっているのか、登場も退場も車椅子。うーん、さすがのキングも寄る年波には勝てないのか…。
と、思っていたらとんでもなかったんだな、これが!身体はともかく、その声は全く衰えていなかった!ものすごい声量で野音に集まった観客をビビらせる。ソロモン・バークって男性ソウルシンガーとしては比較的高い声質だと思うんだけど、その高音も健在。
オレ、はっきり言って、姿を見られるだけで良しだと思ってたから、初っ端からドカーンとヤラレて腰を抜かすほど驚いてしまったよ。これはもう、神の領域と言ってもいいんじゃないだろうか?正に怪人だ。
2曲目で早くも65年の大ヒットナンバー、「ゲット・ユー・オフ・マイ・マインド」が歌われる。客席は大盛り上がり。さすがにソウル通が集まっているとみえ、今日のお客さん良くわかってる。さらに、オーティスがカバーした「クライ・トゥ・ミー」が飛び出すと、野音を埋めた観客は一人残らず立ち上がってしまった。いいよ、いいよ~!そうでなくちゃ!
御大も野音の熱狂的な歓迎に気を良くしたみたいで“最高の夜だ!”と連呼しながら、自分の持ち歌だけじゃなく、「キャント・ストップ・ラヴィン・ユー」や「プラウド・メアリー」みたいな、ゴキゲンなカバーも挟んで盛り上げていく。
オレも最初からノリノリ。実はオレ、この日は朝からそわそわしていて、ちょっとおかしくなっていたと思う(笑)。午前中ランニングに行ったんだけど、気が付いたら20キロも走ってたぐらいだもん(苦笑)。アルコールも大量に注入し、この頃はもう天国に昇ったような気分よ(笑)。
この日は知り合いに会わなくてほんとに良かった(苦笑)。もともとブルース・カーニバルは観客のノリが凄いイベントなんだけど、オレも周りにあおられてかなりイってましたからね、この日は(笑)。
途中、バッキング・ボーカルにいた自分の息子と娘にも一曲づつ歌わせ(なにしろ、20人近い子供がいるらしいですから、ソロモンさん…)、場内に“何か聞きたい曲あるか?”とリクエストを求める。なんかもう、貫禄十分。まるで人間国宝のライブを観ているみたい。
こういう純度100%のソウルショーを観るとつくづく感じるんだけど、ソウルってのは徹底的にポジティブな音楽だよね。こうなっちゃうとオリジナルもカバーも関係ない。ジャンプナンバーもバラードも他人の曲も、ソウルパワーのある人が歌えばすべて前向きなものになっちゃう…。結局、音楽はホンモノか偽物かしかないんだよな。
自分がもし瀕死の床に臥していたら、もう絶対ソウルが聴きたい。スッポンの生き血みたいなもんなんだよ、ソウルって音楽は。ホンモノを聴くとそういうことが身体でわかる。ヤワな音じゃ腰にこねーんだよ、ボケ!(誰に言ってんだ…(笑))
最近の曲、「ドント・ギブアップ・オン・ミー」でちょっとじーんときて、サッチモの「What a Wonderful World」で幸せな気分になって、最後の最後に「エヴリバディ・ニーズ・サムバディ・トゥ・ラヴ」が飛び出す。サビの“You,You,You…”をステージと客席がコール&レスポンスする場面は、ストーンズの武道館公演を思い出してしまったぜ。…あ、それは逆か。ストーンズがソロモンのステージングを真似したんですもんね(笑)。
熱狂のステージは7時きっかりに終了。残念ながら、カーニバルの恒例だった共演者全員によるアンコールは今回はなかったけど、大満足の1時間だった。
順序が逆になっちゃったけど、他の主演者についてもちょこっと書いとこう。
イベントの最初の出演者はシーナ&ザ・ロケッツ。この日は敬愛するソロモン・バークが出るとあって、鮎川さんもシーナも最初から嬉しさを隠しきれない様子だった。30分ぐらいの短いステージだったんで、イベントの趣旨に合わせてシブくブルースやR&Bで攻めるのかと思ったら、全然そんなことはなく、いつもどおりのセットリスト(笑)。お馴染みの「You Realy Got Me」や「Satisfaction」、オリジナルの「レイジー・クレイジー・ブルース」に、オリジナルかカバーかわかんねえ「レモンティー」。最後は「ユー・メイ・ドリーム」でキマリだ。まあ、いつもどおりなんだけど、いつもどおりがイイのよ、シナロケは(笑)。
鮎川さんとシーナは、自分の出番が終わってからもステージ袖でソロモン・バークを食い入るように観ていた。
2番手はblues.the-butcher-590213。実は、オレはソロモン・バークと同じぐらいブルース・ザ・ブッチャーのステージを楽しみにしていた。もう~期待通り。いやいや、これは期待以上でしょう!
バンドの全員が黒のスーツに黒のネクタイを締め、やる気満々で登場してきたブッチャーズ、沼澤尚のいぶし銀のドラムと中条卓のシンプルなベースに乗って、永井“ホトケ”隆がテレキャスターを弾きまくり、KOTEZがハープで客席を煽りまくった。
オレ、このバンドの魅力はシカゴスタイルのオーソドックスなバンド編成で、ブルースのマスターピースを21世紀にも通用するカタチで堂々とやってくれちゃってることだと思うんだ。その実力を十分すぎるほど見せ付けてくれた。
オレ、はっきり言って、この日の出演者の中ではblues.the-butcher-590213が、一番ブルース純度が高かったと思うなあ。このカーニバルは、日本人バンドと海外のブルースマンが一緒に出る。そうなると、日本のバンドの出番は前の方で、セミファイナルと大トリは外タレっていうパターンが多い。そうなると、オレなんか島国根性を燃やしちゃって(苦笑)、日本人のブルースが世界にどれだけ通用しているか、なんていう見方もしてしまうんだよな、どうしても。そういう観点から見ても、blues.the-butcher-590213は世界レベルのブルースをプレイしていたと感じる。
この日はセットリストもアップテンポなものばかりで攻め立て、エンディングの「Mojo Boogie」では観客の多くも立ち上がってコール&レスポンスでバンドに応えた。カッコ良かったぜ~!
今年はまだ彼らのホームグラウンド、JIROKICHIでのライブを観てないけど、やっぱ高円寺に行かなきゃなあ…。
セミファイナルは、外タレのコーリー・ハリスって人。途中でキーボードがサポートに付いたりしたんだけど、基本的にギター弾き語り。ブルースだけじゃなくて、ボサノバっぽいタッチの曲なんかもやってたな。近いところで言うとベン・ハーパーのミディアムナンバーみたいな感じ…。
うーん、申し訳ない。オレはこのあたりはアルコールがかなりゴキゲンな状態に注入されてて、blues.the-butcher-590213の演奏にノリノリになった後だから、このかったるいノリにちょっと付いていけなかった。なので、この人のステージはほとんど憶えてません(苦笑)。
オレにとって、この日はソロモン・バークとblues.the-butcher-590213に尽きた。ほんとにコテコテのブルース&ソウルパワーをたっぷり浴びた気分。
ただ、こんなにいいイベントなのに、客の入りが年々減ってるのが気がかりだ。今年の入りはどう見ても7割いたかいないかだった。このイベントは日本人が本場のブルースとソウルを堪能できる数少ない機会なんだから、主催のM&Iカンパニーには来年以降も頑張ってもらいたい。
それと、これからも東京での開催場所は日比谷野音を死守してもらいたいなあ。このカーニバルでの独特の盛り上がりは、やっぱり日比谷野音でやっているというアドバンテージも大きいと思うんだ。アルコールの消費量は、数ある野音のイベントの中でもかなり多い方だと思うんだけど、ブルース好きのおぢさんおばさんが足元がふらつくぐらい呑めちゃうイベントなんてこれぐらいしかないでしょ?オレも、また来年この場所でブルースが聴けるのを楽しみにしている。
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